クネりとは奇襲なり

中邑真輔の独特の動き、

いわゆる“クネり”については諸説ありますが、

そのルーツのひとつには、

中邑自身が幼少時から憧れを抱く、

“忍者”が原点として存在していると思います。

現代社会において“最後の忍者”と呼ばれる、

武道家・初見良昭宗家の持論の中に、

その一端がうかがえます。

達人(サムライ)主義―運動理論の最終兵器、公開! (B.B.mook―スポーツシリーズ (322))
 達人(サムライ)主義 より

初見「強いとか弱いとかどうでもいい。そんなことにこだわっていたら殺されるし、武道の本質がいつまでもわかりません」

日野晃「日本の武道は『対抗・対立』という価値観から生まれたものではない。ぶつかって、力でねじ伏せることを目的とはしていませんからね。先生は指導中に、『ダンスするように稽古して下さい』とおっしゃいますが、これも対抗する発想ではありませんね」

初見「そうです。相手と一緒に動かないとダメですよ。別々に動けば殺されます。相手に合わせる、それが分からなくちゃ。人は負けて成長しますが、相手に分からないように勝つというのも大事でね。値段を『まける』というのもそうでしょう? 買った方が『勝った』つもりだけど、『まけた』方も損はしてない(笑)」


この理論…ちょっとこじつけ気味になっちゃうかも知れませんが、

プロレスに通じるものありませんか?

同書で中邑は、

初見宗家の対談相手、日野晃から、

“胸骨操作”を始めとする達人の極意を伝授されています。
中邑×日野晃2

そこに私はクネりの原点を見た気がしました。

中邑「はじめまして。お会いする前にすごく気さくな方だと伺っていたので、よかったなと思ってたんです」

日野「ぼくは珍しいと思いますよ。なんか、どない言うかな、何かを拠りどころにせえへんかったら生きていかれへん人たちが多いから。例えば何々流とかね、権威みたいなもんどうだってええやんという。できな意味ないやろって(笑)」

中邑「ある尊敬してる人がいるんですが、その方は格闘家でも武道家でもないんです。だけど『こんな身体の動きを教えてもらったんですけど』と言うと、『ああ、オレそれできるよ。パイーン!』って、やられるんです」

日野「誰からでも、何でも、いいものを吸収するのはええね。絶対そうせなね。うん」

中邑「よく教えてはもらっているんですけど、『空気を食べろ』とか、よく分からないこともありますが、実際に体験しながら教えてもらってるんです」

日野「そういうもんにこだわらへんようになったときが極意やと思うよ。そやから、逆に極意があったら負けるやろと」


一見プロレスとは遠い世界に感じる人物からでも、

様々なものを吸収してリングに生かすというのが、

中邑独自の思想。

やはり“雀鬼”の影響(参照:雀鬼流プロレスラー)が大きい様です。

中邑×日野晃1

中邑の現状のスタイルである“クネり”、

言い換えれば“しなやかさ”とも言えますが、

無駄な力をセーブして相手を仕留める、

この戦術の原点はアマレス時代にある様です。

中邑「ボクが身体の動きで意識するっていうのは、直接的な力を使わないようにすることですね。アマレスのときから腕相撲みたいな力は絶対に使わないようにしてました。タックルも倒すというよりも、手で引っ掛けて遠心力を使って“こかす”っていうイメージなんですよね」

日野「そうか。ほんまアマレスやりだして、最初の頃からそんな感覚やった?」

中邑「そうですね、力でやろうとしても、なかなか倒れてくれないし、疲れると思ったんです。(腕力は)いらんなぁと思って。逆に横から流れるように引っ掛けるだけで、ポーンとこけてくれる方がラクだと思って。やっぱり心のどこかではいかにラクに勝ちたいか、というのがありますね」

日野「そやな。そんなもん、ボコボコになって勝つよりもな、バカーンと終わって勝った方が、そりゃええやろ。当たり前や。だから努力するんで…」

中邑「プロレスに関しては、またちょっと難しくなってくると思うんですけども、とくに総合のリングだったら、日本人特有の動きをした方が、ラクして勝てるんじゃないかと」

日野「日本人特有、うーん。日本人がやったら日本人特有やけどな」

中邑「アハハハ(笑)」

日野「ものすごく簡単な区分けしたら、下半身を柔らかく使えるのが日本人。上半身を結構柔らかく使えるのが、白人とか黒人かな。それはコンバットの連中とやり合いしたときに、ようわかんねん。せやから、こっちにも勝機がある」

