コブラツイストの奥義

久々に技トーーク行きましょう。

2月にUpした卍固め(参照:アントニオ・スペシャルの神秘)が、

ご好評頂き、心から御礼申し上げます。

今回はアントニオ猪木もうひとつの代名詞、

コブラツイスト(アバラ折り)を考察してみたいと思います。
コブラツイストで締め上げて、



この技の起源は卍固めと異なり、

猪木のオリジナルではありません。

アメリカ・マットに古くから存在し、

アブドミナル・クラッチやグレープバイン・ホールドの呼称で使用されていました。

日本初披露は1959年に来日したエンリキ・トーレスと言われております。

猪木がこの技を覚えたのはその3年後でした。

新日本プロレス技BOOK表紙
 新日本プロレス 技 BOOK より

猪木
「当時、ディック・ハットンが日本に来た時、コブラツイストを最初に覚えて、それが多少、変化していくんですけどね。うん、盗んだというかね。あと日本では当時は吉原(功)さんが使ってたのかな。
(略)アマレス出身の吉原さんにはグランドテクニックをよく教わったんだけど、彼の場合はグランドから足をフックさせてそのまま(コブラツイストに)入っていく。それが凄い効果的なんですね」


若手時代からスパーリングで使用し始めたものの、

実戦のリングにおいてお披露目したのは、

東京プロレス旗揚げからという説が有力でして、

実に4年間という熟成期間を経ての公開だった訳です。

さらに必殺技として開花したのは、

日本プロレス復帰後ですね。

当時の連続画像を追ってみましょう。

ロープワークの中から入る局面が多かったみたいです。
猪木のコブラツイスト@ドリー戦1

走ってきた相手の左足に自身の左足で絡め、
猪木のコブラツイスト@ドリー戦2

慣性の法則で前傾姿勢になった上半身を、
猪木のコブラツイスト@ドリー戦3

追う様にして全身を絡み付けていきながら、

相手の首根っこに左手を掛けて仮固定。
猪木のコブラツイスト@ドリー戦4

軸となる右足のスタンスを決めておいて、

上半身にひねりを加えていきます。
猪木のコブラツイスト@ドリー戦5

さらに右手を持っていってロックすれば、

完璧な形で絞り上げる事が可能です。
猪木のコブラツイスト@ドリー戦6

猪木はここがコブラツイストで最重要ポイントと指摘します。

猪木
「日本語ではアバラ折りと言われてますけど、本当は首なんですよね。足を入れてフックして、こう手を回して…そこではまだ五分なんです。そこから首の根っこのところをギューってひねり上げると一番効果的になるわけです」


