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Uよく柔を制す~後編~(2000)

前編のつづきです。

1ラウンド開始早々のピンチから逃れた田村潔司ですが、

ヘンゾ・グレイシーは尚も寝技に持ち込んと、

低いタックルで飛び込んで来ました。
低いタックルで飛び込むヘンゾ

田村は右足を取られながらも、

きっちりがぶって潰しに行きます。
きっちりと潰しに行く田村

ここら辺りは8キロの体重差が効いているのか?

田村は脇腹へ細かくパンチを入れます。
ボディへ細かいパンチ

ヘンゾは諦めず右足を引きつけていき、

自然とスタンドの状態になりますが、

しっかりと田村は後頭部を抑え付けてコントロール。
諦めないヘンゾに田村は頭を押さえて防御

左へ体重移動して、

逆にヘンゾの右足首を取りに行きます。
横に体重移動していくも

ヘンゾは両手のロックを解かず、

執拗にテイクダウンを狙っていきますが、

田村はガラ空きのボディへパンチ。
ヘンゾは執拗に離さない

このKOKルールにおいて簡単には寝る訳にいきません。

焦れた田村は、

ヘンゾの右脇に左腕を差すと、

ロックを切ると同時に引っ繰り返しにかかります。
脇を差す田村

それならばとヘンゾは、

基本通りにガードポジションへの移行です。
ヘンゾはガードポジション

組手争いからヘンゾが左手首を掴むと、

田村は空いてる右でボディへ一発。
下から狙うヘンゾ

顔面へのパウンドが許されないKOKルールにおいては、

下にいるヘンゾも余裕を持って仕掛けます。

足で田村の重心をコントロールしていきますが、
一瞬だけコントロールしますが

田村は離れて立つと、

瞬間的に猪木アリ状態へ。
田村は一度スタンドへ

直後にすぐさまパスガードを狙っていきます。
パスを狙う

ヘンゾは手足を駆使した鉄壁のガードで、

決して田村の攻め手を許しません。
緻密な攻防の中

この状態で1ラウンド終了のゴングが鳴らされました。

まさにあっという間の5分間でした。
1R終了のゴング

インタバルに入った田村ですが、

全く息が乱れていません。
息も乱れていない田村

この試合の1か月半前から始まった、

U-FILE CAMPにおける“文字通り”合宿の成果です。

KAMINOGE20表紙
 KAMINOGE vol.20 より

田村
「ヘンゾ戦のときは、
(略)登戸ジムに寝泊まりして、朝から一日中、3部練習して、自分のやるべきことはすべてやったから、落ち着いてはいたかな」


孤高の選択表紙
 孤高の選択 より

田村
この試合前、ジムに泊まり込んで練習を続けた。といってもジムには眠るスペースなんてないから、ジム内にある事務所の奥の書類が置いてある机の横に、布団を敷くスペースを無理矢理つくって寝泊まりをした。その練習にグチひとついわず付き合ってくれた上山(龍紀)にも、すごく感謝している。あのときは朝・昼・晩と一日3回の練習をこなしていた。


第2ラウンド開始と同時に、

Uの技術を全面開放します。
2ラウンド開始

第1ラウンドは待ちのスタイルでしたが、

今回は自ら距離を詰めてのローキックで先制。
自身も驚く右のローキック

田村は自らの心理状態に気付きます。

田村
僕は思わず右のローキックを蹴った。僕のキックがヘンゾの左足の外側を捕らえる。でも、本来なら僕は右のローキックはあまり使わないのだ。それが右のローキックが蹴りやすかった、ということは、かなりリラックスして臨めたという証明だった。このラウンドは、硬くならずに試合ができた。


ヘンゾもパンチから前蹴りと出ていきますが、

いかんせん一発一発が軽いです。
ヘンゾも前蹴りで前へ

ヘンゾがタイミングを計って前に出たところ、

冷静な田村はカウンターでもう一発ローキック。
カウンターの右ロー

出鼻を挫かれたヘンゾのタックルは減速し、

再び田村ががぶって潰しました。
ヘンゾのタックルはきっちり潰す

そこから田村がバックに回ると、

ヘンゾは前方に転がっての膝十字狙い、

田村は先回りして回避すると、

ヘンゾの足首を掴んでいきます。
田村は極められないことを確信したか

再びヘンゾはガードポジションになり、

田村は上になってパスを狙っていく展開。
ヘンゾの堅いガード

ここでヘンゾは田村の左手首を捕まえて、

上体をコントロールすべく右足を上げたところ、

ちょうど顔に当たってしまいました。
思わず足が顔面に

田村がレフェリーに目で抗議すると、

ヘンゾに対して軽く注意が入りました。
レフェリーから注意

田村はもう一度離れて猪木アリになりますが、

今度はヘンゾの方が足を狙っていきます。
一旦離れる田村は

そこに上から田村が右のパンチ!

