猪木流ローシングルとは何か?

一冊の本の出版以来、

完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫)

アントニオ猪木のテイクダウン能力について、

レスリング技術のレベルの低さを指摘する論旨が広まりましたが、

当ブログの見解は以前書いた通り(参照:アントニオ猪木とタックル技術)で、

猪木独自の“組み合ってからパッと後ろへ回る”タックルという、

高等テクニックの使い手じゃないか? と。
猪木流タックル2

猪木流タックル3

猪木流タックル4

で、ラッシャー木村戦を振り返っていて気がついたのですが、

当時は何気なく見ていた猪木のつなぎ技の中に、

実は高度なレスリング・テクニックが宿っているのではないか? と。

そう感じてしまった訳です。

その技とはカウンターの“スライディング・レッグシザース”
猪木のスライディングレッグシザース=シングルレッグダイブ説

例の如く、「おいおい、典型的なロープワーク技じゃねえかよ」という方は、

読まない方がいいかな?

…いや、ぜひ読んで下さい!!

80年代の猪木がよく序盤戦で見せたこの技、

30年程経過して見返してみると、

これって超低空タックル、

いわゆるローシングルと同じ類の技術なのでは? と、

感じてしまったのです。

猪木は通常の正面タックルをあまり得意としておらず、

それを補う為に早い時期から、

“抜ける片足”(Text by 流星仮面二世さん)を、

好んで使用していたというのが、

当ブログの一つの結論なのですが、

さらに突き詰めると、

80年代で多用したスライディング・レッグシザースこそ、

“抜ける片足”のバージョンアップ版ではないかと思われます。

これはアントニオ・ドライバー→ダブルアーム・スープレックス説(参照:人間風車博覧会)と並んで、
猪木の人間風車5

私は自信を持って断言したいと思います。

読んでる方の中には、

「あくまでロープワークを使ったプロレスの中での技でしょ」というご意見もあるでしょう。

それがR・木村戦で見せたのは、

自ら飛び込んでの紛れもない“タックル”なんです。

上で載せたストロング小林戦のタックル画像と、

下のスライディング・レッグシザース画像の、

両方の軌道を見比べて欲しいのですが、

サイドに回ってからの“右手の使い方”に注目して下さい。

最初に右手で相手の左リストをコントロールしながら、

徐々にサイドに回っていきます。
猪木のスライディング・レッグシザース1

猪木のスライディング・レッグシザース2

従来のレッグシザース(カニバサミ)は自らの両足で、

相手の足首と膝を文字通り挟み込んで、

うつ伏せに倒していく技なのですが、

猪木のそれは左足を深く…というか、
猪木のスライディング・レッグシザース3

猪木のスライディング・レッグシザース4

ほぼ股間で相手の足首を固定しながら、

右手で相手の膝裏を刈っていくという、

形の上では“異なる技”となっています。
猪木のスライディング・レッグシザース5

猪木のスライディング・レッグシザース6

猪木のスライディング・レッグシザース7

猪木のスライディング・レッグシザース8

手順の違いこそあれ、

これって実は片足タックルですよね。

それも超がつくローシングル。

さらに猪木は絶好のポジションに移行するまで、

相手の左足首のロックを決して緩めません。
猪木のスライディング・レッグシザース9

猪木のスライディング・レッグシザース10

猪木のスライディング・レッグシザース11

この試合では得意技である、

バックからのフェイスロックに入っていますが、

相手の背に体重が乗り切る寸前まで、

ロックしていますね。
猪木のスライディング・レッグシザース12

猪木のスライディング・レッグシザース13

猪木のスライディング・レッグシザース14

序盤で見せた木村の安定感抜群の下半身(参照:認めるがゆえにサディスティック)を、

ものの見事に切り崩していったこの技術。

もう一丁、画像を見て頂くならば、

“世紀の一戦”モハメド・アリ戦でのアリキックです。

アリの左ジャブに合わせて、

飛び込んでいく猪木の角度は、

上のスライディング・レッグシザースの軌道とほぼ一緒です。

大きく違うのは深く入るレッグシザースに対して、

当然ながらアリキックはロングレンジから、

足の甲を当てに行ってるという部分でしょうか。
アリキック1

アリキック2

アリキック3

アリキック4

アリキック5

この試合で何十発と打ち込んだアリキックが、

タックル(抜ける片足)→スライディング・レッグシザースの分岐点だったと、

私は勝手に推測しています。

この試合の直前に日蓮宗権大僧正・日恵上人より授かった、

