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暴風雨の中の風車 Vol.6~0コンマX秒の逆ラリアート~(1980)

Vol.5からの続きです。

ここ一番の勝負強さでアントニオ猪木は、

虎の子のタイトルをスタン・ハンセンから奪回しましたが、
苦しみながらNWF奪還!!

その後もビッグマッチにおいては、

ハンセン相手にタイトロープ的試合を繰り返す事となり、

1980年5.9 福岡スポーツセンターでのNWFヘビー級選手権試合では、

再び場外でのウェスタン・ラリアートによって、

KO寸前となりながら、
場外でのウェスタン・ラリアート@1980年5.9福岡

九死に一生を得る形で

辛くも反則勝ちで初防衛に成功。
反則防衛@1980年5.9福岡

つづく6.5 蔵前国技館での『第3回MSGシリーズ』優勝戦も、

同じく反則勝ちによる消化不良のV3。
第3回MSGシリーズ優勝戦2

さらに9.11 大阪府立体育会館でのNWFヘビー級選手権試合も大苦戦の末、

リングアウト勝ちでの薄氷防衛。
辛くもリングアウト勝ち@1980年9.11大阪

ファンの間からも「もはや猪木は真っ向勝負でハンセンに敵わないのか?」と、

揶揄する様な声さえ囁かれ始めました。
薄氷の防衛@1980年9.11大阪

しかし猪木本人は、

敢えてハンセン独特のリズム感に身を任せる事で、

既に完成していた自らの殻を破る勢いだったのです。

アントニオ猪木自伝表紙
 アントニオ猪木自伝 より

猪木
本来、私とハンセンでは好むリズムがまるで違い、噛み合わないはずなのだ。それが面白いことに、噛み合わないことで予定調和のリズムが変拍子になってしまい、かつてない面白さが出てきたのだから、わからないものだ。ハンセンは一気にスターダムにのし上がった。
(略)人間離れした肉体と肉体がぶつかり合う面白さに言葉はいらない。ハンセンはその魅力を見事に表現出来た。


まさに、それまで互いが持っていなかった技術や、

それまでのセオリーにない駆け引きを織り交ぜながら、

両者の闘いは急激に進化していました。

そのハイライトとも言える試合が、

1980年9.25 広島県立体育館

NWFヘビー級選手権試合

アントニオ猪木vsスタン・ハンセン
だったと思います。
アントニオ猪木vsスタン・ハンセン

猪木とのシングルマッチが、

通算19度目となるハンセンは実に落ち着いた表情。
アメリカ国歌を聴くハンセン

常に苦戦を強いられる猪木の胸には、

果たして何が去来しているのか?
君が代を聴く猪木

試合前のセレモニー、両国国歌の吹奏は、

古き良きプロレスの様式美ですね。

さあ試合開始です。

立ち上がりは、

いつもに増して慎重な手繰り合いの両雄。
慎重な手繰り合いから、

早い段階で仕掛けたのは猪木の方でした。

突如ロープに走るとハンセンもすぐに呼応、
突如闘いのスクランブル交差点

“闘いのスクランブル交差点”から、

ほぼ中央で足を止めて向き合う二人に、

いつもとは違う緊張感が走りました。
足を止めて向き合う二人

猪木はサイドヘッドロックからネックロックへの移行、
猪木のネックロックに、

ハンセンの様な長身にはこっちの方が有効か?

