神様にとっての猪木アリ~前編~(1996)

本日、6月26日は今年から記念日に制定されました。

その名は“世界格闘技の日”。

そして“ザ・グレーテスト”モハメド・アリが旅立ってから、

早くも一ヵ月になろうとしています(参照:追悼・ALI THE GREATEST)。

テレビ朝日が追悼番組として急遽製作した、

『蘇る伝説の死闘 猪木vsアリ』(参照:テレ朝のアリ緊急追悼番組を観た)は、

プロレスファンにも格闘技ファンにも貴重な内容となりました。
アリ追悼番組OP

特に番組内においてアントニオ猪木vsモハメド・アリそのものを、

フルラウンド・ノーカット放送した事と、

ただ試合をリプレイするだけにとどまらず、

両選手と両陣営の声を、

21世紀の最新音声機器を駆使する事で、

可能な限りに“文字起こし”した事は、

特筆すべき出来事だったと思います。
猪木アリ40周年2

その中で私が衝撃を受けたのは、

13ラウンドと15ラウンドに“プロレスの神様”カール・ゴッチさんが、

愛弟子であるアントニオ猪木に対して送ったアドバイス(?)の翻訳でした。
猪木アリ40周年5

ちょうど20年前…試合から数えて20年後の年、

やはり6月26日にゴング増刊として発売されたムックには、

1976年6.26の決戦に深く関わった10人の証言が掲載されています。
猪木・アリ戦の真実もくじ

私はちょうど24歳の誕生日にこの本を手に入れましたが、

その中には当時のゴッチさんのインタビューも掲載されています。

猪木・アリ戦の真実表紙
 猪木・アリ戦の真実 20年目の検証 より

ゴッチ
「あの試合か…もう20年にもなるのかな。私はそれほど深く関わったという意識がないので、期待通りの答えができるかどうかはわからないが、それでよければ何でもコメントするよ」


初っ端からこんな感じでして、

ゴッチさんの言葉一つ一つを読むと、

猪木vsアリに関してはそれ程、

強い興味を抱いていなかった様子です。
猪木・アリ戦の真実@ゴッチさんの証言

ゴッチさんがあの試合で担っていた役割は、

誰もが技術的なアドバイスだと思っていたはずです。

しかしその重責を果たすには、

時間が足りなかった模様です。

ゴッチ
「作戦面ということかな? それなら私は特別なアドバイスは行なっていない。試合ではセコンドの一員として猪木側のコーナーに付いたが、作戦は猪木自身に任せていた。試合直前になって、あれこれアドバイスされたんでは、戦う本人が混乱してしまうからね。
(略)どちらかというと精神的な激励が中心だったと思う。『集中力を失うな。気迫で押していけ』といったね」


技術的なアドバイスは無し。

これについてはゴッチさん以外のセコンド陣、

坂口征二山本小鉄星野勘太郎も同じ様です。

強いて言えば決戦までトレーニング・パートナーを務めた、

藤原喜明だけはセコンドの外から猪木に技術的なアドバイスを送ったとの事ですが、

実際に猪木の耳に届いていたかどうかはわかりません。

ゴッチさんも直前に自分がアドバイスする事で、

猪木に混乱を招かない様、それまで組み立てた作戦を尊重した、と。

ゴッチ
「作戦面に関しては、私よりもオーヤマという空手マン(極真会館・大山倍達館長)が、それ以前からアドバイスを行なっていたんじゃないかな?」

「当時、私が受けた印象では、私がリングサイド・スタッフの一員として招かれたのは、興行面の話題性を盛り上げるためという感じだった。私には興行面のことはよくわからない。だから私としては猪木がアリに勝つように、精神面であれ何であれ、最善のバックアップを行なうことだけを考えた。リングサイドに付くかぎりは、何かトラブルが生じた時、助っ人に入る用意はもちろんできていたよ」


極真会館本部道場に出向いて、

大山倍達総裁直々にローキックの指導を受けた猪木。
極真総本部にて

これがアリキックの原型になった事は、

改めて書くまでもないでしょう。

ゴッチさんは自身が興行面の話題の為に招聘された事を理解しながらも、

もし試合がおかしな方向に行った際には、

すぐに身を投じる覚悟だった様ですね。
猪木アリ40周年1

ここからは仮定の話ですが、

それではゴッチさんが猪木に技術的なアドバイスを送るなら、

どういった作戦を授けていたのか?

