“殺し”の代償(1978)

1978年末、アントニオ猪木は、

『欧州世界選手権シリーズ』(参照:欧州“殺し”紀行~eins~同~zwei~同~drei~同~vier~同~finale~)から帰国すると、
ボックが判定勝利

ローラン・ボック戦における歴史的敗戦の傷癒えぬまま、

すぐさま日本での戦列に復帰しました。
ボック勝利に猪木呆然、新間氏は激しく抗議

自ら不在の間に開幕した『プレ日本選手権』です。

猪木はシード権による決勝トーナメントからの出場、

その一回戦の相手は予選リーグ8位通過の、

同門、星野勘太郎でしたが、

欧州遠征での激戦の代償はかなり大きなものでした。
ガッチリと握手を交わして試合開始

1978年12.5 福岡市九電記念体育館

プレ日本選手権決勝トーナメント一回戦

アントニオ猪木vs星野勘太郎
、振り返りましょう。
アントニオ猪木vs星野勘太郎

殺人的日程だった欧州遠征でコンディション最悪の猪木、

序盤はグラウンド中心に攻めていきますが、
序盤、星野をコントロールしていく猪木

腕に覚えのある星野も簡単には取らせません、

持ち前のスピードでバックを奪います。
星野もバックを奪いに行くが、

猪木もすぐさま奪い返しますが、

星野のディフェンスも完璧です。
グラウンドは猪木のペース

上から極め切れなければ、

猪木は隙を狙って下からの腕ひしぎ逆十字狙い。
猪木は下からの腕十字

これ柔術が脚光浴びる20年近く前の試合ですからね。

何度か書いてきた様に、

猪木の寝技には柔道の技術も加味されていますよね。

でも、ここでも極め切れず、

今度はヘッドシザースに捕えます。
身長差を利したヘッドシザース

ただ肩の痛みが出たか、イマイチ締めが緩く、

逆に星野が逆片エビ固めに切り返し。
星野も逆片エビから、

さらに猪木のお株を奪うリバース・インディアンデスロック。
お株を奪うリバース・インディアンデスロック

猪木は足首の柔軟性を利して脱出すると、

起き上がりざま待っていたのが、

星野の強烈な張り手。
離れ際に張り手一発、

この一発で怒りに点火したか?

猪木の気迫に思わず後ずさる星野。
これには猪木も怒りの表情から、

猪木はミルデンバーガー戦で猛威をふるった、

アリキックの連打でダウンを奪うと、
アリキックの連打で星野からダウンを奪う

さらに延髄斬りも炸裂!!
猪木の延髄斬りプロトタイプ

これには星野も吹っ切れたか、

テンプルやチン目がけてパンチの乱れ打ち!!
勘太郎パンチ乱れ打ち

太い腕をガッチリ巻きつけてのネックロックも強烈です。
ネックロックも強烈

勝負どころと見るや一気に、

お得意のフライング・ヘッドバットをぶち込むと、
得意のフライング・ヘッドバット炸裂

さらに走り込んでの2発目!! …これは猪木が回避して自爆!!
2発目は喰わない猪木

「長引かせるとマズイ」と踏んだのか、

猪木は決して軽くはない星野の肉体を、

一気にブレーンバスターで叩き付けると、
軽々とブレーンバスターから、

カバーに行くも、敢えてカウント2で解き、

最後は高角度のバックドロップ!!
最後は高角度のバックドロップ

今度こそカウント3が入ります。
終わってみれば難なく初戦突破の猪木

やや体調不良気味ではあるものの、

この快勝で勢い付いた猪木。

続く2回戦ではストロング小林を、

さらに準決勝ではマサ斎藤を降し、

難なく優勝決定戦へと駒を進めました。



そしてこのシリーズ中、もう一つの目玉が、

猪木3度目のWWWF王座挑戦でした。

WWWF認定ヘビー級選手権試合…現在のWWE世界ヘビー級王座なのですが、

時の王者は“NYの若き帝王”ボブ・バックランドです。

1978年12.14 大阪府立体育会館

ボブ・バックランドvsアントニオ猪木
を迎えました。
ボブ・バックランドvsアントニオ猪木

さすがに連戦に次ぐ連戦で、

猪木の表情にも精彩がありませんね。
やや精彩を欠く猪木

開始ゴング早々、ロープワークからコブラツイストの応酬の中、

猪木が丸め込むとそのままヘボレフェリーのカウントは3!!
まさかの秒殺!?