一方のハンセンもヘッドロックからグラウンドへ移行、
ハンセンはグラウンドのヘッドロック

かつては緻密なグラウンドテクニックなど、

必要のない世界にいたハンセンですが、

猪木との一連の闘いの中で急激に上達しています。

起き上がった猪木がいつもの様に、

ハンセンの左足を刈ってテイクダウンすると、

すぐに体勢を立て直してロープ際まで押し込みます。
ロープ際まで押し込むと、

ブレイク後、手四つからリストを極めに行くハンセン。
リストを取るハンセンに、

さらにアームロックで絞り上げてきたところ、

猪木は「何だコノヤロウ!」
「何だコノヤロウ!」

ハンセンは構わず髪の毛を鷲掴みにして倒すと、

そのままグラウンドのアームロックへ移行。
ハンセンはグラウンドでも腕固め

もう一回スタンドでのアームロックに入ると、
スタンドに移行しても腕固めに、

猪木は右足でセカンドロープに乗り、

左足でトップロープを蹴り上げての、
猪木はロープを利用して、

投げによって脱出に成功し、
投げを打ち、

逆に腕を取り返していきました。
逆に極め返す

館内から大イノキコール発生です。

閃きでこういうトリッキーな技が繰り出されるのも、

猪木プロレスの魅力の一つなんですよね。

猪木は格闘技術だけではないのです。

ハンセンはやや強引にロープに振ると、
ロープに振るハンセンに、

勢い良く戻った猪木はショルダータックル。
猪木は勢いよくショルダータックル、

さらにロープワークの中から、

ハンセンがジャンピング・ニーアタックを炸裂させます。
ロープワークからハンセンのジャンピング・ニーアタック

さらにエルボードロップから、
エルボードロップを落として、

カバーに入りますがカウントは2。
カバーの体勢はカウント2

今度は容赦なく喉元にニースタンプから、
ニースタンプを落とし、

力任せのスリーパーホールド。
スリーパーホールドで締め上げ、

立ち上がると丸太の様な腕で、

強烈なハンマーパンチを叩き付けます。
ハンマーパンチを落として、

すかさず猪木はナックルパート2発、
猪木もナックルで応戦

さらに逆水平チョップ2発でロープに追い込み、

反撃の糸口を掴み掛けますが、

ハンセンがトウキックで阻止します。

高く飛び上がると喉元にニードロップ!
体重の乗ったニースタンプから、

ここで解説者・山本小鉄さんの一言です。

小鉄さん
「今ロープを掴んでたでしょ!? 全体重乗っていますよ!! これ食っちゃいけませんよ!」


さらにコーナー対角線上に猪木を振って、
コーナー対角線に振っての突進は、

猛然と突進していったところに、

猪木はトップロープを持ちカウンターのキックで迎撃。
猪木がカウンターのキックで迎撃

続けざまにドロップキックで、

ハンセンを場外に蹴落としますが、
ドロップキック炸裂で、

インタバルを置く事なくハンセンはすぐにリングイン。
すぐにリングに戻ったハンセン

猪木は一旦間合いを外しておいてから、

左手で張り手一発!
猪木の張り手から、

それをフェイントにしておいて、

珍しい正面からの片足タックル!
片足タックルに対し、

即座に反応して、

クルスフィックスホールドに固めるハンセンもさすが!
ハンセンはクルスフィックスで返す

小鉄さん
「巧いです。こういう小技でもね…小技ったらおかしいですけど、こういう技も使いますからね。並の選手じゃないですよね」


何度かのフォールを凌いだ猪木は、

スクッと肩車に持ち上げておいて、
スクッと肩車に捕らえ、

ファイアーマンズキャリーでハンセンを叩き付けます。
猪木の飛行機投げ

この流れ、

映像観る機会のある方は是非チェックして欲しいんですけど、

猪木が持ち上げていく直前のハンセンの両足、

何となく腹固めを仕掛けに行ってる様にも見えるんですよ!!

ベルトを奪った試合の巴投げといい(参照:Vol.3)、

改めて見返すと、

ハンセンは柔道のテクニックも持っていた気がするんですよね。

例によってすぐに防戦を脱したハンセン、

猪木を蹴り倒しておいてセカンドロープに飛び乗ると、

これまた全体重を乗せたダイビングニードロップ!!
セカンドロープから膝を落とすハンセン

体固めに行くが、

猪木はカウント2で返します。

するとハンセン、今度はロープに振って、

カウンターのドロップキック。
体重の乗ったドロップキックから、

エルボードロップからの体固めもカウント2!

今度はロープに振ってのバックエルボーを、

敢えてマットに膝を付けながらボディに入れていきます。
カウンターのバックエルボーはボディ狙い

これに悶絶する猪木を引きずり起こすと、

文字通り“暴風雨”と化したハンセンは再びロープに振って、
ロープに振って、

ここでウェスタン・ラリアート!!
逆ラリアート2

…を猪木がジャンプ一番、

飛び込んでの逆ラリアート!!
逆ラリアート3

タイミングを外してジャストミートさせなかったとはいえ、

当然猪木にもダメージはありますが、

不意打ちの効果も加わってハンセンには、

肉体的にも精神的にも大ダメージです。
肉体的にも精神的にもダメージか?

動揺を隠せないままロープに振って、
もう一度ロープに振っての、

もう一回ウェスタン・ラリアートに行くも、

今度は猪木が冷静にダッキングで潜り抜けると、
ウェスタン・ラリアートは猪木がダッキングから、

そのままバックにまわって両腕を絡め、
両腕を捕えて、

逆さ押さえ込みでカウント3奪取!!
逆さ押さえ込みでカウント3!

猪木にしてみれば久々に、

ハンセンから完璧なクリーンフォールを奪っての勝利です!!

