追悼・プロレス界の長老

日本プロレス界の長老・菊池孝さんがご逝去されました。

 カクトウログ より
【訃報】プロレス評論家・菊池孝さんが死去/最後のサムライ記者へ関係者から感謝のメッセージ集

2日夜に関係者のブログから広まり、当サイトでもお知らせした菊池孝さんの訃報。リリースが出ましたのでUPさせていただきます。改めて、心からご冥福をお祈りします。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎のこと。

[週刊プロレスモバイルより抜粋]
プロレス評論家の菊池孝さんが9月1日午前4時46分、東京・新宿区の国立国際医療研究センター病院にて永眠した。享年79歳。死因は誤嚥性肺炎。菊池さんは8月8日に吐血、緊急入院して治療を重ね、一時は回復の兆しもあったが、8月31日より血圧、脈とも数値が下がり翌早朝に息を引き取った。通夜、告別式は近親者のみによる密葬となる。追悼式などの予定は未定だが、実施する場合は後日発表される。


お幾つになられても、

現場に足を運んで観るという記者魂には、

敬服という言葉しかありません。

しかし猪木~高田という系譜で、

プロレスを観てきた私にとっては、

完全に馬場派と言える菊池さんは、

ある意味“敵”の様な存在の方でした。
ジャイアント逆十字壱

猪木のデビュー50周年を記念したムックでも、

その猪木批判は変わりませんでした。

 アントニオ猪木50Years (上巻) (B・B MOOK 664 スポーツシリーズ NO. 536)
 アントニオ猪木50Years(上巻) より

菊池孝
猪木が日プロに復帰する前後の行動も、私には釈然としなかった。それまで世話になった人たちをも、猪木はあっさり捨てたのだ。それ以後私は、「寛ちゃん」と親しみを込めて呼んでいたのをやめ、猪木と距離を置くようにした。猪木の“人材使い捨て”は、その後も続いた。
新日本プロレス旗揚げ後の猪木は、大風呂敷を広げるようになり、それもしばしば180度方向転換した。私がそれをなじると、猪木は「人間は毎日成長しているんです」と開き直った。私は猪木とまともに口をきくことをやめた。

(略)私が強情というか…我がままを押し通せたのは、フリー記者だったからだが、最近、猪木の身近だった人たちに猪木嫌いが増えているようだ。最初は猪木の魅力にとりつかれるが、時とともに猪木という人間が見えてくるからだろう。


菊池さん曰く、「練習好きで金銭に細かい猪木」

それゆえにこれまで、

多くの側近を失ってしまったと。

ジャイアント馬場さんとの心温まるエピソードとは違い、

長年に亘りアントニオ猪木に対しては、

辛口の文を書き綴って来た菊池さんですが、

実は“本当の猪木”を知る一人だったのかも知れません。

ちょうど30年前の秋に出版された著書の中に、

猪木のプロレスに対するプライドの高さを讃える一文があり、

菊池さんが否定してきた猪木の人間性とは異なる、

義を重んじた姿が書かれていました。

 誰も書かなかったプロレスの内側 より

菊池孝
猪木は、自分が青春を打ち込んだ格闘技が、他の武道と差別されていることに我慢出来なかった。そして、プロレスが、他のプロ・スポーツより一格低く見られていることがたまらなかったのだ。プライドを失い、背を丸めては、男として生きていることにはならないとするのが、猪木なのである。

