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男の宿題~Uインターの最終話/後編~(2002)

さあ、前編からの続きです。

高田延彦引退試合は第1ラウンド中盤に、

田村潔司のミドルキックが金的に入るというアクシデントから、

一度試合中断を経て再開しました。
試合再開!

しかし田村のローキック地獄は止むことなく、

高田の右足にどんどんダメージを蓄積させていきます。
田村は左ロー

しかし私が思うに、

金的アクシデントによる中断以降の高田は、

田村のローキックをカットする意思がない様に見えるのです。
踏み込んでの左ロー

それはただ単に、

ダメージが深すぎて右足が上がらないのか、

或いは7年前の田村の思いの丈を、

ここで全て受け止めようという決心からなのか、

ちょっとわからないのですが、

とにかくサウスポーに構えて、

右足を大きく前に踏み出したスタンスなのです。
高田は右足を差し出しているのか?

当然、田村にしてみれば絶好の位置に、

高田の足が置かれている訳ですから、

日頃の練習で体に染み付いている通り、

腰の入った左ローキックを見舞っていくだけです。
モロに左ロー

この展開を至近距離で見つめる、

田村側セコンドの宮戸優光も、

高田の心情をこう読み取っています。

UWF最強の真実表紙
 U.W.F.最強の真実 より

宮戸
タムちゃんが蹴る。タムちゃんの強烈なローキックに、高田さんは脚を差し出しているように私には見えた。「俺を叩き斬ってみろ!」「お前が俺とやりたいと言った、その気が済むまで…」そんなふうに高田さんが無言で言っているようだった。


これには蹴り続けている田村自身も、

高田の闘い方に何かを感じた様で、

足応えある一発を入れた直後、
これもモロに入る

思わず小首を傾げていますね。
思わず小首を傾げる田村

気が付くと高田の大腿部裏側は、

内出血によって紫色に変色してきました。
高田の大腿裏は変色

見る見る削られていく展開の中、

田村の蹴りはより切れ味を増していき、

高田の右足はさらに大きく流れていく様になりました。
踏ん張りが効かない高田

思わず田村側セコンドのはずの宮戸は、

高田に声援を送り出します。

宮戸
タムちゃんも一発、一発、蹴るたびに顔がゆがんでいる。闘っているタムちゃんにも高田さんの気持ちが伝わっていたのだろう。蹴っているタムちゃんも心が痛かったと思う。
「高田さん、頑張って!」「高田さ~ん!」「高田さん、しっかり!」
思わず私は思いっきり叫んでしまっていた。たしかに私はタムちゃんのセコンドとしてリングサイドまで来た。しかし高田さんのボロボロの姿、そして今、目の前で自ら燃え尽きようとしている高田さんを見て、思わず言葉が出てしまった。その声はタムちゃんにもきっと聞こえていたと思う。あの後、タムちゃんは私に何も言わなかったが、タムちゃんもあのときの私の気持ちはわかってくれていたと思う。


もはやこのリングがUインターであると錯覚している宮戸には、

田村側も高田側もないという状態なのですが、

闘っている田村とすれば大いに面食らった印象だった様です。

孤高の選択表紙
 孤高の選択 より

田村
僕のセコンドには宮戸さんがついていた。僕がローキックを蹴ると、宮戸さんの「高田さん!」という声が聞こえてくる。
ただ、それは明らかに「頑張って、高田さん!」という、高田さんに喝を入れる意味の「高田さん!」なのだ。あれはどう考えても高田さん側のセコンドが、僕のコーナーにいるかのようだった。
つまりは宮戸さんにも、僕が高田さんを追い込んでいるのがわかるのだ。もちろん僕にもわかっている。高田さんにもわかっていただろう。だから宮戸さんは「頑張って、どんどんいかなきゃ!」と高田さんに対していっているのだ。
それがまた僕の耳に入ってしまうと、自然とこっちはツラくなる。妙に攻めづらくなるのだ。


その一瞬の心理状態を衝く様に、

高田は前に出る戦法をとって来ました。

意を決して田村がローを放つタイミングに合わせ、

左右のパンチを繰り出していきます。
こうなったらインファイトしかない

まるでユニバーサルプロレスでの若手時代(参照:遠慮知らずのリスペクト)の如く、

ガムシャラに連打していくと、

右フックが顔面を捕らえたかの様に見えましたが、
右フックは当たったかの様に見える

田村も回り込んでの左ローキック!