敗れたハンセンは暴風域が離れていく様に、

すみやかに退場していきました。
ハンセンは暴風の様に退場

猪木は「ダーーッ!!」と叫びますが、

ダメージもかなり大きい模様です。
苦みながらピンフォール勝利の猪木

振り返るとこの一戦もまた、

プロレス界のセオリーを打ち破った一戦だったと思います。

当時のリング上では現在とは違って、

対戦相手の必殺技など絶対に使う事がなかったからです。

そこを猪木はハンセンの代名詞であったラリアートを、

この大一番で“掟破り”してしまったのですから…。

コミッショナー代理から勝利者賞を受け取った猪木は、

改めて快心の「ダーーーー!!」
「ダーーッ!」

舌好調でインタビューにも応えていきます。

猪木
(逆ラリアートは)あれは偶然出たんですけどね。まぁ向こうも、ちょっとこたえたんですね。(略)先程、新間の報告もありましたけどね、NWAも大分変わりましたしね。とにかく本当の意味でのね、“世界統一”に乗り出していきたいと思いますっ。…どうもっ!!」
「どうもっ!!」

高らかに“世界統一”を宣言し、

IWGP構想へ向けての布石を打ってきました。



後年のインタビューで猪木は、

逆ラリアートもその場の閃きだった事を明かしています。

アントニオ猪木の証明表紙
 アントニオ猪木の証明―伝説への挑戦 より

猪木
「練習はしてないね。その手の技は俺自身苦手だったから…。俺は自分を天才だと思ってないけど、もしも天才と呼べる部分があるとすれば、とっさにああいう動きができることじゃないかな」


食った方のハンセンも当然、予期せぬ衝撃だった様です。

猪木50周年本上巻表紙
 アントニオ猪木50Years(上巻) より

ハンセン
「あれにはビックリした。全く想像してなかったからね」

「あのころは毎日のようにイノキと闘っていたけど、そこまでしないと勝てなくなってきたんだろう。相手の想像を超える闘いをするのがイノキという男だ」


いくつもの常識を打ち破りながら、

二人の闘いもいよいよ佳境に入っていきました。

Vol.7に続きます。

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tag : アントニオ猪木 スタン・ハンセン NWF

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No title

私は、この試合の少し後からプロレスを見始めたのですが古舘さんが「広島での0.1秒速い逆ラリアット」は、よく叫んでいて妙に印象に残っています。国際軍団との1vs3でもラッシャーから取ってましたけど猪木が使うとパクりではなく猪木流の技という感じがします。

>aliveさん

古舘さんが「広島での0.1秒速い逆ラリアット」は、よく叫んでいて妙に印象に残っています<確かによく使ってましたよね。古舘アナも実際のところハンセンとは仲が良くて大好きだったそうですから、この王座移動劇はいつまでも語り継ぎたい事件だったんでしょうね。

猪木が使うとパクりではなく猪木流の技という感じ<しかるべきシチュエーションで一回だけ使うから永遠に語られるんでしょうね。のちのブロディ戦のランニングニードロップもそうでした。
藤波も相手の技を使う名手でしたが、違う相手にも使用した事で逆にクオリティを下げていた気がしなくもないです。

逆ラリアート!!

逆ラリアートですね!!猪木vsハンセン屈指の名シーンですよね~(≧∇≦)

この頃はハンセンがどんどん強くなっていって、もう猪木は勝てなくなっちゃうんじゃ・・・なんて思いながら見てた頃で、そこに来ての逆ラリアートでしたね。相手の得意技を相手にやるなんて!!驚いたものでした。懐かしいです(*´∀`)

そういえば、確か当時のテレビ中継ではこの試合後、この逆ラリアートのシーンがスロー再生で出たような記憶があるんですが・・・ご記憶ありますか?確か出たと思ったんですが・・・ちがったかなぁ?

それにしても、こうしてレガさんのブログでしみじみハンセンの動きを振り返ると、腕を取ったりタックルをクルスフィックスに返したりと・・・ハンセンの成長がよくわかりますよね。なので腹固めも知ってたかもしれませんよね。

そういえばハンセンが初来日した当時の全日本には、まだヘーシングがいたんですよね。ハンセン、ヘーシングと試合もしてますし、もしかして練習でヘーシングから手解き受けて・・・なんて大胆推理はどうですかね?ないか・・・(^O^;)

>流星さん

猪木vsハンセン屈指の名シーン<この二人の闘いの名シーンとしては、これが一番有名かも知れません。

ハンセンがどんどん強くなっていって、もう猪木は勝てなくなっちゃうんじゃ・・・なんて思いながら見てた頃<本当に止まらないんですよね。間を置かないで攻撃一本だから、馬場さんなんかは当初ハンセンを評価していませんでしたもんね。