胸部を狙いましたが、

やや顔面をかすめたか?
上からパンチ

すかさずヘンゾはクレームを入れますが、

偶発且つレフェリーの死角とあって、

そのまま続行です。
これが顔面に入ったとヘンゾが抗議

一方、この隙を見た田村は構わず、

左右のパンチ連打をヘンゾにお見舞いし、
田村は構わず連打

そのまま上になると、

ヘンゾはすぐにハーフガードを取りました。
もう一度上になりヘンゾはハーフガードへ

田村はヘンゾの左足を担いで、

右足を抜きます。
サイドから攻め入り

自らのクラッチを解き、

右手でヘンゾの左膝を押さえると、

サイドポジション奪取!
膝を押さえて

一気に跨ぐと、

マウントポジションも奪取!!
グレイシーからマウント奪取!

当時、グレイシー一族からマウントを取ることは、

レスリングのグレコローマンスタイルにおいて、

アレキサンダー・カレリンからポイントを奪うくらい困難でした。

間を置かずヘンゾがすぐさまハーフガードに戻す辺り、

あながちオーバーな表現でもないでしょう。
すぐにヘンゾはハーフガードに

『ここから極められることはない』と踏んだか?

田村は敢えてヘンゾとの間にスペースを作り、

細かいパンチを入れます。
田村は細かいパンチ

その油断を衝いたか?

ヘンゾは田村の左側に体重移動し、

谷落としの要領で転がしていきました!
ヘンゾは下からコントロール

しかしロープが回転を制御し、

体勢を戻した田村は上からヘンゾを潰すと、

改めて気を引き締めていきます。
絶対に上を譲らない田村

もう一度、身体を返して、

ガードポジションを取り直す鉄壁のヘンゾ。

田村はその大腿部に細かくパンチを刻みます。
鉄壁のヘンゾ

田村も再度マウントを狙ったか、

立ちながらヘンゾの上半身に体重を乗せていくと、

ヘンゾはこれを待っていたか?

カニばさみの様にバランスを崩しにかかりました。
立つ田村を崩すヘンゾ

田村はすぐにリカバリーすると、

またしてもがぶりからバックを窺います!
ヘンゾの低いタックル再び潰す田村

その隙間を衝いてヘンゾが身体を返すと、

田村は即、反応しての、
下から狙うヘンゾ

強烈なパウンド!
上から殴る田村

もちろんKOKルールに沿ったボディパンチです。

諦めないヘンゾは一気に三角狙い!
ヘンゾは耽々と狙う

ここも瞬間的に凌いだ田村は、

細かくパンチを刻んでいきます。
田村は細かくパンチ

放送席ゲストの糸井重里も力が入ります。

糸井氏
「田村、鬼になれ鬼に!!」

遂にヘンゾは下からの展開を諦めたか?

田村の上半身を両足で跳ね除け、
両足で跳ね除けるヘンゾ

すぐに自らも、

ヘッドスプリングで起き上がりました。
すぐにヘッドスプリングで起き上がる

スタンドで向き合うと、

ヘンゾはここもロングフックから飛び込んでいき、
右のロングフックから

そのまま低いタックルの軌道を変えていきますが、

ここも田村はパーフェクトな対応。
タックルで潜り込むが田村は対応

しっかりがぶってから、

亀になったヘンゾの左腕を、

両足で挟み込んだこの形は???
亀のヘンゾの左腕を両足で挟むと

そう、腹固めです!!

道場で何百回と反復したであろう、

UWFの秘技に館内はドォォーー!!っと湧き上がります。
UWFの秘技腹固めへ!

この時の田村の心境はいかに?

田村
ヘンゾを腹固めで攻める場面があった。もちろん流れ上そうなっただけだったのだけれど、あえていうならグレイシーに対してUの技術を見せつけたいと無意識に思っていたのかもしれない。


無意識の状態…既にゾーンに入った感もあり、

田村は自然な流れでこの技に入ったのです。

もちろんこれは柔道、柔術にも存在する技術、

ヘンゾは持ち前の柔らかい肘関節で極めを回避しますが、

田村は有無を言わせず肘を伸ばしていきます。
一瞬ヘンゾの肘が伸びた!

