物騒さ世界一決定戦~前編~(1980)

今回は序章のつづきとなりますが、

試合までに、まだまだいろいろな事が起きて行きます。

8月の記者会見後、

11.23~25の3日間、日本武道館で行われた、

『第2回オープントーナメント全世界空手道選手権大会』において、

ウィリー・ウィリアムスアメリカ代表として出場
ウィリー@第3回世界大会

下馬評通り勝ち上がってきますが、

準決勝の三瓶啓二戦で“不可解な”反則による失格負け。
ウィリーvs三瓶

年が明けるとウィリーは再び来日し、

新格闘術の黒崎健時藤原敏男と猛特訓。
鬼の黒崎師範

さらに1.20~29にかけて、ムエタイの肘と膝の技術を習得する為にタイ・バンコクへ。

念願のアントニオ猪木戦へ向けて、

最終調整に入りますが、

予期せぬところから新たな火種が上がります。

それはウィリーが来日する直前に発売された、

男性誌『GORO』の記事が発端でした。

“猪木戦直前座談会”として、

大山倍達総裁梶原一騎極真会評議委員、第2回世界大会優勝者の中村誠二段、そしてウィリーをはじめとする4人の有段者が出席。

対談中に梶原氏の「猪木はウィリーのパンチ一発で死んでしまう」の他、

中村二段「猪木なんてもうトシですよ」

ケニー・ウーデン・ボガード(南ア)「猪木のアリキックなど極真に比べれば子供騙し」

等々…。

もちろんこれに黙っている新日ではありません。

「何を根拠に猪木を誹謗するのか? 中でも梶原氏は立会人でありながらの暴言。梶原氏が公式の場で謝罪しない限り、猪木vsウィリーは白紙に戻す」

「一流派の一王者に過ぎない中村何とかが世界の猪木に向かって暴言など10年早い。2.8東京体育館で特別に枠を設けるので、ウチの藤原喜明、荒川真、山本小鉄の中から一人選んでもらって闘おう」


と。

これで再び泥仕合突入かと思われた矢先、

鬼の黒崎氏の仲介でやっと、

2.27蔵前での開催が決定します。

と、同時にこのタイミングで、

極真会館は大山茂北米支部長を無期禁足、

さらにウィリーには“破門処分”を下します。

ここまで書いてきて、

当時の背景を知らない私には大きな「???」が浮かんで来ます。

前年春の時点で「他流試合を強行すればウィリーは破門」と発表して来ながら、

刻々と猪木戦実現へ向かっていく中、

ウィリーは普通に世界大会出場。

そして総裁同席の座談会で猪木戦について語り合い

試合が正式決定すると同時にここで破門。

何かしっくり行かないものがあります。

そんな雑念を払う為にか、

猪木はパラオに飛んで最終調整。
パラオのイノキ・アイランドで、

体調は不完全ながら、
坂口らと走りこむ猪木、

大きな太陽の光を浴びて、
プッシュアップする猪木、

鋭気を養いました。
砂浜でのシャドー・タックル

いよいよ当日を迎えます。

1980年2.27 蔵前国技館

会場は1万1000人の超満員です。
超満員1万1000人の蔵前国技館

それもいつものプロレス会場とは全く異なる威圧感、

殺伐感、殺気…I編集長言うところの“殺し”

そして、プロレスと極真空手という、

リアルとファンタジー、さらにリアリティさえも境目がない世界の融合。

それを人は梶原ワールドと言いますね。

全てひっくるめて、必要以上に“物騒な世界”。

解説の小鉄さんのファッションにも殺気が漲ります。
放送席もピリピリ

この物騒さの根源には、

会場の異様な空気があります。

Gスピリッツ SPECIAL EDITION Vol.1 アントニオ猪木 (タツミムック)
 Gスピリッツ SPECIAL EDITION Vol.1 アントニオ猪木 より
激録 アントニオ猪木

櫻井康雄
「あの時は添野義二さん(現・空手道連盟士道館館長)が門下生をたくさん連れてきてね。彼がウイリー側の防衛隊長みたいな感じで会場に来てたでしょ。まあ、最終的には添野さんも梶原さんもみんな大山さんに破門されちゃうんだけど」

「(ウィリー側セコンドが全員拳にガッチリとテーピングを巻いていたのは)いざという時のためにね。裏で新間氏も添野さんに蹴られたもの。(略)猪木側の方にも名古屋から(寛水流)空手の人たちが来てましたし。新間氏が抑えて、そんなに前面には出なかったんです。あの時、寛水流は猟銃を持ってきてたんだよね。僕は『空手に猟銃はないだろう』と言ったんだけど」


 プロレスVS格闘技大戦争!―プロレスラー異種格闘技戦名勝負 より
真樹氏
猪木、佐山、力道山はセメントで強かった!

真樹日佐夫
「あのとき、会場には警備員が100人もいたよ。金属探知機も用意されていた。それに引っ掛かって帰れなくなった奴もいたよ。あのときは何人も留置場に入ったんだ。俺も(途中で)絶対にプロレスファンと空手ファンの戦争になると思ったから、どさくさにまぎれてレスラーを蹴飛ばしてやれということで鉛入りの靴(スニーカー)を履いていったの。鉛は金属探知機に反応しないからね。でも鉛の重さですぐに脱げてしまうから、上からガムテープで張りつけたんだ。ちゃんとその靴を履いてサンドバッグを蹴って感触を確かめてから会場に向かったよ」


防衛隊長…拳にテーピング…100人の警備員…金属探知機…鉛入りスニーカー…猟銃!!

