極上の不快感、語れるNJPW

先週発売された週プロに、

2.5 北海きたえーるでのIWGPヘビー級選手権試合

オカダ・カズチカvs鈴木みのる
(参照:“復活!雪の札幌”行って来ました)を振り返ったコメントがあり、

私も興味深く読み入りました。
オカダ・カズチカvs鈴木みのる

一人は既に引退している天龍源一郎

オカダ・カズチカとは自身の引退試合で対戦した因縁があります(参照:つながった過去と未来~前編~同~中編~同~後編~)。
天龍vsオカダ98

リングを離れた天龍が、

あの一戦に何を思ったのでしょうか?

週プロNo.1892表紙
 週刊プロレス No.1892 より

天龍
「結論から言えばね、これは名人同士のプロレスだよ」

「鈴木がヒザを攻め、オカダがしのいで、それを鈴木がまた形を変えてヒザを攻めて、40分もお客を飽きさせない試合をしたわけだからね。辿っていけばカブキさんとか芳の里さん、もっといえば力道山関にまでいきつく闘いだよ。プロレスの極論といってもいい」


早速、天龍らしい言い回しですが、

もう少し読みすすめていきましょう。

天龍
「これはね“プロレスの好きなオカダ・カズチカ”と“プロレスを知ってる鈴木みのる”ならではの闘いだと思うよ」

「一方がプロレスの好きなオカダだから、鈴木のスタンスをわかっていて、すべてを受け入れてやろうとなる。対してプロレスを知ってる鈴木は常に仕掛けていく。『どうだ、オカダ。こうしたらどう返してくる?』って問いかけて、オカダは『これでどうですか?』と返す。その攻防のなかでプロレスの奥深いところにドンドン向かって行った。その結果40分超えの試合になったんだと思うよ」

「いま新日本プロレスが新しくなったって言われる時代に、新しくなったお客さんの前でこれを仕掛けていったみのると、これを受け切ったオカダは大したモンだよ」


これ自身の経験に裏打ちされた一言一言ですね、

非常に深いです。

いがみ合いながら、罵り合いながらも、

技を交信ツールとして二人は対話していたんですね。
鈴木の椅子攻撃

それも同じタイプなら互いに削り合う闘い模様になるところを、

“プロレスを好きな者”と“プロレスを知ってる者”の一戦だけに、

一方的に削るみのると、ひたすら耐える事に徹するオカダ。

ある角度からすれば『何も返す術を持たないチャンピオン』であり、

違う角度からすれば『挑戦者の持ち駒を全て受け止める王者』。

天龍の見解は後者だった様です。
鈴木のアキレス腱固め

さらに天龍はオカダのメンタル面に、

最大限の称賛を浴びせます。

天龍
「痛めたヒザでショルダーバスター(リバース・ネックブリーカー)やったでしょ。自分自身も顔をゆがめながらあえて攻めた。ああいう泥臭いところを見せるって前のオカダだったらやってないと思うよ。華麗なところだけじゃなく、耐える姿で観客にアピールするというね」

「そのうえで最後は得意技(レインメーカー)で仕留めたんだから、昔の猪木さんと同じだよ。いやぁ、クサイねぇ。一番オレがイヤで好きなプロレスだよ(ニヤリ)。キザで嫌なヤツに、好きなプロレスを40分間見せつけられたって言葉がピッタリな試合だったな」

「オカダの試合をしっかり見たの初めてなんだけど、トップの試合だったよ」


某ムックでもチラッと発言していましたが、

やはりオカダの立ち位置に猪木を重ねて見てる部分ありますね。

そして天龍が認めている“泥臭さ”も、

元はと言えば2015年11.15で、

天龍から吸収したものが大きいと思います。

さんざん世界中でトップレスラーを見てきて、

自身も長きにわたってトップであり続けた天龍が、

『トップ』と認める存在がオカダというレスラーなのでしょう。
オカダ・カズチカ



もう一人の論客は誰あろう、

オカダに挑戦し敗れた鈴木みのる自身です。
鈴木みのる

まずこの試合の二つの鍵である、

『40分という試合時間』と『徹底した足殺し』について。

これには1.4のオカダvsケニーが関係しているという、

大方のファンの裏読みもあるのですが…。

鈴木
「参考資料ではあるよ。でも、オカダに勝てなかったヤツのことを参考にしないし、比較もしない。勝てなかったヤツはどうでもいい。ただオカダが何をするのか、何を選択するかっていうのは見た。だから徹底してオカダを飛ばさないようにしてた」

「空は翼があるから飛べるんじゃない。足でジャンプするから空を飛べるんだ。そういうことだ。結果として飛ばさなかったけど、仕留め切れなかったオレが甘い」


ケニー・オメガの存在自体は『参考でも何でもない』と。

ただオカダが『この場面では何をするのか? どういう動きを選択するのか?』を、

知るためのツールの一つに過ぎないのだと。

そして鈴木が出した答えがあの作戦でした。

鈴木
「イライラさせて、ダラダラと…ジワジワじゃない。ダラダラ。展開を前に進めない。それが今回のオレの作戦だからね。オカダは速い展開を望んでたんだよ。でも、いつまで経っても速い展開にしない。ちょっとでもなりそうになったら止めた。オカダが動きたくないなってときにオレが動く。それにオカダが付き合うだろ。そしたら何が起こるか知ってる? スタミナが削られちゃうんだよ」

「自分のペースで走ってると長い距離であろうが速く走れるでしょ。でも、それをさせない。ずっとストレス感じてたと思うよ。そう言うの大好き。それが格闘技。それが闘いだよ。理由も理屈もいらない」