だがポイントをズラすのはお手のものか、

やがてヘンゾは左肘を畳んでしまいました。

ならば田村はガラ空きの右脇腹にパンチを入れて、
死角からパンチを打つ

意識がそちらにいった瞬間、

今度はフェイスロック!! 武道館は割れんばかりの大声援!!
顔の上がったヘンゾを捕らえ

これもまたUの象徴的な技、

ゴッチさん由来の高等技術です。

田村は締め込みながらヘンゾの頭部に体重を乗せていって、
フェイスロックで締め込む中

ここで第2ラウンド終了のゴング!

田村は技を解き、スクッと立ち上がると、
試合終了のゴング

勝利を確信したか、

ガッツポーズを取りながら赤コーナーへ。
勝利を確信した田村

数秒間の間を置いて判定が読み上げられると、

ジャッジ3名ともに20-19と付け、

判定ながら3-0の田村完勝!!
判定の結果3-0で田村勝利!!

もう一度UWFメインテーマが鳴り始めると、

これ以上ないボリュームで田村コールが巻き起こりました。

田村
UWFのテーマ曲で入場してきた僕が、グレイシー一族から白星を奪ったのだ。
「Uがグレイシーに勝った」
あくまで自己満足の世界かもしれないけれど、僕はこの瞬間、そう感じていた。


これは決して田村の自己満足なんかではなく、

会場にいたファンも、ブラウン管越しに観た我々も、

『Uがグレイシーに勝った! UWFの技が柔術を制した!!』と、

安生洋二が返り討ちに遭って(参照:Yoji Anjo Is Alive 特別編~Yoji Anjo Was Dead...But Alive!~)以来、

耐え忍んできた長い歳月が報われた一戦でした。
伝説の一戦を制した田村

田村はこの後のKOKトーナメント準決勝で、

レナード・ババルに敗れましたが、

紛れもなく優勝より価値のある勝利だったと思います。
田村、準決勝敗退

何せ前年秋の桜庭和志に続き、

日本人三人目のグレイシー狩り(参照:必ず最後に正義は勝つ~前編~同~後編~)ですから。
絞り上げる

この大会は当時、WOWOWで生中継されましたね。

土曜日でしたけど私は仕事中で、

録画したビデオを帰宅してから観る際、

物凄く緊張しましたねぇ。

冒頭に書いた有田哲平ビビる大木のやり取りじゃないですが、

田村が勝とうが負けようが、

私の経済状況も健康状態も何も影響しないのに、

とにかく負けてもらっちゃ困るのです。

今そういう試合がプロレスどころか、

格闘技でもお目にかかれないのが寂しいです。

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tag : 田村潔司 ヘンゾ・グレイシー KOK 有田哲平 ビビる大木

comment

Secret

No title

入場から決着まで、そして勝利の意義。
UWF史上最高の試合だと思っています。

No title

当時は余り評価が高いとは言えない試合ですけど総合力だとヒクソンより上という声も、あったので実際には、もっと評価されてもいいんですよね、田村の勝利は。

これはグレイシーに勝ったとは言えないとか無様に勝ったとの声も、ある中、宮戸がヘンゾが無様に負けたんだとキッパリ言い切ったのを覚えています。

No title

“当時、グレイシー一族からマウントを取ることは、レスリングのグレコローマンスタイルにおいて、アレキサンダー・カレリンからポイントを奪うくらい困難でした。”

あの時代のグレイシー一族の難攻不落ぶりを表すなら、この一文に尽きるでしょう。なにしろ、月謝を払えば柔術もMMAも気軽に教わることができる今日この頃では想像もできない絶壁を当時の田村は登り詰めたわけで、それはKOKルールの煮え切らなさ云々といった一部からの批判なぞ眼中に入らないくらいの感動を私たちにもたらしたのですから。パトスミ戦もそうですが、ヘ田村がリングスに移籍したWOWOWやがてボビー・オロゴンがホイスを青息吐息に「さんまのスーパー