肩を極めつつ左手一本をフックしただけですと、

実は完成形と言えないんですね。
猪木のコブラツイスト@ホーガン戦

ハンセン、ホーガン、ブロディの様な相手に仕掛けた場合、

体格差が大きく関係して、

完璧なコブラツイストは難しかったのですが、
コブラツイストへの移行

猪木特有の長い手足が、

時にはそれも可能にしていました。
猪木コブラツイストから、

また、大型のガイジンたちとは相反して、

小型選手に対してはよりコンパクトに、

圧縮するかの如く絞り込んでいってましたね。
猪木のコブラツイスト@タイガーキング戦

実に“アントニオ・スペシャル”卍固めと同様、

猪木は対戦相手の体型、レスリングスタイルによって、

極める角度を使い分けていた様に思います。

まさしく第一人者としての面目躍如でしたね。



前記したロープワーク以外にも、

坂口征二との同門対決や、

1976年2.6 日本武道館 格闘技世界一決定戦

vsウィリエム・ルスカ
の様に投げに来た相手を、
巻き込み払い腰に行くルスカに、

カウンターで極めていくパターンもあれば、
コブラツイスト炸裂

1975年12.11 蔵前国技館 NWF世界戦

vsビル・ロビンソン
(参照:至高のプロレスリング~episode・Ⅵ~)に代表される密着戦の中で、

流れに任せて極めていくパターンもありました。
ここでコブラツイスト、

技の形だけではなく、あらゆる試合展開で、

効果的に繰り出す事が可能だったのが、

猪木のコブラツイストならではの特徴だったと思います。



ちなみに猪木が卍固めを使い始めるきっかけとなった、

ジャイアント馬場さんのコブラツイスト。
馬場のコブラと猪木の卍

馬場さんには両手のフックなどという概念は、

初めからありません。
ジャイアント・コブラ1

ただし、あの大きな長い脚を相手の大腿部に乗せて、

背伸びする様に豪快に伸び上がるあのコブラツイストも、

実に理に適った必殺技だった事には違いありません。
ジャイアント・コブラ2

しかし日本における第一人者の猪木とすれば、

緻密なテクニックの集大成こそがコブラツイストなのです。

猪木
「やっぱり強烈な決め技というか、一番、自分の体質に合っているという部分では、コブラツイストにしても足首が相手の左足にかかって、どこまで食い込んでるのかっていうのがポイントなんですよ。ただ格好だけ真似してやってる選手もいますけどね」

「ジャイアント馬場がコブラツイストを使った時に、要するに“体が大きいから、パワーがある”っていうような記事を書かれてね。それに当時、反発して…。まぁ、馬場さんがコブラツイストをやっても、体が密着しないし、隙間ができちゃうからね」


我々が幼少期にやっていたプロレスごっこでも、

コブラツイストの使用率はかなり高かったと思います。

それらのほとんどは猪木が言う「格好だけ真似して」の物でした。

現在のトップレスラーたちもそのプロレスごっこの中で、

コブラツイストを覚えていった世代であります。

何となく…実際のリングでも「格好だけ」のコブラツイストが目につきますね。

ここはさらに山本小鉄さんの解説で補足してみましょう。

小鉄
「まず相手の足をフックして、同時に体をねじって手で極める。これで何カ所も極まります。強い脚力でフックして突っ張って、体をねじれば相手はギブアップします。
(略)(今は)見様見真似で、研究しないで技をやってる。コブラツイストで足のフックもしてない。絡みつくというよりも、ただ足を乗せてるという感じ。それでコブラツイストなんて言ってるけど、それじゃやっぱり、プロレスは誤解を招くよね」


このコメントを発した2002年当時も、

コブラツイストを繰り出す選手はまだ多数存在しましたが、

既に小鉄さんが認める使い手は西村修くらいになっていました。



さらにコブラツイストを研究してわかってくるのは、

本当に怖いのは卍固めと同様、

その“次の展開”から、という事なのです。

猪木
「立って入る場合は、プロ的に見せる要素というのもあるんだけど、最終的にはグランドに持ってった方が効くんですよ。俺なんかはわりと体が柔らかいんで、相手の首に巻きつくというのかな」


猪木が現役最後の試合、

1998年4.4 東京ドーム引退試合

vsドン・フライ
(参照:神と信者たちへの劣等感)でフィニッシュホールドに選んだのは、

前記したコンパクトに絞るコブラツイストの体勢から、
コブラツイストから、

そのまま寝技に持ち込むグランドコブラでした。
グランドコブラで締め上げて圧勝!!