秒殺劇による世界タイトル奪取に、

場内には歓喜の声が上がり騒然となりますが、

ダメレフェリーは「今の無し。ノーカンね」と言わんばかりに堂々と訂正…。
カウントは2との裁定

渋々と再開に応じた猪木は、

がっぷりと左四つに組み合うと、
左四つ、力の入る攻防

アマレスの猛者でもあるボブと互角に渡り合います。

ここら辺りは珍しい猪木の相撲技術ですね。

しかしこの展開はボブの土俵、

組み伏せるとしっかりとバックを奪います。
ボブはしっかりバックを取って、

ピッタリと離れずに固めていき、

猪木をローリングで転がしながら、
猪木をコントロールするしてローリングから、

フォールを狙います。
そのままフォール狙い、

ならば猪木は“プロのテクニック”ダブルリストロックで対処、
猪木はプロの返し方で対処

前記の星野戦における腕ひしぎ逆十字同様、

MMAの概念がない時代に、

下から極めに行く猪木の感性が凄いですね。

かと思えばスタンドでがぶってきたボブの左腕に、

しっかりと右腕を差しておいてから、

右足を踏み込んで、
がぶって来るボブに、

綺麗なブリッジでのフロントスープレックス。
珍しい猪木のフロントスープレックス

これは以前、流星仮面二世さんが解説してくれた、

まさに教科書通りの投げ方ですよね。

 団塊Jrのプロレスファン列伝 より
プロレス研究所~前田日明の12種類のスープレックスに挑戦だ完全版パート3~

手四つとなって力でグイグイ押してくるボブには、

ウィガン流にロックを切って(参照:C.A.C.C.唯我独尊~前編~)から、
手四つを例の切り方から、

意表を突く延髄斬り!!
一転して延髄斬り!

リングシューズの爪先が突き刺さる様に後頭部を貫くと、

たまらずボブは悶絶します。
シューズの爪先がモロに入ったか?

しかしながら世界王者も黙ってやられるだけではありません、

猪木をファイアーマンズキャリーで持ち上げると、

力任せに前方へ叩き付けました。
ボブはファイアーマンキャリーから前方への叩き付け、

この一発でボック戦のダメージが再発してしまった模様です。
これは猪木に大ダメージ

再びグラウンドの攻防…ここ面白い展開ですよ。

パーテレ(4点)ポジションのボブに対し、

猪木は右足首を取って潰しに行きますが、
パーテレポジションのボブを切り崩しに行く猪木、

ボブはビクともしません。

ならば猪木はポジションを変え、

ボブの右腕に自身の左腕を絡めて、

コブラツイスト、あるいはバナナスプレッド狙い?
脇から差してグランドコブラ狙いも通じず、

それでも全身に力を込めて耐えるボブ、

猪木は再び足首に切り替えて、

股裂きで潰す事に成功しました。
ならば猪木は股裂きで潰していく

ボブもレスリングなら負けていません、

バックを奪い返すと猪木の左足を完全に固定して、
今度はボブがお返しとばかり、

バナナスプレッドからのフォール狙い。
バナナスプレッドからフォール狙い

これは難なく凌いだ猪木、

ボブの足を弱点と見て足4の字固めへ。
猪木はボブの足狙いで4の字固めへ

これはかなりの効果がありました。

一旦場外で間を置いてから上がって来るボブに、

猪木はトップロープ越しのブレーンバスター!
場外エスケープ後の上がり際、ブレーンバスター

間髪入れず人間風車!
さらに人間風車

返す刀でボブは猪木を高々と持ち上げました!!
ボブは高々と猪木を抱え上げると、

ここで必殺アトミ…いや! バックブリーカー炸裂だっ!!
虚を突いたベンジュラム・バックブリーカー!!

ディフェンス体勢が整わないまま、

急降下で腰を打ちつけられた猪木。

即ちボック戦でキャンバスに強打しまくった、

腰の痛みが再発です。

さらに力の入らない猪木を持ち上げると、
さらに追い撃ちの、

今度こそ必殺のアトミック・ドロップ炸裂!!
必殺アトミック・ドロップ!!