東京・渋谷にリキ・スポーツパレスを建設中だった三六~三七年。“日本一の土●”を自称する力道山によって、レスラーたちは並みの労働者の二倍も三倍も働かされた。一日の仕事が終わった時、彼らはもう、合宿に戻る気力もないほど、精も根もつき果てていた。夏場は、パレス横の急坂にそのまま寝こんでしまう若手も多かった。
ゴロゴロと道ばたに寝ている大男たちを見て、
「天下の力道山ともあろう者が、自分のかわいい弟子をこんなに酷使して…。この若者たちの両親がこれを見たら、どんなに悲しむことか」
と義憤を感じ、氷水や商売物のそばを差し入れし、夜露に当らないよう、親身になって面倒を見たのが、坂下にあるそば屋『たけや』の女主人・本間由だった。
パレス開館後、『たけや』は若手レスラーたちの溜り場のようになった。勘定を“ある時払いの催促なし”のツケにしてもらったのはもちろん、二階に上りこんで昼寝したり、デートの費用を借りたり、“そば屋のおばさん”は若手たちの、我がままを言えるおふくろ代りだった。
パレス売却後、レスラーたちの足は遠のいた。ツケも借金も踏み倒した者もいた。猪木は今も、年越しそばは『たけや』のそばと決めている。


猪木が現在もこのお蕎麦屋さんを贔屓にしてるのか、

また、今もこのお蕎麦屋さんが存在しているのか、

そして、この女主人さんが今もご健在なのか、

その辺は知る由もありませんが、

菊池さんだけが知る、

猪木の姿だったのかも知れないですね。
猪木顔2

この著書のあとがきに、

プロレスライターという職業一筋に生きてきた菊池さんの、

プロレスラーに対する気概とプロレスへの愛を感じる部分がありますので、

最後に書き残しておきましょう。

プロレスって、奥の深いものだなと、つくづく思う。もう二二年半も、プロレスを見続けてきた。それでも試合を見ていると、何か新しい発見があるのだ。オヤッと思い、ゾクゾクッとしてくる。(略)その奥深いプロレスをどこまで書けるか。奥深く巨大なプロレスという“怪物”を、あっちをなで、こっちを突っついて、群盲象をなでるの域からいくらかでも出るためには―やはりもっと沢山なで、あっちこっちやたらと突っつくしかないようだ。
それでおぼろげながら全体の輪郭が浮かび上ってくれば、まあまあ良しとしなければなるまい。何しろ相手は、何年たっても新しい発見を提供してくれる怪物なのだから。

(略)プロレスラーの中には、ごくたまに、
「プロレスは、やった者じゃなきゃわからない」
と言い切る者がいる。私は、これには反発を感じる。たしかに、練習の苦しさや、このわざをかけられたらどこがどのくらい痛いかなどということは、やった者じゃなければわからないだろう。だが、プロレスが一〇〇パーセントやった者じゃなきゃわからないものなら、どうして、やったことのない人たちからゼニを取ってそれを見せるのか。やったことのない人たちも、プロレスにそれぞれの楽しみ方を持っているから、興行が成り立っていくのだ。やった者じゃなきゃわからないプロレスをやるなら、無人の野で二人きりでやるのがいい。
(略)だがプロレスは、知れば知るほど面白くなる不思議な魅力に富んだ怪物だから、これのトリコになった人は、ファンからマニアへとエスカレートし、さらに奥深く踏みこんで、ここから先は“やった者じゃなきゃわからない”という壁に突き当ることはあるだろう。

(略)で私は、プロレスはやるもんじゃない、見るもんだと信じている。マネすらしたことがない。マネしてわかったような気になれるほど、プロレスは浅いものではないと思うからだ。
(略)さらに私は、プロレスは書くもんじゃない、見て楽しむもんだとも思っている。プロレスを取材対象としていながらずいぶんと横着な言い草だが、マット界のニュースやレスラーの話は書いても、試合原稿は書きたくないのだ。メモを取りながらでは、試合の面白さは半減してしまう。いい試合ほど書きたくない。迫力、興奮、楽しさにどっぷりつかっていたい。