またそれに合わせて高田も左ストレート!
田村のローに合わせての左

田村は左ミドルキックを放つと、

高田は受け止めて左からのパンチを見舞いつつ、
左ミドルは受け止めて、

体重を乗せていきながらテイクダウン成功。
意地でテイクダウン奪取

そのまま上になりますが、

すぐに田村も対処して、
上になったのは高田

その先へ行かせることなく、

ガッチリとガードポジションに固めてしまいます。
田村はガードを固めるのみ

高田の顔が至近距離に来たこの局面で、

複雑な心理状態にある田村の表情は一変。
ガードポジションの田村の表情

しかし感傷に浸ってる場合ではありません。

高田が局面を変えるために足を立てていくと、

オープンガードの田村はTKガードによるコントロールから、
TKガードから逆転する田村

逆転して上のポジションを取りました。

今度は下になった高田がクロスガードを固めます。
高田はクロスガード

このポジションにおいて田村は、

決して高田を殴りに行きません。

それどころか顔も見ない様にしています。

逆に高田は下から隙を窺って、

細かいパンチを入れていきます。
下からパンチの高田

これについては『田村が殴らなかった』説が多数ですが、

よく観ると高田はしっかりと左手で、

田村の両手のグローブを固定しているんです。

実は『田村に殴らせなかった』のではないか、と。

高田のPRIDEでの5年間に亘る実戦経験が、

生かされた場面だと私なんかは思うのです。

ここを打開しようと瞬時に田村が起き上がりますが、

高田は田村の右手首を掴んだまま、

足でコントロールしていきます。

…これマーク・コールマン戦(参照:“辛”剣勝負)のフィニッシュを彷彿とさせますね!!
この体勢は!

田村はすぐに離れて距離を取ります。
田村が離れて

この試合2度目の猪木アリになったところで、

第1ラウンドも残り僅か。
1R が終わる

終了のゴングが鳴らされると、

二人は改めてグローブを合わせてから、

それぞれのコーナーに戻っていきました。
1ラウンド終了

とにかく蹴られまくった高田、

少しでもインタバル中に回復せんと、

椅子に座って豊永稔のケアを受けます。
インタバル中の高田

一方の田村は椅子にも座らず、

高田に背を向ける格好で、

静かに第2ラウンドの開始を待ちます。
インタバル中の田村

7年越しに巡って来た“真剣勝負”の場でありながら、

もはや田村にしてみれば、

勝ち負けを超越した試合となっていました。

田村
これは、もしかしたら高田さんに失礼になるかもしれないけれど、勝ちたいとか、殴りたいとか、そういう次元ではないのだ。きっとそれは高田さんも同じ心境だったと思う。
勝つにしてもどう勝つのか。
負けるにしてもどう負けるのか。
僕も高田さんも、この試合がどう終わるのか、どう終わればいいのかを迷っていたと思う。いや、迷うっていうのはおかしないい方になる。しかし、やっぱり迷っていたとしかいようがない。


田村にとっても、

また高田にとっても、

着地点が見つからないまま第2ラウンドが始まりました。
2ラウンド開始

田村が出した答えは、

とことんまで高田の右足を蹴り続けることでした。

再び左ローキック地獄が始まります。
再び左ロー地獄が始まる

高田は一発ごとにバランスを崩していき、
2Rも田村のロー

戦意喪失も時間の問題か? と、

そう思われた直後の出来事です。
高田のダメージ大

高田がリングの対角線を駆け抜ける様に、

田村の顔面めがけてラッシュをかけていきました!!
一気に前へ出て右を打つ高田、

高田の気迫に圧されながらも、

田村は左ミドルで食い止めんとしますが、
田村は左ミドルで食い止める、

なおも前に出る高田の左がヒット!

