大きな意味を持つ『ワーク』~後編~

伝説の死闘、

1993年12.5 神宮球場

プロレスリング世界ヘビー級選手権試合

高田延彦vsスーパー・ベイダー
(参照:真冬の奇跡~前編~~後編~)の、
スーパー・ベイダーvs高田延彦

緊迫の『ワーク』交渉、

前編からの続きです。

…引き続きインタビュアー氏は、

ガンガン仕掛けてきます。

覚悟の言葉 ~悩める奴らよでてこいや! ~ (ワニブックスPLUS新書)
 覚悟の言葉 ~悩める奴らよでてこいや!~ より

― 高田さんも折れなかったわけですね。試合結果を見るかぎりは。

高田「オレは、プロレスラーとしての誇りを捨てたことはないよ」

― では、なぜプロレスを捨てて、総合格闘技のリングに?

高田プロレスを捨てたんじゃない。別の場所で戦うことを選んだだけだ。誇りを捨てたことなんかないよ」


この辺りで完全に、

高田延彦のスイッチがONになりました。

プロレスにおけるビッグマッチの仕組みを、

初めて“自らの感情を込めた言葉”で、

公開する“覚悟”を決めたのでしょう。
必殺の腕十字狙い

高田私はベイダーの目を見て言った。『本当に寝ないのであれば、シュートしかないよ』と。ようするにワークなしで、100パーセントの真剣勝負をやるということ。でも怖かったよ。目の前にいる彼の巨体を見ながら、私の身体は震えていたと思うよ。だけど、やるしかない。ここは退いてはダメな局面だった、理屈じゃないんだ」

― ベイダーは、どんな表情でしたか。

高田「まったく動揺することなく、冷たい目でじっと私を見てね。それから、ニヤッと笑って言ったんだ。『OK。じゃあ、ここからはビジネスの話をしよう』って。こういう雰囲気って伝わるかな?


「こういう雰囲気」が伝わってくるか、

逆に全く伝わらないか、

あるいは理解出来ないかで、

プロレスの勝敗の重みと、

いわゆる“勝負論”に対するスタンスが、

変わって来ると思いますが、

いろいろなものを読み、

様々な話を聞いてきた中で、

私はこの交渉の一部始終こそが、

いわゆる“シュート”だと思っています。

そしてリング上で行われる試合の結果は、

この交渉よりも、

さらに重いものだと認識しています。

“それが”プロレスだと思います。

もちろん、“それだけが”プロレスではない事も、

理解しているつもりです。

高田
「私は私でUインターを背負っていたけど、逆にベイダーからは己の身一つで世界と渡り合ってきた一匹狼、フリーランスの凄味が心地よく伝わってきた。私はなんとなく、互いに通じるものがあるとさえ感じた。こういう場面もさ、皆が色眼鏡で見るワークの話だからね。だけど、ぜんぜん笑えないことがいろいろあったんだ。だからって、それを素晴らしいと殊更に言うつもりもないけれど。だけど、私たちがやってきたプロレスが嗤い物にされるのには我慢できない。『プロレス最強』の看板を背負ってやってきたからこそ、葛藤もあるし、苦しいし、嫌な時期もあったけど、それでも真剣だった。その『覚悟のやり取り』こそが、じつはプロレスというジャンルならではの奥深いエンターテインメント性、ドラマ性を支えているのだと思う」


「プロレスが嗤い物にされるのには我慢できない」と言う高田と、

「プロレスラーがナメられるのが嫌なんです」と言う桜庭和志(参照:ぼくはロックアップしない。)。

心は遠く離れてしまった二人(参照:いつかまた…)ですが、

プロレスという物に対する、

根っ子の部分でつながっています。
スパー4

『泣き虫』出版以来、

私も含めて、

高田とプロレスの関係を曲解してしまいがちでしたが、

高田にとってのプロレスは、

特別なものである事には間違いありません。

高田「オレの生涯ただ一つの『夢』はプロレスラーになることだったんだよ」


実際にプロレスラーになってからの、

高田の人生の流れは、

あくまでも回転寿司の皿を、

チョイスし続けた結果だった訳です。

…詳細が知りたい方は、

ぜひ、ご一読下さい。
猪木付人時代の高田

最後に、高田にとってのUWFとは何であったのか?