一つ一つのキーワードに“物騒さ”はとどまる事を知りません。

さらに調査を進めるとわかった事は、

▼警備員の内訳は蔵前署から警官40人、清水スポーツから100人

▼第一相互警備保障からガードマンが金属探知機を持って入場者チェック(この金属探知機は三菱銀行爆破事件以来の使用)

▼カメラマンは各社1名のみリングサイドでの撮影を許可。グリーンのジャンパー着用を義務

▼場内、控室での撮影はブルーのジャンパー着用を義務


ジャンパーの意味は『一瞬で極真側の人間じゃないと見分けられる為』です。

試合直前の控室、

ウィリー側リポートは現在テレ朝の夕方の顔、渡辺アナです。
試合前のウィリー

猪木側リポートは10年後、猪木の怒りを引き出す事に成功した佐々木アナ。
試合前の猪木

そして入場、

ウィリーは極真の猛者に囲まれてハイテンションです。
入場で吠えるウィリー

一方の猪木は気負いのない自然体。
ピリピリした猪木の入場

むしろ脇を固める長州と星勘の方が殺気立っています。

肩越しに見えるのは付き人の前田。

その後ろの黒山の人だかりは寛水流の面々です。

リングには二階堂コミッショナーと黒崎氏…新間氏も含めて、

何とも物騒な顔ぶれです。
そうそうたる顔ぶれ

さらに物騒さを高めるレフェリーはユセフ・トルコ!!
グローブに注文をつける猪木

女子供が一切立ち入る事の出来ない世界…

次回、中編にてゴングです。

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tag : アントニオ猪木 ウィリー・ウィリアムス 格闘技世界一決定戦 極真会館 黒崎健時 櫻井康雄 梶原一騎

comment

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No title

 アーカイブで振り返っている中で、「猪木VSアリ」が現在につらなる異種格闘技戦の神話とされすぎている面もあるゆえ、そこまで過去を調べていても衝撃は無いんですが、この「猪木VSウィリー」に見られる「プロレスVS空手」の引き起こすイマジネーションと言いますか、真樹氏の「プロレスファンと空手ファンの戦争になると思った」の響きの凄まじさ(笑)は自分の中ではあの梶原氏も噛んでるというのも含め、「解釈しにくい、真相の見えない熱狂を持った昭和」の側面を持っていて、これが一番調べてて衝撃が強かったですね。もう宗教戦争の側面すらあるというか。

新日本プロレスが中村誠の対戦相手に藤原、荒川、小鉄の名前を出したのがいいですねぇ(^O^)

永源、栗栖でなく、やはりこの3人です!
この時、藤原30才?もしも実現していたらその後の歴史が違ったのかもしれませんね。

このスケールに比べると、誠心会館ではかなり違います。すごい時代です!

こんばんは。この試合はリアルタイムではなくキラー猪木のビデオを買って見ました。94年の夏 Uインターがグレイシーに挑戦した頃です。今に置き換えたら高田対ヒクソンだよなあと思いながら見ていました。とんでもない緊張感は感じました。また10・11が近づいてきますね。中編も期待しています。

>887-8798さん

「猪木VSアリ」が現在につらなる異種格闘技戦の神話とされすぎている<近年かなり頻繁に振り返られてますからね。

「プロレスVS空手」の引き起こすイマジネーション<当時は今のMMAの数十倍のステイタスと神秘性を持った2大勢力でしたからね。

「解釈しにくい、真相の見えない熱狂を持った昭和」<今思い返しても熱量が半端じゃないんですよね。
玉ちゃんじゃないけど、エコの時代には絶対実現出来ない無駄なまでの重さがありますね。

>TKさん

中村誠の対戦相手に藤原、荒川、小鉄の名前を出したのがいい<確信犯…ですよね。
小鉄さんは引退直前ですから鬱憤もあったでしょうし、荒川も面白いですよね。ただ組長は当時日本にいなかった様な気もしますが…どうでしょう?

このスケールに比べると、誠心会館ではかなり違います<悲しいかな、私には誠心会館との抗争が思い出として残るだけなんですよね。
ただ仰るとおりで、当時の顔ぶれ見ても役者が違いますよね。

>aliveさん

こんばんわ。

キラー猪木のビデオを買って見ました<出てましたね。かくいう私も中学時代にレンタルで借りてきたビデオで初めて見ました。

今に置き換えたら高田対ヒクソンだよなあと…とんでもない緊張感<PRIDEの世界観が最もこの時代に近いですよね。しかしながら、この“物騒さ”まではありませんでした。
PRIDEの怪人はじめリングサイドの面々もかなりアレでしたが、この何とも言えぬ“重苦しさ”は梶原ワールド特有の物でしたよね。

戻りました

以前にも記事があったと思い戻りました。
当時は凡戦と思った試合でしたが、
裏ではこんな迫力があったとは(~_~;)

>腹さん

当時は凡戦と思った試合でしたが、裏ではこんな迫力があったとは<この物騒さ…尋常ではないです。
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