誤って送信クリックしちゃいまして、末文がワケワカメになってしまいました。ごめんなさい‼

要は…田村の勝利は鳥肌もんだったとゆーことです。後にボビー・オロゴンが「さんまのスーパーからくりTV」でホイスを青息吐息にしたときは魔法がとけたような気がしたものですが、逆にいえば、当時のグレイシーは魔法使いのような存在だったんですよ。

>たかはしさん

正真正銘の田村派、たかはしさんお久しぶりです。

入場から決着まで、そして勝利の意義…UWF史上最高の試合<UWFを総合格闘技の歴史に据えた場合、この試合はエポックメーキングだったかも知れません。
入場シーンは断トツですね。

>aliveさん

当時は余り評価が高いとは言えない試合<そうだったんですか? 私はSRS-DX(というかターザンとサダハルンバ)以外は高評価だったと記憶しています。
プロレスラーが競技的な試合でその専門家を完封した訳ですから偉業ですよね。

宮戸がヘンゾが無様に負けたんだとキッパリ言い切った<そこは逆に記憶にないです(汗)。
いずれにせよ、ここから5月のUvsグレイシー2連戦につなげたので物凄いプレッシャーに打ち勝ったと思います。

>ひなの冠者さん

月謝を払えば柔術もMMAも気軽に教わることができる今日この頃では想像もできない絶壁<確かに今では単にマウントを取ることは何てことのないMMAの風景なのかも知れませんが、当時のこのシチュエーションにおいては、これもまた偉業でしたね。

ボビー・オロゴンが「さんまのスーパーからくりTV」でホイスを青息吐息にしたとき<TBSの大晦日はいろんなものをぶち壊したというか…現代における某党首みたいでしたね。

No title

僕はこの日の武道館にいました
田村が入場してくる前はずっと俯いて祈ってました
実はUWFのテーマが鳴ったとき
♫テーン テーン テーン の2回目のテーンまでは
「なんでこれなんだよ」
という意識があったのですが
3回目のテーンで
「背負ってきた!!!」
と気づいて一気に感情が爆発しました
「勝った!勝ったぞ!UWF背負ってきたぞ!負けるわけがない!」
と叫んでました

当時プロレス観戦2度目で、プロレスを知って半年の後輩は帰り道に
「藤原さん(私の名前)、突然大声出したからびびりましたよ
こっちはゆっくり飲み物のんでお菓子食べようと思ってたのに
そんなプロレスとぜんぜん違うんだもん」
と、お前はピースの綾部かってくらいのすっとぼけた感想をいってました。


そして彼は
「なんか、藤原さん
田村が勝ったときにリングに向かって走っていったから乱入するのかとも思いました」
とも言われました。

はい、僕は判定が決まった瞬間に全くの無意識でリングにかけよってリングをバンバン!!と叩く”FMWのアレ”をしそうになってました 笑

リング手前で気づいて、立ち止まって
「田村!やったー!つよいぞ!」
みたいなことを、言っていた気がします。

>ナリさん

2回目のテーンまでは「なんでこれなんだよ」…3回目のテーンで「背負ってきた!!!」<映像で観ると場内のどよめきもそんな感じがしますね。

「勝った!勝ったぞ!UWF背負ってきたぞ!負けるわけがない!」<そこら辺の確信というのがプロレスファンならではの直感力なんでしょうね。

ゆっくり飲み物のんでお菓子食べようと思ってたのにそんなプロレスとぜんぜん違うんだもん<プロレスへの接し方は個人差ありますね。かくいう私も20~30代は新日とU系を観戦する時、アルコールはご法度でした。そういう緩い気持ちで観てはいけないプロレスと思っていたのでしょう。

無意識でリングにかけよってリングをバンバン!!と叩く”FMWのアレ”をしそうに<危なかったですね(笑)。場外フェンスのないU系ではたまぁ~にそういう場面もありましたね。私は新生UWF旗揚げ2戦目の札幌でそれを体感しました。

リング手前で気づいて、立ち止まって「田村!やったー!つよいぞ!」<あの瞬間は叫ばずにいられない状況だったことは確かですね。
紫レガとは?

紫レガ

Author:紫レガ
47歳のプロレス話


「昔はインターネットを旅してましたからね。毎晩ブログでね、今みたいにSNSがいっぱいある訳でもないし、終わったらみんなブログでね、一日の終わりにUPして。今こんなこと言ったらエラいことになりますけどね、よく寝不足になったね、部屋でPCを打ったりね。…いや、そういう歴史はちゃんと教えとかないとね」

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