中邑「(身体は)硬いっすよ」

日野「いや、せやから身体なんか別に硬かってもええよ、ほんなもん。使い方だけやで。やんのは体操ちゃうんやから。関節を順番に使ったらええだけ」

中邑「勉強させていただきます」

日野「よっしゃ(笑)」


レスラーの中では決して硬い方ではないと思うのですが、

持っている柔軟性以上に柔らかく見せる“技術”を、

中邑は“クネり”という表現方法で、

対戦相手と、我々観る側に表現している様です。
中邑×日野晃3

これは昨秋の東京サミット(参照:1972東京サミット黙示録~恋と市屋苑~)でたかさんに教えて頂きました。

そして次のやりとりの中で、

私は一つの確信を得ました。

日野「戦い方からとかで言えば、いろんなやり方があるから何が正しいねんなんて、絶対ないねん。いわゆる大きい戦でも、戦い方というのは、その人の兵法からひっくるめて言えば、なんぼでもあるけれども、実際の戦いで勝ってんのと言えば、奇襲ばっかりみたいなね。何かわからんことで勝つんやから、わかったら勝てない。せやから、『顔を見ない』とか『自分で決めてること』とか、そんなことが相手からしたら奇襲になってくる。ゴメンネ、ぼくばっかりしゃべって」

中邑「いや、大丈夫です」

日野「奇襲いうのは、こっちが奇襲と思うことじゃないやん。相手が思うことなんやから。こっちがこれは奇襲やと思っても、『あっ、それ、知ってるわい』なら奇襲とちゃう」

中邑「いや、ボク、好きでやってるというのが一番大きいですね。単に、ボクが、興味そそられて…」

日野「やっぱ、そうやよ。自分で思うこと、よっしゃこれやと自分で決めたことが正しいこと」

(略)

日野「なんでもありやねん。それが奇襲になるんやね」


奇襲!!…この言葉こそ“クネり”の根幹だと思いました。

対戦相手から気味悪がられたり、

アンチ中邑ファンに嫌悪感を与える。

それこそ中邑がクネりまくる意味なのです。

中邑「予備動作っていうのがあるじゃないですか。蹴る前にどっかでゴンっていうのが。だからタックルでいえば、乗ってるスピードは速くても、予備動作を見せちゃえば遅くなるような気がしまして。(略)」

日野「予備動作を失くすってことやよ。モノを取る動きは絶対わかるやろ。何でわかるかいうたら、行くということを知ってるからや。意識が見えてまうんや。せやから、運動のポイントをずらしていく。そうすると気配が薄くなってくる。それが気配をダマしていくというやり方。どんだけゆっくり行こうが速く行こうが、わからなくなる。そんなんは絶対できると思うし、せなあかん。体験的にはわかってるやろうと思うけども、ピクッとやったら(相手は)反応できるわけやから、絶対ダメ。予備動作とかへちまとかじゃなくて、ピクッは絶対にあかん」

中邑「ぼくも『気持ち悪い』と言われると、ヨシッと思いますね」

日野「ほおー、それが一番大事」

中邑「自分の練習場所に行っても、すり足で近づいて、みんなに『気持ち悪い、気持ち悪い』って言われることで、ヨシヨシと…(笑)」

日野「あとで『気持ち悪い』すり足を見せてもらうけど、それでニヤッとか笑ったら、イヤやな」

中邑「アハハハハ(大爆笑)」


ね!! やっぱりそうですよね?