こうなってしまうと文字通り脱出不可能な訳です。

さらにグランドコブラはギブアップを取る為だけではなく、

3カウントのピンフォールを奪う丸め込み技の要素も併せ持っていました。

有名なのは1984年8.2 蔵前国技館

vs長州力
(参照:蔵前最後の名勝負~後編~)で見せた、

日本プロレス史に残るフィニッシュシーンですね。

長州がトドメとばかり、
リキラリアート返し3

カウンターで放ったリキ・ラリアートを、

間一髪ダッキングした猪木が、
リキラリアート返し4

そのまま密着して絡みつき、
リキラリアート返し5

コブラツイストの体勢に入ったと思ったら、
リキラリアート返し6

そのまま瞬時に後方へ倒れ込んで、

完全に長州の身体をコントロールして見せた、
リキラリアート返し7

この“電光石火”のグランドコブラ(参照:♪飾りじゃないのよロープは、はっは~)は、

まさしく“奥義”と呼べるものでした。

ちなみに卍固めでもフォール勝ちしたレアケースも、

記録として残っております。

1975年5.16 日大講堂での、

第2回ワールドリーグ優勝戦進出者決定戦 vsストロング小林で見せたグランド卍がそれですが、
猪木のグランド卍@ストコバ戦1

実際にはこの体勢で両肩がマットに付く訳がなく、

…まぁ、このレフェリーお得意のレフェリングミスでしょうな。
猪木のグランド卍@ストコバ戦2



よく、猪木を形容する言葉の中で、

「箒相手でもプロレス出来る」というのがありますが、

コブラツイスト関連でそれを表わす名場面があり、

先日、動画投稿サイトで発見して思い出に浸りました。

80年代のプロレスブームの際、

夕方のNHKの子供向け情報番組『600こちら情報部』で、

猪木は司会者のリクエストに応えてコブラツイストを掛けたんです。
猪木in600こちら情報部1

もちろんニコニコしながら形に入っただけで、

すぐにブレイクしたのですが、

離れた瞬間、司会者はとっさにアバラを押さえてるんです。
猪木in600こちら情報部2

以前、ジャンボ鶴田の記事(参照:鶴田試練の二番勝負)で、

レスラーではない女性芸能人相手に、

コブラツイストを掛ける場面をUpしました。
コブラが効かない!!

女性特有の柔軟性も関係して、

効果が薄かった事により偶発的に、

のちの得意技となる拷問コブラが開発されたのを、

覚えてらっしゃる方いますかね?
拷問コブラ誕生!!

さらに80年代の高視聴率番組『ザ・ベストテン』で、

サザンオールスターズの祝福に登場した際、
猪木inザ・ベストテン1

猪木信者である桑田佳祐のリクエストに応えて、

猪木はここでもコブラツイストを披露。
猪木inザ・ベストテン2

満面の笑顔でブレイクした直後、

ご多分に漏れず桑田氏の左手もアバラに。
猪木inザ・ベストテン3

勘ぐる方は勘ぐってもらって構いませんが、

この(レスラーではないという意味での)一般人両名とも、

猪木が離した瞬間、咄嗟にアバラを押さえる動作が、

私には実に自然に見えるんですよ。



昨年引退した名レスラーである天龍源一郎が、

とあるバラエティ番組の中で「実はコブラツイストは効かない」と言ってたそうですが、

 日刊H.T Season 2 より
天龍源一郎「コブラツイスト痛くない」

実際に番組みてみると天龍は「大胸筋の発達した外国人選手には極まるけど、身体の柔らかい日本人には極まりにくい」みたいな補足ありの言い回しでした。(略)天龍は経験豊富なプロレスラーですが、コブラツイストはもっと歴史のある技ですよね。巧い使い手もいれば下手な使い手もいるわけです。それを天龍が勝手に代表みたいな感じで公の電波で効かない技だ、なんて言ってはダメですよね。


私もH.Tさんのご意見を全面支持です。

これはジャンボと猪木の例を比較するまでもなく、

レスラー個々の技量に大きく関係してくる事だと思います。

コブラツイストは永遠に不滅です。

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tag : アントニオ猪木

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No title

Dropkickのインタビューで、鈴木秀樹が「グラウンドが本来の技、それを見栄えよくしたのが立ってる版」と言ってました。

>スタジオ7さん

鈴木秀樹が「グラウンドが本来の技、それを見栄えよくしたのが立ってる版」と言ってました<猪木もそこは同じ様に言ってますね。
ただ全日に関しては、馬場さんがスリーパーについても「立ってこそ効果がある」と言っていたんですよね。極め技に対する見解はかなり違うんだろうなぁと思います。

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No title

UFCでもちゃんとタップさせていますね。
https://youtu.be/HALf3esHQJ0
五分四十秒辺りから。

No title

昨日は、ありがとうございました。今回ささのっちさんに国際のDVDを貸したのですが、その中にロビンソンがコブラを詳しく解説していて、やはり首を捻っていました。もし良かったら借りて見てみてください。