「足の関節技も決まってるものと決まってないものがいくつかあったんだよ。決まってなくてもイヤだから体力を使わせるだろ。だから徹底してほかの技をやらなかった」


相手に合わせない、主導権を絶対に渡さない。

これこそ久しく見る事が出来なかった、

鈴木本来のスタイルでしたよね。

中には「鈴木があれだけサブミッション繰り出して決まらないのは説得力に欠ける」という、

真っ当なご指摘もあったかと思いますが、

事実、極まっていないものもあったという事です。
鈴木の膝十字

足を殺されながらスタミナも削られ、

挙句、精神的にも大きなダメージを重ねてしまったオカダは、

“チャンピオンとして”逃げずに耐えるのをチョイスしました。
鉄柵を使った鈴木のクロスヒール

そして再び40分超えの話題に。

鈴木
「別に40分オーバーしたのがそんなすごい話なの。ただオレの試合は長くなることが多い。それはなんでか知ってる? オレのペースだから。5分、10分でカタをつけようとするけど、それをダラダラはぐらかす。これをオープンにしても誰も対策を練れないから大丈夫。でも、オカダが勝って鈴木が負けた。それだけ。負けたら居場所がないんだよ」


確かにパンクラスを離れた後の、

区切り区切りの大一番において、

鈴木はロングマッチを残してきました。

記憶に新しいところではノア離脱前の数試合でも、

異常なまでのロングマッチを立て続けに敢行しました。

だから札幌のオカダ戦も珍しいものではないんだ、と。

そしてこれは誰にも真似出来ないし、

対抗策さえ存在しないのだと。
鈴木のエルボーバット

そしてここから再び、

鈴木軍は自分たちだけのやり方で、

チャンスを掴みとってみせる、という締めですね。



さらに鈴木は連載を持つKAMINOGEにおいても、

オカダ戦の事を語っていますが、

ここでは週プロと全く違う角度で言葉を発しているんですよね。

鈴木は各メディアの顧客層によって、

発する言葉を変えていくという、

非常に頭のいいプロレスラーなのであります。

KAMINOGE63表紙
 KAMINOGE vol.63 より

― あれだけ関節技が主体となったビッグマッチというのは、新日本だけじゃなく、久しくプロレス界になかったですよね。

鈴木「みんな、できねえからじゃねえ? その技自体を。その技のカタチだけなら、それこそアンクルホールドとか、見よう見まねで使うヤツが多いけど」


堀江ガンツさんの話の振り方もいいですね。

とにかく鈴木は「俺の足関は巷でよく見るアンクルホールドたちとはモノが違うぜ」と言わんばかりです。

ちなみにこの後に続く「Uの足関の歴史」はUWF好きなら必読の内容です。

安生洋二の発言(参照:Yoji Anjo Is Alive 外伝5~安生が語るUWFサブミッション史【下半身編】~)と読み比べて頂くと、

尚さら味わい深いかな、と思います。



私なりの見解でオカダvsケニーと、vs鈴木の違いを挙げるなら、

前者は「言葉で装飾するのもおこがましい」というか、

ただただ「凄い!」という、理屈を一切必要としない名勝負であり、

後者は「一か月経ったって語れる」という昔ながらの新日本。

会場やライブ中継で頭の中にいくつかの『?』が残りながら、

後で映像を振り返ってみたり、

当事者たちの言葉を読み砕く事によって、

もう一回答え合わせ出来る名勝負。

これこそが久しく新日本になかった風景ですし、

私らがのめり込んでいったプロレス。

『プロレスというのは全てがハッピーエンドなのだ』と思いながら、

現在のリングを観ている方にもぜひ知って欲しい、

まさに“極上の不快感”なのであります。
藤原テロ事件1

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tag : 天龍源一郎 オカダ・カズチカ 鈴木みのる IWGP

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こんにちは!

今回のレガさんのブログを読ませていただいて、改めてプロレスってなんて奥深いのだろう!と感嘆してしまいました。
見る角度によって、全く違うプロレスが見えてくるのですね。
私は浅くしか観れてないなと反省しきりです。
でも、こちらにお邪魔させていただき、その奥深さに触れさせていただいてます。
天龍さんとの引退試合以来、オカダさんの試合内容が変わった。という方が多いのですが、レガさんはどう思われますか?
私は、その頃まだリアルタイムで観ていなかったもので。
ただ今年の東京ドームのケニーとの戦い以降、新たな一面が見えて来たなとは思っているのですが。
鈴木みのるとの対戦でも、あそこまで受けきる姿やリアクションも。

>katsumさん

こんばんわ。

見る角度によって、全く違うプロレスが見えてくる<それこそがプロレスの特性でしょうね。球技や他のスポーツは、入った得点や出たタイムこそが答えでしょうからね。
選手の応援以外で、隣の席の人と全く違う観方をするスポーツってあまり他には存在しないと思います。

天龍さんとの引退試合以来、オカダさんの試合内容が変わった。という方が多い<記事にもしましたが泥臭さというか、天龍戦の終盤で連発した低空の正面跳びドロップキックなんかがその最たる例でしょうね。
確実にあの試合で備わったものが、直後の1.4棚橋戦で火を噴いたというか…だから私にとっては、昨年の1.4が新日の歴史の区切りだったと思っています。

東京ドームのケニーとの戦い以降、新たな一面が見えて来た<あんな試合はこれまでもないですし、また今後も観られるかどうかわかりませんからね。
一部のファンは「ケニーはオカダ戦よりも凄い試合を過去にやっている」と言いますが、意味合いが全く違いますから。
サイズも違うし、立場も違うし、何より1000人の前でやるより10000人、10000人よりも30000人の前でやる事の方がメインエベンターとしては断然、重い訳です。
紫レガとは?

紫レガ 

Author:紫レガ 
44歳のプロレス話


待て待て待て待て!! 読め!! 俺の記事をこの野郎!! 待て貴様ぁ!!

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