「アリの腕より長いもので戦え!」のアドバイスから、

がんじがらめのルールの中で猪木は、

足の攻撃のみで45分間闘い抜きました。

それは蹴り倒す為のキックというより、

あくまでアリを寝かせる為のタックルだったと思います。

猪木はこの45分間のアリキックで、

自分の脚力と足首の柔軟性に絶対の自信を持ち、

上半身から入っていくタックルよりも、

足から飛び込んでいく“タックル”を、

テイクダウン用の武器とする事にしたのではないでしょうか。

この年の12月のアクラム・ペールワン戦では、

相手を寝技に持ち込む手段として、

足から入る“潜り”も使用しています(参照:アノキ・ペールワン~前編~)。

様々な実戦における紆余曲折を経て、

猪木のローシングル…スライディング・レッグシザースは、

完成したのではないでしょうか。
カウンターのレッグシザース1

カウンターのレッグシザース2

カウンターのレッグシザース3

カウンターのレッグシザース4

カウンターのレッグシザース5

カウンターのレッグシザース6

カウンターのレッグシザース7

世界中の名だたる強豪を相手に、

ほぼプロレスリングで培った技術のみで、

闘い抜いてきた猪木(参照:♪飾りじゃないのよロープは、はっは~)。

その猪木も70歳を迎えました。

 カクトウログ より
古希を祝う会でA・猪木を「社長」と呼んだ前田日明~昔に戻って今夜東京D大会も猪木の弟子大集合

藤田和之が小川直也を襲撃、IGF復帰~小川「澤田、成長したじゃねえか」観客「お前が成長しろ」


 見たくない奴は見に来るな! より
猪木の古希を祝う会に660人が出席!坂口乾杯の音頭に勢揃いの弟子たちが祝福・・・IGF2・23TDC大会『GENOME24』

強さを志す現役のレスラーたちに、

まだまだ伝えて欲しい事が山ほどありますね。

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tag : アントニオ猪木 モハメド・アリ ラッシャー木村 ストロング小林 木村健吾

comment

Secret

No title

猪木のテイクダウン能力やレスリング技術のレベルの低さを言う人はいますが、どこまで行っても”現在の総合のレベル”であったり、アマレストップクラスとの比較だったりします。
で、その比較の仕方も、金メダルを獲ったマラソンランナーの走りを見て「短距離では通じない」と言ってるような薄っぺら感があるというか・・・。


離れた距離から足に飛びつくタックルは基本的には軽量級の動きで、80kg以上クラスで日本でそのタックルが上手いと言える人の割合は結構少ないです。
体重が重いクラスになるとまともにタックル取れない限りは潰されるのでタックルに行く人は少なく、組合って崩して倒す・上からガブって潰すというのが日本の重量級の定石です。
谷津嘉章がアマレス界で伝説扱いされてるのは実はタックルが出来たからなんです(笑)
恐らく、レスリング界では伝説扱いされているカレリンもタックルはあまり上手ではないと思います(離れた距離からの低空タックル、両足タックルの話で、グレコローマンしか見たことないので分からないですが)

プロレスにおいてのレスリングは「バックを取るためのテイクダウン」なので両足タックルはあまり必要ではなく、スライディング・レッグシザースのようなタックルや組み合って崩して後ろに回って倒すことが大事なのでそっちの技術が発達したのかと。

ちなみに、レスリングではスライディング・レッグシザースは反則技になります。
腕から先に行ってれば問題はないみたいですが。


素晴らしい記事ですね!
とても興味深く読ませていただきました。

以下、あくまで私の持論です!笑

当時のプロレスラーは本物の技術を持っているのが当たり前。
今は無いのが当たり前で成り立っています。
話はズレますが、今のプロレスラーより、その辺の格闘技ジムに通う一般人の方が実は真のプロレスリング技術を知ってたりするのではないでしょうか。

記事内容に戻ります。
基本的には画像のストロング小林戦はシングルレッグ、ラッシャー木村戦はレッグトリップですかね。

『極めっこ』など、U系にも伝統として受け継がれる新日流スパーは、“サイドポジションからスタートする”みたいな定説ないですか?
あれは上になった者の技の反復、確認や下になった者が逃げを学ぶために行うという、あくまでスパーの一部であるだけだと思います。
猪木のテイクダウンを見て思うに、スタンドからスタートしていたと見るのが妥当ではないでしょうか。

猪木のフェイスロックの絵が相変わらず良いですね~。
個人的に好きなんですよ。
フェイスロックはポイントが何種類もある技ですが、猪木の場合、頬骨でしょう!笑
正確にはフェイスロックではないですが、グリグリする時があるじゃないですか?
アレたまりません 笑