すかさずカバーに入るボブですが、

猪木はカウント2で何とかキックアウト。
猪木は何とかカウント2でキックアウト

休む事なく2発目を狙ったボブ、

猪木は空中で切り返して、
もう一発狙うも猪木は脱出、

やや低空ながらもバックドロップ!
不完全ながらバックドロップ!

そのままもつれる様に両者場外転落、
両者場外転落

カウントが数え上げられる中…突如、

ヒロ・マツダ率いる狼軍団が総出で乱入!!
猪木@プレ日本選手権1

上田馬之助の椅子と鉄柱攻撃によって、

両者共ザックリと額を割ってしまいました。
血まみれの二人

それでも両者は闘う意志が固く、

試合は続行されます。

猪木がヘッドバットからインローをぶち込むと、
猪木の放ったインローが、

ボブは金的を押さえてダウン!
ボブの金的に!?

これどこかで観たシーンだなぁ…(参照:札幌中島史上最大の危機~前編~)。

再び場外戦へ、

ボブがヘッドロックを繰り出すと、

そのまま猪木は鉄柱に突進してボブの顔面を強打!!
場外戦になると、

そこから狂った様に鉄柱へ打ち付けまくり、
猪木は狂った様に鉄柱攻撃連発!

リングインすると、ここでカウント20!!

猪木のリングアウト勝ちが告げられました!!
リングアウト勝ち!!

…がご存知、WWWFルールにより『リングアウトによる王座の移動は無し』。
しかしWWWFルールによりベルト移動なし

しばし錯乱状態でしたが、

我に返った猪木はマイクを掴むと開口一番、

怒りの矛先は当然、狼軍団の首領です。

猪木
「マツダーっ!! 明日俺が殺してやるからなぁ!!」

猪木@プレ日本選手権2

猪木が言う「明日」…実際には2日後に行われる、

プレ日本選手権優勝決定戦に向けての挑発なのですが、

このバックランド戦のテレビ放送が試合翌日の12月15日でして、
1978年12月15日ラテ欄

蔵前でのマツダ戦はその翌16日の興行。

それを計算した上での「明日」だったのか?

単純に興奮が頂点に達して間違えたのか?

ここも猪木のパラドックスを追求する上で興味深いです。

この項、続くかも知れません。

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tag : アントニオ猪木 星野勘太郎 ボブ・バックランド プレ日本選手権 WWWFヘビー級

comment

Secret

よっしゃ~!

レガさん!いつもお世話になります!
いや~しかし、これまた見たことのない試合を見れて幸せです。(星野戦)しかも、猪木さんの素晴らしいブリッジのフロントスープレックス初めて見ました!携帯の待ち受けか、PCの壁紙にしようと思います。スープレックスフェチの自分としては、朝から嬉しい気分です!レガさん有難うございます!

猪木のフロントスープレックス!猪木って89年頃よくスロイダーは使ってたと記憶している

点と点がつながりました

シュツットガルトの悲劇とプレ日本選手権、そしてバックランドとのタイトル戦と・・・。個々の出来事は知っていましたが、時系列で、こんなにハードな戦いが続いていたとは知りませんでした。お陰様で点と点が繋がって線になり、猪木の凄さを改めて知らされた思いですよ。

海外武者修行時代のパートナーだったマツダに対して、錯乱していたとはいえ物騒なマイクアピールをしていたのも知らなかったし、そこに至る背景も初めて知りました。う~~ん勉強になります。40年近く前の出来事なのに、とても新鮮に感じられました。有難うございます!

>タキトさん

こちらこそ、いつもありがとうございます。

これまた見たことのない試合<これは私も映像を所有しておりません。dairymotionからのキャプチャ画像です。

猪木さんの素晴らしいブリッジのフロントスープレックス<確かにあまり印象にはないですよね。でも元来持ってる柔軟性もあって、文字通りの反り投げです。

スープレックスフェチの自分としては、朝から嬉しい気分<記事にも書いた通り、教科書そのもののスープレックスです。唯一の欠点(?)はクラッチを解くタイミングがやや早いかな? くらいでしょうかね。

>信者さん

初めまして。
コメントありがとうございます。

猪木って89年頃よくスロイダーは使ってたと記憶<第一試合に出ていた頃でしたかね?
何となく私も記憶にありますが、いずれにしても“猪木の技”という印象は薄いですよね。

>亀熊さん

時系列で、こんなにハードな戦いが続いていたとは知りませんでした<私も改めて検証してみると驚いた次第です。
あと2記事続きを書いてみようかと思っておりますが、これプレ日本優勝戦後も年末さらに海外遠征してるんですよ! このタフさってなんなんでしょうね?