当時のテレビ中継ではこの試合後、この逆ラリアートのシーンがスロー再生で出たような記憶が<流星さんの記憶はいつも鮮明ですねぇ!! スローはけっこうこの時期やっていたので、この試合もあったと思いますね。
5.9福岡の場外ラリアートはしっかりとスロー再生流していましたね。

ハンセンの動きを振り返ると、腕を取ったりタックルをクルスフィックスに返したり…腹固めも知ってたかも<これちょっと強引な推測かなぁ、とも思ったのですが、ファンク道場時代もシュートの練習してるはずですし、猪木と試合するにつれ盗んだのか? あるいはブロディ同様に誰かの教えを乞うたのか? …非常に気になってたりします。

ハンセンが初来日した当時の全日本には、まだヘーシングがいた…もしかして練習でヘーシングから手解き受けて<それも否定は出来ませんね。ただ1980年代がそうだった様に、全日本って会場でほとんどスパーリング的な練習していませんでしたよね。

実はオランダに住む異母兄弟の柔道家と交流があって…その柔道家は8年後に東京ドームで猪木の弟子と闘って…的な妄想はダメですかね!?

ドロップキック

はじめまして。
いつも、拝見させて頂いてます。
今回は、猪木&ハンセン2人のドロップキックの高さにビックリしました。静止画像だと良く分かりますね。昔、VHSで一時停止したり、コマ送りしてたコト思い出しました。

>直太さん

初めまして。
コメントありがとうございます。

猪木&ハンセン2人のドロップキックの高さにビックリ<高さもさることながら、両者の打点がお見事ですよね。特にハンセンのは体重が乗ってて強烈です。

昔、VHSで一時停止したり、コマ送りしてたコト思い出しました<そうですね。
お前は平田だろ事件の時にも何度もスロー再生しましたし、毎度お騒がせします第一話のオープニングシーンも何度も…ってこれは違うか(笑)。

とにかく今後とも宜しくお願い致しますっ。

プロレスに目覚めた試合でした

やはりこの試合はリアルタイムで観てて忘れられない試合でした。
自分をプロレスに引き込んでくれたのが猪木でありハンセンでしたから。予備知識ゼロの状態でしたけど、でっかい白人にメタメタにやられてるけど、最後はどうにかこうにかして勝つ猪木って凄いなぁ、と。

こうしてレガさんの詳細な分析で観てみると、ハンセンは小技も使うし改めて凄い試合だったんだな、と思います。

ハンセンのファイトスタイルは正しく型破りで、当時は主流では無かったでしょうね。正統派でもなく、悪党といえば悪党なんでしょうけど、凶器や流血が伴わない新しいタイプのパワー型の悪党だったと。その中で、新たなスタイルの試合を構築していった猪木の器量は凄いですね。

毎度お騒がせしますのコマ送り・・・ちょっぴりエッチなレガさん節になりましたね(笑)。あの頃の中山美穂は・・・いえ止めときます(笑)。

>亀熊さん

リアルタイムで観てて忘れられない試合<この日の試合それぞれの場面が記憶に刻まれていますよね。田コロほどじゃないにせよ、80年代のエポックメーキング的大会です。

自分をプロレスに引き込んでくれたのが猪木でありハンセン…でっかい白人にメタメタにやられてるけど、最後はどうにかこうにかして勝つ猪木<実はわかりやすい構図こそがプロレスにとって重要な部分なんですよね。
いつからかヒールがかっこよくなって、ほとんどがハカイダー的になってしまいましたが、本来ならどんなに罵声を浴びせても言い足らないぐらいが丁度いい訳で。

ハンセンは小技も使うし改めて凄い試合だったんだな、と思います<私自身も改めて猪木戦を一つずつ見返して再発見した部分が大きいんですよ。知らず知らずのうちに全日でのハンセンの闘い方が上書きされています。ほとんどのファンがそうなのだとは思いますが。

ハンセンのファイトスタイルは正しく型破りで、当時は主流では無かった…その中で、新たなスタイルの試合を構築していった猪木の器量は凄い<亀熊さん、まさに最終章で私が書きたい事を端的にわかりやすく書いて下さいましたね。やっぱり目線が近いと嬉しいです。
そのかわりオチの持っていき方に悩んでます(笑)。

あの頃の中山美穂は・・・いえ止めときます<いや、またそこも含めて語らいましょう。
タイミングを計らって再び能年玲奈に会いにいきましょう(^_^)
紫レガとは?

紫レガ 

Author:紫レガ 
46歳のプロレス話


「紫レガのブログは少し滑る感じになってるんです。ですから今、スライディングしながらね。下ネタも使ってですね、巧く腕極めましたね」

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