飾らない言葉で、こう言います。

高田「(略)いまさらプロレスラーは総合格闘技的な意味で最強なんだって言いたいわけじゃない。だけど、猪木さんの黄金時代を見ていた私たちが志を持って新日本プロレスを飛び出して、Uインターだって、リングスだって、パンクラスだって、進んだ方向は様々だったけど、本当の強さを目指していたことだけは一緒だったはずなんだよ。私は『そうだった』と信じているよ

― では、いまの高田さんにとってプロレスの意味とは?

高田「私は過去を誇りにしたくない。過去の誇りだけで、いまを生きるなんて嫌なんです。もちろん絶対に忘れはしない。だけど、生きているのはいまなのだから。いまの自分こそが、最前線の自分ですからね。それを正面から、ちゃんと見詰めないと」


過去を大切にしながら、いまを生きている。

「俺の時代はこうだったのに…」なんて、

言おうと思えば誰にでも言えます。

いまを一生懸命に生きて輝き続ける事が、

過去を汚さない最良の方法だと思います。

現役の選手たちは、

どんどん輝く場に出て行くべきですね。

何やらこの本の続編が、

今月号のKAMINOGEで展開されてるみたいですね。

さて、10.5 東京・新宿FACE

高田延彦vs長州力
(参照:全面戦争決着戦)は、

大きな意味を持つ“シュート・トーク”となるでしょうか!?

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tag : 高田延彦 スーパー・ベイダー プロレスリング世界ヘビー 長州力

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俺の肩書きはプロレスラー

こんばんは。

試合の仕組みを公言するのは好きじゃありませんが、『ワークが嫌ならシュートでやってやる』とこの気概は北尾戦でも発揮されていてレスラーを含めた社員の生活を背負った一国一城の主の厳しさとプロレスラーのプライドを感じます。今、こういうエースのレスラーや団体はあるのでしょうか?

またKAMINOGEはどうも在庫切れのようで、高田へのニーズの高さに少し驚きました。

No title

「泣き虫」からハッスル路線を歩んでいた高田のイメージからは想像のできなかった言葉に正直戸惑っています。このレガさんの記事のような気概を持ち続けていながらなぜあの本を出せたのか……

ただ一言感じられるのは引退をしていても高田はレスラーなのか。むしろ他のレジェンドもそうですが、レスラーに本当の引退はないのかもしれません。

そんな事を考えさせてもらいました。ありがとうございます!

No title

WWFでは本領を発揮したとは言い切れなかったベイダーですが、参戦当時はBハートやマイケルズなどの中量級の選手がメインだったのでどうしても引き立て役が多い印象でした。
さすがに、WWFではこういう事は出来なかったのですかね。

実はFMWの川崎球場大会で提携していたWWEの提供試合として、ベイダーvsシャムロックの金網戦がありました。
当時はシャムロックはWWEではバリバリのトップ戦線で、ベイダーは中堅の上。
何度か組まれている向こうでの試合もベイダーが勝った事はなかったのではないかと。
でも、日本での格を守るためにベイダーが仕掛けるのでは?という意見がちらほら聞かれ、UFC王者でパンクラス王者のシャムロックと、プロレス界最強外人とUインタートップのプロレスリング世界王者のベイダーのシュートが見られるかもとワクワクしましたが、
設置された金網の脆さ(2人で縺れて寄りかかるとと金網が倒れかけるというハプニング)と、わき腹を負傷していたガチガチテーピングのシャムロックの体調で大凡戦(シャムロックのKO負け)に終わりました。

『OK。じゃあ、ここからはビジネスの話をしよう』
これを臆したと見る人がいるか、高田の根性を認めたと見るかはさておいて、もしかしたら新日本でもこういう事はあったのかも知れませんね。
そして、その時は誰がどういう反応をしたのか興味津々です。


高田の「プロレスラーとしての誇りを捨てた事がない」と、プロレスの意味を問われ「過去を誇りたくはない」という一見チンプンカンプンな発言ですが、深読みすれば、
プロレスラーの誇りはもちつつも、それを自慢したくはないという意味なのでしょうか?
もし、質問コーナーなんかがあれば聞いてみたいなと思うところです。