No title

お久しぶりです。
コメントはご無沙汰しております。

実は高校時代のレスリングの顧問が、この技を試合で決めたことがあるらしく
「元々コブラツイストはレスリングの技なんだよぉ」
と言ってました。
ただ、レスリングの場合は
『肩をつけてフォール』
が基本で関節を極めたり、痛め技に使うことは禁止技になっているのでおそらく元になった技という意味ではないかと思われます。


先日、安生洋二が鈴木健の店でファンにコブラツイストをかけている動画を見ましたが、そのお客さんは足のフックがかかった段階で軽く恐怖を感じるような状態でした。
おそらく天龍さんもこういったコブラツイストの上手なかけ方の選手との対戦がなかったのかも知れません(猪木戦ではかけられてないですよね?)

>○○○さん

ご無沙汰しております。光栄です、ありがとうございます。

やっぱり私の知らない馬場さんが存在してるんですね。
先日、サミットの際にaliveさんがお持ちした日プロ時代の猪木の映像を観たんですよ。ワールドリーグ戦初優勝のマルコフ戦なんかで猪木が勝利した直後にリングインしてきた馬場さん…異常にかっこよかったです。

コブラにひとつ取っても意地になって張り合ってたからBI砲は最強コンビだったんでしょうね。猪木がもし立場をわきまえて一歩退く様なレスラーだったら果たしてあんなに強かったか…。
猪木はコンビネーション重視するタイプでもないですしね。

>shirokumaさん

初めまして。
コメントありがとうございます。

UFCでもちゃんとタップさせていますね<公式でこういうのあったんですね~、知りませんでした。ありがとうございます。
足のフックがグレープバインというより猪木がヘンゾに極めた大晦日のと似ていますね。

>aliveさん

こちらこそ、貴重な映像をたくさんありがとうございました!!

国際のDVD…ロビンソンがコブラを詳しく解説していて、やはり首を捻っていました<ウィガンの系譜に沿った選手のコブラツイストは相手の首の向きを自分の方側に持ってきていますよね。
直接の師が誰であれ、そこの共通点は変わらないと思いました。

>ナリさん

コメントはご無沙汰<そうでしたか? つい数日前に馬場さん宅でご一緒した様な錯覚が(笑)。

高校時代のレスリングの顧問が、この技を試合で決めたことがあるらしく「元々コブラツイストはレスリングの技なんだよぉ」と<ゴン格だったか格通だったか忘れましたが、富山英明氏のレスリング教室でも普通にグランドコブラ名義で紹介されてた記憶があります。

安生洋二が鈴木健の店でファンにコブラツイストをかけている動画…そのお客さんは足のフックがかかった段階で軽く恐怖を感じるような状態<プロレスラーにバックに回られた瞬間…考えただけでおっかなくて吐き気がしてきました(笑)。

天龍さんもこういったコブラツイストの上手なかけ方の選手との対戦がなかったのかも<昔の全日ってコブラツイストが休憩みたいに見えましたしね。
でもうっすら記憶してるのは、天龍自身も高木とかに強烈なコブラ極めていませんでしたっけ? 輪島だったかな?

No title

猪木さんの体格やセンスに依るところが大きいでしょうが、他のレスラーが掛けたコブラよりも
見た目が圧倒的に格好良いんですよ。卍固めも同じように思います。
当時、コブラでギブアップする試合は無くなっていましたが、はぐれ国際とのハンディキャップ
第2戦で、寺西勇から1本取った場面は個人的には忘れられない名場面です。

>アンドレ・ザ・カンドレさん

他のレスラーが掛けたコブラよりも見た目が圧倒的に格好良い<見た目が良くなかったら、プロレスのフィニッシュホールドとして最悪ですもんね。コブラと卍の必殺技たるゆえんは、威力と同じくらいに見栄えにもあったと思っています。

はぐれ国際とのハンディキャップ第2戦で、寺西勇から1本取った場面<緒戦の逆十字もそうですし、5対5勝ち抜き戦の藤波のジャーマンもそうですし…寺西ってやられっぷりが群を抜いた選手でしたね。
初代タイガー最後のタイガースープレックスも忘れられません。
紫レガとは?

紫レガ 

Author:紫レガ 
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