海外武者修行時代のパートナーだったマツダに対して、錯乱していたとはいえ物騒なマイクアピールをしていた<狼軍団ってその名の通り一匹狼集団なんでしょうね。この乱入でも手を出してるのは上田とマサ、たまに杉山くらいで、リーダー格のマツダはクリーンなイメージしかないです。
最も当時をリアルタイムで観て憶えてる方は違う見解かも知れませんが。

…という事で、突如決まったアレですが、宜しくお願い致します!!

フロントスープレックス!

レガさん!返信ありがとうございます!
記事にも書いた通り、教科書そのもののスープレックスです。唯一の欠点(?)はクラッチを解くタイミングがやや早いかな? くらいでしょうかね。>最後投げ切る時の体制はこのままJ鶴田選手や馳選手のように真後ろに投げっ放しにするのでしょうか?はたまた途中で体を捻ってカバーや関節を取る体勢になるのでしょうか?とても興味があります!

こちらこそ返信ありがとうございます。 そうです!第1試合の頃に鈴木みのるやBオートンjrに決めてました。実況雑誌ではFスープレックス表記でしたが相手の片腕と胴をクラッチしてサイドに投げてました。
"猪木の技”という印象は薄いですよね<高田伸彦の"なんちゃってスロイダー"よりはサマになってました(笑)
あと下手とされる猪木のWアームスープレックス。ボブや鶴田の大きく投げっぱなすよりクラッチを解かず早く小さく投げる猪木流のが"スープレックスしてて"個人的に好きだったなぁ。

No title

こちらもリンクありがとうございますm(__)m

以前にも書きましたが、猪木がやると同じ技でもちがう技に見えますよね~。本当に説得力があります。

ちなみに、こちらだったか徳島だったか忘れてしまったんですが、猪木はバックランドに河津落としをやったことありましたよね。こういうところに魅力感じまくりです(^o^)

>タキトさん

こちらこそ、ありがとうございます。

最後投げ切る時の体制はこのままJ鶴田選手や馳選手のように真後ろに投げっ放しにするのでしょうか?はたまた途中で体を捻ってカバーや関節を取る体勢になるのでしょうか?<結論から言うと後者なんですが、人間風車の軌道よりも大きく弧を描いてるんですよ。
仕掛ける瞬間は大きく膝を沈めてるんですが、グンと大きく跳ね上げてからジャーマン気味に反って行って捻っています。

>信者さん

第1試合の頃に鈴木みのるやBオートンjrに決めてました<あんまり記憶にないんですよね~。体格の違い関係なく投げれたんですね?

高田伸彦の"なんちゃってスロイダー"よりはサマになって<確かに高田のスロイダーは新生以降ひどくなっちゃいましたね。
ジュニア時代はジャーマンとかドラゴンに代表される人間橋がキレイだったんですけど。

猪木のWアームスープレックス…クラッチを解かず早く小さく投げる猪木流のが"スープレックスしてて"個人的に好きだった<以前、技トーークで書いた通り猪木のは猪木一流の形だったですよね。
小林戦とかロビンソン戦でガッチリ肩極めて強引に持っていく形も好きですね。

>流星さん

猪木がやると同じ技でもちがう技に見えますよね<このフロントスープレックスは素晴らしいです。でも気になるのが、ボブの右手…かばい手ですね。謙吾vsドスカラスJrを思い出します。

猪木はバックランドに河津落としをやったことありました<大一番特有の猪木のスペシャル技…相手の土俵に乗る部分もありますよね。
ハンセンへの逆ラリアート、ブロディへのランニング式ニードロップも忘れられません。
あ、大木に対して頭を突き出すのもある意味それですかね?
紫レガとは?

紫レガ 

Author:紫レガ 
44歳のプロレス話


待て待て待て待て!! 読め!! 俺の記事をこの野郎!! 待て貴様ぁ!!

どーですかぁーーーー!!

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