>ナリさん

どこまで行っても”現在の総合のレベル”であったり、アマレストップクラスとの比較<プロレスリングという競技の中での技術なのに、比較対象とか基準が他のジャンルと言うのもそもそもおかしな話ですよね。

金メダルを獲ったマラソンランナーの走りを見て「短距離では通じない」<言い得てますね。

離れた距離から足に飛びつくタックルは基本的には軽量級の動き…体重が重いクラスになるとまともにタックル取れない限りは潰される<そうなんですね。MMAにおいてはタックル自体がリスクの高いギャンブル的な技になってしまうんですよね。
アマレスの話で恐縮ですが、学生時代の中邑は190近いタッパでタックル中心のレスリングやってたそうですが、その結果、椎間板ヘルニアで長期リタイア…身の丈に合ったレスリングって人それぞれですね。

谷津嘉章がアマレス界で伝説扱いされてるのは実はタックルが出来たから<競技人口自体限られていましたでしょうし…でも日本人重量級史上最強説は根強いですね。

カレリンもタックルはあまり上手ではないと思います<また脱線しますが、レスリング出身者でMMAで名を残すのはグレコの方が多いらしいですね。
その中で最強と呼ばれたカレリンが本格的にプロでやっていたら…妄想は尽きません。

プロレスにおいてのレスリングは「バックを取るためのテイクダウン」なので…スライディング・レッグシザースのようなタックルや組み合って崩して後ろに回って倒すことが大事<最初の話に戻りますが、その競技ごとに技術の意味合いは変わってきますね。

レスリングでは…腕から先に行ってれば問題はない<基本的に足を挟みこむのは柔道も禁止ですよね。
プロレスとMMAだけは何でもありと言う事ですね。

>宮戸ゲノムさん

とても興味深く読ませていただきました<ありがとうございます。嬉しいです。

今は無いのが当たり前<おおっと、言い切っちゃいますか!?

その辺の格闘技ジムに通う一般人の方が実は真のプロレスリング技術を知ってたりする<もしそうだとしたら寂しい限りです。

ストロング小林戦はシングルレッグ、ラッシャー木村戦はレッグトリップ<最終的な形はどちらもいわゆるレッグトリップでしょうね。
有名なシーンではG・アントニオ戦も同じですかね。

新日流スパーは、“サイドポジションからスタートする”みたいな定説ないですか?…上になった者の技の反復、確認や下になった者が逃げを学ぶために行うという、あくまでスパーの一部であるだけだと<映像に残っているほとんどが、“サイドポジションから…”ですしね。
新日流スパーは立ち技のみもあったでしょうし、膝立ちからもあったでしょうし、馳コーチの時代にはアマレスのスパー中心だったとも聞きますし…それぞれの形式に得意不得意もあるでしょうしね。
レスリングエリートである永田が新日入門した時に先輩の天山とスパーして、簡単にテイクダウンは取れたけど、そこから体力の差で何も出来なかったらしいです。

猪木のフェイスロックの絵…個人的に好き<これぞ“プロの裏技”って感じですよね。

正確にはフェイスロックではないですが、グリグリする時があるじゃないですか?<猪木自身も晩年多用したスリーパーよりも技術を要するフェイスロックの方が好きだったみたいです。
骨と骨…そういったプロの技術が減りましたよね。

No title

お久しぶりです!!お名前、出していただいたので、ここで登場しなければ男がすたります!!今回は、ばあさんのPCからアクセスしております(^^)

いやぁ~すばらしいお話で、すごく楽しめました(^^)

そうですね、猪木のタックル論、ボクはレガさんもコメントで触れていたグレート・アントニオ戦のが素晴らしいと思いましたねぇ~(^^)

たとえば自分の身長くらいあるべニア板が倒れてきたとします。これを受け止めたとしますね。すると寄りかかったべニア板を人が支えることになります。このとき力は釣り合っていますよね。しかしこのとき、べニアが倒れてきて、まさに受け止める瞬間に横にスッと逃げたら・・・べニアはどうなるでしょうか?

向かってくるグレート・アントニオは、猪木さんが受け止めるものだと思っていました。でもその受け止めるかどうかの、まさに一瞬で、抜群なタイミングで猪木さんスッと抜けてますよね!!受け止めてくれるはずのものが、突然消えてしまった・・・アントニオはバッタンといくしかありませんでしたね。見事ですねー(^▽^)

スライディング・レッグシザース論!!うーん素晴らしい!!さすがレガさんだぁー!!