海外でいろんな道場に出稽古に行った際、

中邑は“奇襲”技術でスパーリング相手を、

翻弄しまくってたみたいですしね(参照:ハイブリッド・シンスケ)。
中邑×日野晃4

それより何より、

中邑がクネり続けていくのは、

闘いの中に“楽しさ”を求めているからだと言います。

Dropkick(ドロップキック) Vol.8 (晋遊舎ムック)
 Dropkick Vol.8 より

― だから「中邑真輔にもっと歪んでほしい!!」って思ってる人は多いと思いますよ。

中邑「そういう人たちはいっぱいいるでしょうね。ボクに歪んでほしいと」

― クネクネするより歪んでほしいんですよ(笑)。

中邑「だって、それは楽しくないもん!!(一際大声で)。(略)いや、本当に」


クネりという奇襲戦術を見せていく事に、

中邑は無上の楽しさを感じ、

「イヤァオ!!」と雄叫びを上げずにいられない、と。
「イヤァオ!!」×3

近い将来、プロレス未開の地において、

予備知識のない対戦相手と観客に対して、

中邑が必要以上にクネりまくる“画”が観たいですね。

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tag : 中邑真輔 日野晃 初見良昭 古武術

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初見「強いとか弱いとかどうでもいい。そんなことにこだわっていたら殺されるし、武道の本質がいつまでもわかりません」
日野「戦い方からとかで言えば、いろんなやり方があるから何が正しいねんなんて、絶対ないねん。」

ここ、素晴らしいなぁと思いました。
変な話、子供だと思っていたらピストルや目潰しを持っていた。
ごつい男だと思っていたら病気中で実はフラフラだった。
・・・なんてあれば勝てる勝負に負ける。

いろんなやり方があるから何が正しいなんてない。
これも、よく格闘技ヲタが
「こんな技は実戦では通用しない」
とかいうのと似ていて、本来なら当たるはずもないモンゴリアンチョップやフットスタンプ、かかるはずもないグランドコブラも相手が知らなければ充分ヒットするわけで(それが致命傷を与えるかどうかは別で)

だからといって奇襲が全てではなくて、正攻法あってこその奇襲というか?
ヤクルトvsオリックスの日本シリーズに勝利した野村監督は
「仰木は奇襲を過信しすぎた。
奇襲ばかりをやっていたらそれはそいつの正攻法。
正攻法があるから奇襲が生きる」
と言ってまして。
(高田がラジオ番組のゲストで出た際にも、山崎をそう称していました)

それがすなわち、
「こっちがこれは奇襲やと思っても、『あっ、それ、知ってるわい』なら奇襲とちゃう」
ってところでしょうね。

こういう方々のお話は面白いですね。

お願い

いつも興味深く拝読させていただいております。ひとつ、お願いが…フォントの色が時折スマートフォン、iPhoneからだと読みづらく、今回も半分以上文章がありません(笑)フォント色は変えなくても、ポイントとするところは理解できますので、何卒、ご配慮いただければ…初見でクレームのようで誠に恐縮ですが、宜しくお願い致します。

>ジョーカー ナリさん

変な話、子供だと思っていたらピストルや目潰しを…ごつい男だと思っていたら病気中で実はフラフラ<最強とかを追求すれば、結局そういった所に行き着いてしまうんですね。
良く言われる、「二人っきりで体育館に閉じ込められて最後に出て来た方が強い」とか…強さって何なんだろうな? とか答え出ませんよね。

「こんな技は実戦では通用しない」<何を持って実戦と呼ぶのかはその人その人の認識によって変わってきます。
ルールとレフェリーで守られたものはあくまでコンテストですよね。
単純にそれをなくしたものが見たい訳でもなく、私はプロレスリングが見たいです。

奇襲が全てではなくて、正攻法あってこその奇襲<いやぁ…深いお話ありがとうございます!!
本当にここにコメント下さる方はナリさんはじめ、引き出しの多い、知識豊富な方ばかりで、感謝の言葉しかありません!!
勉強になるなぁ。

こういう方々のお話は面白い<この本を読むまで、全く存じ上げない方でしたが、それぞれ道を極めた方のお話は面白いですよ。
思えば…70~80年代の格闘ブームはこういった人々をも登場人物に出来る奥深さがあったんでしょうね。
その主役の一人が猪木だったというのも誇らしいです。

>伊達直人さん

初めまして。
コメントありがとうございます。

フォントの色が時折スマートフォン、iPhoneからだと読みづらく、今回も半分以上文章がありません(笑)フォント色は変えなくても、ポイントとするところは理解できますので、何卒、ご配慮いただければ<それはそれは、大変失礼致しました。
すぐに改善致しますが、これまでの記事についてはご容赦願います。

極力、少ない配色にしていきますので、今後とも宜しくお願い致します。
紫レガとは?

紫レガ 

Author:紫レガ 
45歳のプロレス話


長州、これは俺のブログだ。

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