菊池さんも、竹内宏介さん(参照:追悼・ミスターゴング~そのプロレス愛~)同様、

プロレスそのものを愛する、

プロレスファン、いやプロレスマニアだったんですね。



我々も色んなアプローチの方法で、

プロレスをもっともっと沢山なでて、

あっちこっちやたらと突っついて、

最期までどっぷり浸かって行きましょうか。

菊池さん、

天国から竹内さんと一緒に、

これからもニコニコ微笑みながら、

プロレスを見守って下さい。

心より御冥福をお祈り致します。

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tag : 訃報 菊池孝 アントニオ猪木

comment

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No title

菊池さんに関しては、昔大仁田劇場真っ盛りの時代に週刊ゴングに載っていた控え室での菊池さんとの会話が秀逸でした。

大仁田「なぁ、なぁ!菊池さん、菊池さんよぉ!
俺が長州と、長州とぉ!!」

菊池「お前、何言ってるか分かんないよ!!」

大仁田「俺が長州と、一騎打ちは出来るか菊池さん!」

菊池「だから、何言ってるかわかんねぇって!」

これをそのまま載せちゃうゴングが素晴らしかったです。
あとは、菊池さんといえば猪木を「猪木」、馬場を「馬場ちゃん」と呼べる唯一の評論家というか?
菊池さんの力道山話はとても面白かったです。
Gスピリッツのような雑誌で菊池さんのインタビューというか彼の頭にあるプロレスの話を書き出してもらえないものかと思っていたので、とても残念です。
最近のファンには
「頭の古い人」
と思われがちですが、そこには単なる頑固爺ではなく
『プロレス』
というものの見られ方を特に意識していたのだと思います。
それが古いと言われたら古いのでしょうが・・・

ちなみに、猪木に関しては「人間的に~~」というよりは「約束が出来ない」という意味で咎めてる感じですね。
彼の打ち上げ花火体質が嫌いだったようで、そこが馬場さんと共通するのかなぁと。

インディ批判が多くあった時代にも、「新日だって最初はインディだったじゃないか。TVも無く、有名なレスラーも猪木だけ、外人もB級。今は大きいからとそういう事を言うのはおかしい」と歴史を知るからこその批判(といいうより指摘)もしていました。

フロレスラーとファンの狭間で

ご冥福をお祈りします。ゴングの愛読者でしたから本当にお疲れ様と言いたいです。
そばやの話はいいですねぇ。
簡単で味気ない追悼記事と違い、いつも膨大な資料からのツボをついた掲載をしてくれるレガさんに今日も感謝です。
なお私も馬場派の方も、たぶん菊池さんもプロレスファンであるならば猪木に深い敵意はないはずです。なんといっても猪木はアントニオ猪木ですからね。

桜井さんとかターザンとかプロレスの内側までまたぐ方がありますが菊池さんは弁えておられたと思います。
「プロレスは、やった者じゃなきゃわからない」という声に対する反論の件ですが、個人的にはマスコミであれ一般人が入れない一線はあってほしいと思います。
レガさんも書いておられますがプロレスラーは神聖であるべき、あってほしい存在です。
では菊池さんに限らずプロレスマスコミの存在意義とはなんでしょうか。
ヤフーの追悼記事のコメントに「結末の決まっているショーに評論は必要ない」みたいな声がありましたね。
私はファンの感動・感覚を言葉に変換する作業なんだと思います。それはもう文学と哲学が入り混じった崇高な仕事ですわな。
一時マット界に遷延したラリアットプロレス、誰でも持つマイク、大技発表会などは会場で刹那的に起こる歓声をレスラーが勘違いした産物だと思います。
そこらあたりの微妙な食い違いを適切な言語に変換することがレスラーへのフィードパック、ファン自身の深奥の欲望への気づきになるんじゃないか、それがプロレスマスコミの最も大きな存在意義じゃないかなと思います。
上手いプロレスのさらに上を行くものが何なのか。
菊池さんの好きな実力者ゴーディエンコにあってホフマンにないものは何だったのかとかね。
今と昔の比較なんて面白そうです。菊池さんの後輩たちは暴露本で小銭を稼ぐことより、襟を正して王道を追及していってほしいと思うわけです。