ゴッチ
「世界中が注目していた試合だし、あの試合に関係した人々も、ファンもそれぞれの意見を持っていると思う。だが私個人としては失望を感じた。なぜならアリからは何が何でも猪木を倒すんだという気迫が伝わってこなかったし、猪木に関してはキャンバスに寝て足を蹴りにいくという戦術は必ずしもベストとは言えないからだ。さっきも言ったように、私の当時の立場では作戦面に口を挟むべきではなかったが、もっと積極的に意見を言うだけの準備期間があれば、私自身のボクサーとの対戦経験から得た戦術を伝えたかもしれない」

「やはりボクサーを倒すためには、スタンドで相手の最大の武器である腕を捕らえてグランドに持ち込むのがベストだろう。
(略)確かにアリ・クラスのボクサーのパンチは凄い破壊力だが、ボクサーの方もレスラーの動きが読み辛くてプレッシャーがかかっているはずだ。(略)ルール面の問題もあって積極的に行くのは難しいだろうが、私がアリと戦ったと仮定すれば、私は腕を狙う作戦をとったと思う」


いきなり腕を取りに行くという事は、

胴タックル狙い? 懐に飛び込んでの投げ?

いずれにしても一発もらう覚悟で入って行く事になりますが、

噂される4オンスのグローブによる、

アリのパンチが待ち構えている訳ですからね…。
猪木アリ40周年6

それともう一つの疑問。

果たしてゴッチさんは、

件の“がんじがらめルール”をどう捉えていたのでしょうか?

ゴッチ
「私があの試合に大きな関心を示すことができなかったのも、あれだけ世界中が注目するビッグイベントになってしまったのでは、ルールを含めた全ての面で商業主義の介入を避けることはできない、と直感したからかもしれない」

「何度も言うように商業的な事柄には関心がないから、どの団体と連動してコーチする、といった考えは持たない。
(略)被害者的な意識ではないが、私は本当に格闘技者をビジネスのために利用しようとする動きには賛同できないんだよ」


“がんじがらめ”云々以前に、

ルール自体が商業主義に冒されていた、という認識です。

これもまた「シュートだったか? エキシビジョンだったのか?」とは一味違う、

ゴッチさんならではの見解ではないでしょうか。

結論を書いてしまえば、

“世紀のスーパーファイト”とまで言われたこの闘いも、

ゴッチさんにしてみれば数あるビジネスライクなマッチアップの一つ、

世界規模のショーアップ・レスリングだったのかも知れないですね。
猪木アリ40周年4

ゴッチさんは猪木とアリが闘ったという事件以上に、

この試合をいつまでも語り継ぐ日本人に感激していた様です。

ゴッチ
「それより私はあの試合から20年が経ってから、その価値観を考察しようとする日本人の姿勢の方に共感を覚えるね。アメリカでもあの試合は大きな話題になったが、たとえ格闘技ファンでも再考察しようという人はまずいないだろう。それなのに日本人は20年を遡って価値観を探ろうとする。それだけスポーツに対して真剣な姿勢を持っているということだし、さらに言及すれば日本人の生き方そのものを象徴していると思うね」


あぁ、天国のゴッチさん(感涙)…我々、日本人のプロレスファンは、

そこからさらに20年、試合からは40年経った今でも、

新たな証言を得た上で、

「あーでもない、こーでもない」と再々考察を重ねていますよ。

スポーツに対して、格闘技に対して、

プロレスリングに対して真剣に向き合っていますよ。

それはこれからも変わる事はありません。

後編では番組からわかった、

セコンドとしてのゴッチさんの言葉を考察しますね。
猪木アリ40周年3

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tag : アントニオ猪木 モハメド・アリ カール・ゴッチ 格闘技世界一決定戦

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待て待て待て待て!! 読め!! 俺の記事をこの野郎!! 待て貴様ぁ!!

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