さらにワンツーの要領で右を打ちに行った瞬間…、
かまわず前に出る高田

これ以上ないというタイミングと角度で、

田村が放ったカウンターの右フックがヒット!!
田村カウンターの右フック!!

高田はモロに顎に食らい、

尚且つ完璧なまでに打ち抜かれたことで、
顎を打ち抜いた!!

ローキックの蓄積で右足の踏ん張りも利かず、

前のめりにノックダウン!!
前のめりに高田ダウン!!

瞬時に和田良覚レフェリーが割って入り、

終了のゴングが要請されました!!
KO!!

高田の目は完全に飛び、

かなり危ない状態にあります!!
高田KO負け!!

勝者となった田村も思わず、

『何ということをしてしまったんだ!』とばかりに、

まるで敗者の如くキャンバスにうずくまります。
勝者田村もうなだれる

和田レフェリーが左腕を挙げるのも、

田村は拒絶する勢いです。
和田レフェリーの腕上げも拒絶

これまでUWFの同門対決史上見たことがない、

壮絶なKOシーンに衝撃を覚えましたが、

逆に捉えれば、ここまでの完全決着は、

Uの理想郷ともいえる結末かも知れませんね。

Uインタージャージ姿の宮戸と上山龍紀が田村のもとへ。
セコンドが田村のもとへ

田村は倒れたままの高田に目をやると、

一気に込み上げてくるものがあったか、

その場に座り込んで涙をこらえます。
涙をこらえる田村

宮戸はUインター時代そのままに、

ドクターや高田道場勢を押しのけて、

高田の介抱にあたります。
高田を介抱する宮戸

ゆっくりと意識を取り戻す中で高田は、

松井と豊永の肩を借りて起き上がると、

一瞬清々しい表情で天を仰ぎました。
清々しく天を見る高田

そしてノーサイドとばかりに、

田村を抱擁して耳元で語りかけます。

高田
「どうもありがとう」

7年越しの抱擁

高田に手を挙げられる田村、

今度は素直に応えますが、

こらえていた涙も溢れてしまいました。
勝者を讃える高田

そして田村は7年前の非礼を詫びるため、

先にマイクを持ちました。
田村は涙目

田村
「あのー…、まず…高田さんありがとうございました(礼)。そして、いろいろと温かい目で見て頂いて、いろいろご迷惑をおかけしました。どうもすみませんでした(礼)」

高田への感謝とお詫び

田村
「あのー、今、正直何を言っていいのかわからないんですが、えー、今日引退されるということで、本当、実感がないんですが、最後に22年間、夢と感動を与えてくれて、どうもありがとうございました。お疲れ様でした。以上です(礼)」

聞き入る高田

田村は再度、頭を下げながら、

高田にマイクを渡しました。
マイクが渡される

高田
「一言だけ言わせて下さい」


目に涙を浮かべたまま、

田村は神妙に聞き入ります。
神妙に聞き入る田村

高田
「田村潔司! お前、今日よくここに上がって来たよ。お前、嫌な役を引き受けてくれたよ。田村…お前、男だ。ありがとう!!」

名言「お前男だ」

7年間のわだかまり(参照:一番大きなボタンの掛け違い~前編~同~後編~)が氷解した名場面、

『過去が変わった』瞬間(参照:大きなボタンが掛かった夜)ですね。

私も含めてUインターが好きだったファンは、

全員が涙したラストシーンだったはずです。
過去が変わった瞬間

ここまでリングサイドで静かに見守っていた、

向井亜紀夫人の目にも涙が光ります。
亜紀夫人も涙

宮戸は試合前にこのシーンを予言していました。

「高田延彦」のカタチ表紙
 「高田延彦」のカタチ―高田延彦22年間とは?1981‐2002 より

宮戸
「いや、ホント勝負論じゃないよ、この試合は、僕らにとっては特にね。やっぱりなんかこう…、なんだろうね。何か不思議なものが入ってるね。含まれてる試合だね。だから高田さんが最後をタムちゃんと闘って終わる、というのは、過去にできてしまった身内のシコリだけど、それを超えることで、また自分たちの過去もまた変わってくるような気がするね」