菊池さん、今年のG1や秋山・船木の三冠戦はご覧になってから逝かれたのでしょうか。
レガさんは私がこんなこと言うと驚くかもしれませんがオカダカズチカは同じ頃のジャンボを越えて過去最高級クラスの逸材と思います。
秋山・船木は三冠戦のパターンを裏切る逆説的勝負論の見せ方でした。
格闘技ショックを超えて健全な勝負論でファンの方がのっている時代が来たのかもしれません。
昔からプロレスに関わっている菊池さんも安心できるタイミングでのご逝去だったのかもと思います。
まあいくら年を重ねても、所詮仕事も女性も人生もすべて盲人象をさわるですからね(フッ・・オカダ風ニヒルな笑)

>ジョーカー ナリさん

大仁田劇場真っ盛りの時代に週刊ゴングに載っていた控え室での菊池さんとの会話<ナリさんにとってまさに鉄板ですね(笑)
この場合、菊池さんも大仁田劇場の登場人物だったのか? それとも???

猪木を「猪木」、馬場を「馬場ちゃん」と呼べる唯一の評論家<馬場さんとはプライベートでも親交があったみたいですね。
記事にもある様に、最初は猪木も寛ちゃんだったそうです。

「頭の古い人」と思われがちですが、そこには単なる頑固爺ではなく『プロレス』というものの見られ方を特に意識していたのだと<むしろインディとかデスマッチの団体なんかもちゃんと見守ってた様ですから、私なんかの方がよっぽど古いかも知れないです。

インディ批判が多くあった時代にも、「新日だって最初はインディだったじゃないか…今は大きいからとそういう事を言うのはおかしい」<その通りですね。
歴史を知り尽くしているからこそ、言う事が許された部分ありますしね。

そういった古参が関係者に少なくなって来ていますよね。

>アスク御大

膨大な資料からのツボをついた掲載<そう言って頂くと、嬉しさもひとしおです。

プロレスファンであるならば猪木に深い敵意はないはず<その辺りがやはり馬場派の懐の深さでしょうか。U系ファンに爪の垢を煎じて飲ませて欲しい…私も含めて。

個人的にはマスコミであれ一般人が入れない一線はあってほしいと思います<人それぞれ線の引き方はあると思いますが、やはりレスラーと言うのは雲上人であってもらいたいです。

「結末の決まっているショーに評論は必要ない」<それを言ってしまったら映画をはじめとしたショウビジネスには一切の評論は必要ないことになりますね。
もちろんプロレスも他のスポーツもプロである以上はショウビジネスですから。

感動・感覚を言葉に変換する作業…文学と哲学が入り混じった崇高な仕事<そうですね。レスラーももちろんですけど、やはり崇高な世界ですよ。

上手いプロレスのさらに上を行くもの…ゴーディエンコにあってホフマンにないもの<何を置いても“強さ”こそが絶対条件ですね。
MMA技術の強い弱いはプロレスの世界においてはほんの一部分ですし。

オカダカズチカは同じ頃のジャンボを越えて過去最高級クラスの逸材<これ馬場派だからオカダの凄さが側判別出来たんじゃないですか?
諏訪魔とのファーストコンタクトで気付かなかったら、何年馬場さんのプロレス観てたの? って話になりますから。

秋山・船木は三冠戦のパターンを裏切る逆説的勝負論の見せ方<むしろこっちの闘いには馬場さんの世界…全日完全否定がありました。
これ近々Upしますので、その時ゃアスクさん、再びコメ願います。

格闘技ショックを超えて健全な勝負論<“勝負論”といえば…ちょうど9年位前ですか?
アスクさんに対して私、「もう勝負論なんてどこにもないんですよ!!」ってやった事ありました。憶えてます?
非常に幼かったですね、プロレスの見方が。
あの時アスクさん「そのうち、またわかりますよ」的なご返答されて、私はヒートした記憶があります。
やっぱりキャリアって偉大ですよ。
私がアスクさんに勝ってるのって、本当Uという時代を観ていた事ぐらいですから。

いくら年を重ねても、所詮仕事も女性も人生もすべて盲人象をさわるですから<勉強になります!!(藤原式敬礼)
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