ボクは・・・こう解釈します。ます、片足タックルは、文字通り相手の片足へのタックルですが、両足タックルのように正面からスポーンというイメージではなく、軌道は正面からでも、片足を軸に横へ回るようなイメージなんですね。つまり相手の足を軸に、自分が回る・・・という感じの表現が、それらしいかなと思うんですよ。

この理屈をあてはめると、猪木さんのスライディング・レッグシザースは他の選手が単に足を挟んで前方に倒すだけというそれとちがい、レッグシザースではあるものの、相手の足を軸に、上半身が円を描く動きをしながらバックに回っているのがわかります。つまり相手の足を軸に、自分が回る・・・を、実践しているのではないかと・・・思うのです。入り方も、真正面からなんですよね。画像からもわかるように、ラッシャー木村が入られる時点で前のめりになっています。そして入られた瞬間、手をついてしまっています。そして・・・バックに回られています。

見ているだけなら確かにレッグシザースですが、実際に入られる方は正面でいきなり寝そべられ、あれ?っとなっている瞬間に足をかけられ、後ろに回られてしまう・・・んですねぇ・・・見かけこそタックルではないですが、重心のコントロールや理論は、相応だと思いますねぇ。猪木さん、やっぱりすごいですね(^^)

長々と、失礼いたしました。今年は北海道、連日の大雪とニュースで拝見しております。まだまだ大変な日が続くと思いますが、どうかご無理せずにお過ごしくださいね(^^)/

>流星仮面二世さん

おおっと、お久しぶりです!!

今回は、ばあさんのPCから<ありがとうございます。会いたかったですよ!!

コメントで触れていたグレート・アントニオ戦<ベニヤ論…ド素人の私にとってはこれ以上ないくらい理解出来た解説でした。
あの瞬間、流星さんは竹内宏介さんと並び立ちましたね(笑)。

スライディング・レッグシザース論!!…さすがレガさんだぁー!!<またしてもありがとうございます。
やっぱりプロレスリングの技術談義ほど楽しい時間はないですよね。

軌道は正面からでも、片足を軸に横へ回るようなイメージ<それもやはり猪木の柔軟性が成せる業でしょうかね?
ラッシャー戦でのボストンクラブ返しもそうですが、猪木にしか出来ない技術が多々ありますよね。

つまり相手の足を軸に、自分が回る・・・を、実践<関係ないかも知れませんが、その流星さんのお話を読んで、中邑の古武術の記事で書いた初見宗家の「ダンス」論を思い出しました。
闘いとダンス…これって地続きなんでしょうかね。

見ているだけなら確かにレッグシザースですが、実際に入られる方は正面でいきなり寝そべられ、あれ?っとなっている瞬間に足をかけられ、後ろに回られてしまう<軌道が違うって事はセオリーとは反しますよね。
入場では極上の予定調和を見せ続けた猪木ですが、試合で見せる動きはほとんどがセオリー無視のアドリブだったんでしょうね。でないととっさの仕掛けなんかには対応出来ないですよね。
昔のレスラーはやっぱり凄かったですね。

まだまだ大変な日が続くと思いますが、どうかご無理せずにお過ごしください<ありがとうございます。

流星さんもあの日から早2年ですね。
いろんなものに屈しない不屈の魂で乗り越えて来られたんですね。
奥様もお子様達も私たちには想像出来ないくらいの心の痛みと闘って来られたんですね。
今でもたまに流星さんブログの震災記事を読ませて頂いてます。
決して忘れてはいけないし、2度と起こっては欲しくない。
でも自分自身を戒める為にも読んでいます。

さあ…流星さんのブログ再開の日まで気長に待たせて頂きますよ!!
また互いにコラボしながら楽しくやりたいなぁって。それまで私はコツコツと続けますよ。

キックというより寝かせる為のタックル…

なるほど〜そうかもしれない‼︎
レガさん色んな角度から観ているんですね。
1ページなのに濃い内容、改めて試合を観て気づく事って多くあるんですね。

いや…私は気づかない(/ _ ;)




私の風邪は大分 良くなりました。

>みーさん

色んな角度から観ているんですね<…いやいや、一つの方向からしつこい位ねちっこく凝視するだけですよ。みーさんのアレを見る時と同様で…失礼。

私の風邪は大分良くなりました<何よりです。ぶり返さぬ様、温かくして下さいね。
お友達とラーメンでも食べて、ね。
紫レガとは?

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Author:紫レガ 
45歳のプロレス話


長州、これは俺のブログだ。

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