ドーム全体が感動に包まれた中で、

高田は改めて四方に頭を下げ、
四方への礼から、

『トレーニング・モンタージュ』が流れてくると、

退場する直前にもう一度マイクを持ちました。

高田
「えー、負けた自分が言うのもカッコ悪いんですけども、今日は本当に、今日まで22年間、どうもありがとうございました。そしてPRIDEの応援ありがとうございます。今、自分の試合終わりましたが、まだ今日終わってません! 最後は、桜庭が! 最後締めます。ガッチリ応援してあげて下さい! お願いします!!」

メインのサクへつなぐ

自分の引退興行ではあるけれども、

あくまでPRIDEの主人公はサクなんだ! という、

当時の高田の意識がハッキリと示された場面ですね。

高田はリングを降りると、

真っ先に師・アントニオ猪木のもとに向かいました。
真っ先に猪木のもとへ

引退ということの意味からか、

高田は猪木にスーツの上着を掛けられ、
上着が渡される

それを手に花道を退場していきました。

その先にはメインを控える桜庭和志の姿が。
桜庭へバトンタッチ

私が観ている分には、

実に良い師弟関係だったんですけどね(参照:いつかまた…)…。
握手を交わす

再びゴンドラに乗って降りていった高田、

安堵の表情と共に少しだけ小さくなった様に見えました。
ゴンドラが降りて高田は去る

メイン終了後、興行のエンディングは“プレUインター同窓会”の趣(参照:Uインター上がって来いや!!)。

その場にいた私は本当に幸せでした。
高山の肩車

Uインターという90年代の高視聴率ドラマが、

一夜限りの最終回特番を組んでくれて、

エキストラとして出演した様な気持ちになったものです。
安生の肩車で退場する高田

実にあの日から17年。

アンタッチャブルな人間関係が目立つUWFの中で、

今でも高田と田村がつながっていることが、

嬉しい限りです(参照:いいよなぁ…)。
高田と田村1

その裏打ちにあるのは“男と男の宿題”、

高田は最後に長年の宿題を果たして、

田村は提出された宿題を大切に保管している。

完全版証言UWF表紙
 完全版 証言UWF 1984-1996 より

高田
「田村もヒールになる覚悟でよく引き受けてくれたよ。ずいぶん長い時間残ったままの宿題だったけど、結果的に世界最高峰の舞台で、その宿題を解決できたと考えれば、田村の呼びかけに応えられなかった、あの選択も悪い選択じゃなかったな。人の運命って面白いよね」


やっぱり私は、

高田延彦田村潔司が大好きです(参照:覚悟の表れ)。

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tag : 高田延彦 田村潔司 宮戸優光 向井亜紀 UWFインターナショナル

comment

Secret

No title

時代が変わり、元号が変わっても
この2人がやっぱり1番好きですね!

いつまでも素敵な思い出を忘れずに、
生きていきたいと思います。

素晴らしい記事、いつもありがとうございます。

No title

話は変わりますが、レガさんはnoahに現在桜庭と田村が上がっているのにはどういうご感想をお持ちでしょうか?

>何歳重ねても、さん

初めまして。
コメントありがとうございます。

この2人がやっぱり1番好き…いつまでも素敵な思い出を忘れず<ご同輩ですね! 二人の節目節目を見て来て、最後にあのドームを観て全てが浄化された感ありますよね。

こちらこそ、今後とも宜しくお願い致します。

>名も無き戦士さん

noahに現在桜庭と田村が上がっている<現時点においては田村と桜庭はノアでの立ち位置がかなり違うと思いますが、これまでほとんど接点なかったですからね。特に田村は全くと言っていい程。
いろいろ考えてまとまりましたら記事にしたいと思います。そのときは宜しくお願いします。
紫レガとは?

紫レガ

Author:紫レガ
47歳のプロレス話


「昔はインターネットを旅してましたからね。毎晩ブログでね、今みたいにSNSがいっぱいある訳でもないし、終わったらみんなブログでね、一日の終わりにUPして。今こんなこと言ったらエラいことになりますけどね、よく寝不足になったね、部屋でPCを打ったりね。…いや、そういう歴史はちゃんと教えとかないとね」

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