全盛時Uインター

ご無沙汰してます。

一国一城の主として、引かない高田さんは、格好いいと思います。



桜庭さんが、新日参戦ですか、ちょっと興味が湧いてきました。

昔、ホーガンが酒場でアンドレに、「次の試合でお前を潰す。」と言われて夜寝れなかったと言ってた事を思い出しました。

ベイダーはWWFとGHC 以外のメジャータイトル総ナメにしてますから、簡単には寝ようとは思わないんでしょうね。

ただ、やはりWWFではそうはいかなかったようで、テイカーをボロボロにしといて最後は負けたり、ウォリアーに秒殺されたり、噛ませ犬的な感じでした。
まぁそれでもショーンにもラフすぎる!と言われたらしいですが…。

>aliveさん

こんばんわ。
コメント遅くなってすみません。

レスラーを含めた社員の生活を背負った一国一城の主の厳しさとプロレスラーのプライドを感じます<「俺がみんなを食わしてやる」っていう気概は猪木イズムそのものだと思います。
その立場でシュートも辞さない構え…それが高田という男なんですよね。

またKAMINOGEはどうも在庫切れのようで<何だか不思議なんですよね。
20日発売ってなってるんですけど、AMAZONではまだ画像が出てなかったり…でも期待は大ですね。

>オビワン三世さん

記事のような気概を持ち続けていながらなぜあの本を出せたのか<当時はPRIDEの最盛期でしたしね。
新生UWFの方法論と一緒で、イメージ戦略という部分でしょう。
それと私自身の見解ですが、第三者の思惑もあったと思います。

引退をしていても高田はレスラーなのか。むしろ他のレジェンドもそうですが、レスラーに本当の引退はないのかもしれません<悪い意味で引退出来ないレスラーは数多にいますよね。
そこが猪木なんかは問題としています。

ほぼ40歳で引退した前高山の三人は、ある意味猪木の理想の引退像かもしれません。

>ジョーカー ナリさん

さすがに、WWFではこういう事は出来なかったのですかね<新日やWCWのようにはいかなかったのでしょうね。
でも新日、Uインター、全日にCWAまで多才なスタイルで頂点を極めたのは特筆すべきでしょうね。

FMWの川崎球場大会…ベイダーvsシャムロックの金網戦<当時のファイトで、シャムロックが試合後に吐血した事からステロイドを断罪してましたね。

UFC王者でパンクラス王者のシャムロックと、プロレス界最強外人とUインタートップのプロレスリング世界王者のベイダーのシュートが見られるかもとワクワクしました<当時はそういったファンタジーがたくさんありましたよね。
ターザン後藤がUFC出るか? とか、ナガサキがVTJに出たとか…実際に出て行ったビガロは散々でしたけど。

臆したと見る人がいるか、高田の根性を認めたと見るか<そこをどう捉えるかで、プロレスに対するスタンスが変わってきますよね。

一見チンプンカンプンな発言ですが、深読みすれば、プロレスラーの誇りはもちつつも、それを自慢したくはないという意味なのでしょうか?<これ結構誤解されてる部分もあるんですが、高田の発言って意外と一貫してるんですよ。
プロレスという物に対する責任感は今でも大きいと思いますよ。

>ドリーさん

お久しぶりです。

一国一城の主として、引かない高田さん<ほぼワンマンエースでしたし、団体そのものがイケイケでしたからね。

桜庭さんが、新日参戦ですか<我々世代が戻ってくるタイミングとしては、ここから1.4までが絶好のチャンスですよ。

ドリさん…あれからもう一年経ちましたね。
またサミットやりましょう、ぜひ。

>BKっち

ホーガンが酒場でアンドレに、「次の試合でお前を潰す。」と言われて夜寝れなかった<出てきますねぇ、さすがHBK博士と言われた男です。

やはりWWFではそうはいかなかったようで、テイカーをボロボロにしといて最後は負けたり、ウォリアーに秒殺されたり、噛ませ犬的な感じ<確かにカタかったですもんね。
でもレズナーと時代被ってたら、案外時代を掴んでたかも知れませんね。
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