大きなボタンが掛かった夜(2002)

感動的だった天龍源一郎の引退試合(参照:BSスカパーで天龍引退試合を観た)でしたが、

私にとって11月の引退試合といえば、

思い出すのは高田延彦です(参照:UWFインターの最終話)。
高田引退試合煽りV56

もう、あの日から13年経ったんですね。

私が現時点において最後に東京で観戦した大会、

2002年11.24 東京ドーム

高田延彦引退試合

高田延彦vs田村潔司

UWF inter所属

あの日から立場も関係も変わった両者ですが、

この夏、放送された『PRIDEヘリテージ』において、

当事者の高田と田村潔司が、

あの試合当時の心境を語りました(参照:BSスカパーで『PRIDE ヘリテージ~高田引退試合~』を観た)。
PRIDEヘリテージ#1~12

二人の言葉の中からは様々なものが見えてきました。

最初に語られたのは、

高田自身が現役引退を決断したタイミングと、

その表明をしたPRIDE.22。
PRIDEヘリテージ~001

高田
「現役やりながら解説席にも座らしてもらって、ちょっと違うアングルからね、試合を観してもらったんだけど。やっぱり…客の雰囲気とか、あの空間の熱を帯びた独特の世界観とか。そしてそこに集まる選手のレベル、試合のクオリティの高さ。“とんでもない場所になっちゃったな”と痛感してね、自分の中でもあったし、それと同時進行に“これはもう俺が上がれるリングじゃないな”と痛感して、感じてたし。それと同時にやっぱり思うし。自分を作ってる段階で、もう中々…ってのもあったし。リングで…タイミングとしてはね、凄く良かったんではないかな、と」

PRIDEヘリテージ~002

自らが格闘家としての魂を取り戻すために、

ヒクソン・グレイシー戦を実現する舞台として始まったPRIDE。

ふと気が付けば、そこは世界最高峰のリングとして、

“60億分の1”の人間を決める舞台に進化していました。

そこで自分の役目を終える最後の相手として、

当時、ヒクソン、小川直也モーリス・スミス吉田秀彦ら、

様々な名前が挙げられる中で、

高田に提案されたのは7年前の清算マッチでした。

高田
「ま、ここはひとつ最後だから、その自分の中で、えー、まずやり残した事。最後にカタつけて終わるってのがね、ありかなって。誰かがね、一つ提案してきたんだよね。んー、はっきり覚えてないんだけどね。“田村”って案を、
『どうでしょう?』って」
PRIDEヘリテージ~004

番組は一気に、

二人が出会った新生UWF道場にまで遡ります。

田村にとっての26歳の準エースは、

初め、憧れの対象でした。

田村
「高田さんだけね、何かめちゃめちゃオーラはハンパなくありましたね。それはね、憧れですよ」

PRIDEヘリテージ~005

一方の高田にとっての18歳の新弟子は?

高田
「まあでも当時からね、いいものは持ってたんだよね。何でも真面目だしね。これと決めたら、こう行く様な求道者。それはもう入門当時から匂いとしてあったからね。先、楽しみだなって、もうずーっと、こう時間を経て、Uインターの後半になってきた頃には、上手に…成長してったんじゃないの? うん」

PRIDEヘリテージ~006

入門テストにおいて記録的な数字を並べて、

道場に入ってきた田村(参照:続・BORN IN THE “U”)は、

スパーリングでも非凡な才能を感じさせた(参照:田村潔司の源)との事ですが、

そのまま成長を続け、

初めに花開いたのがインターのリングでした。

二人の立場は大きく変わって、

33歳の社長エースと25歳の団体ナンバー2。

すれ違いから起こった団体を揺るがす事件(参照:真剣勝負発言)。

田村の行動は憧れから始まった高田に対しての、

反動から湧き起こったものでした。

田村
「よくね、小学生って好きな子に意地悪するじゃないですか。そういう感じだったと思います(笑)。高田さんに相手にして欲しいと。で、相手にしてもらうにはどうしたらいいか。で、もちろんリング上が勝負、闘いの場なんで、アピールしちゃったのが、そういう形になったんだと思いますけどね」

PRIDEヘリテージ~007

実に田村らしい言い回しですが、

ストレートに言うと次の通りでしょう。

田村
「憧れだった高田さんっていうのは、僕が選手でいる以上は、ずっと憧れの存在でいっちゃいけないと思うんですよ。で、どっかで追いついていくでしょうし。だから23、4のまだ若僧なんですけど、高田さんに対して憧れが逆に“この人を倒さなけりゃいけないのかな?”っていう感じになったと思いますね」

PRIDEヘリテージ~008

言われた側の高田は、

心身共に最も疲弊していた時代です。

高田
「“何を言ってんだかな~、こいつらな~”っていうのが、あの時の正直な心の感想だよね。印象にあるのはね」

PRIDEヘリテージ~009

それは田村の発言に対してだけではなかった様です。

あの10.9から田村vs桜庭和志三連戦へ。

二人の溝は急速に深まりました(参照:一番大きなボタンの掛け違い~前編~同~後編~)。

田村
「ちょっとフライング気味に高田さんの耳に何か入った…僕が辞めるとか、そういうのが入って、ちょっとそっから、もう僕がどういう風にやっても連絡取れなくなって。で、直接、高田さんの自宅まで行ったり、手紙を書いてポストに入れたり。
(退団時、顔を合わせて)向かって、ないと思います。」
PRIDEヘリテージ~010

その流れを現在の高田は、

実にポジティブに捉えています。

高田
「その時は自分が代表だからとか、代表であるがゆえに、これだけの奴が一緒にね、こっちに向かおうとしてんのに…“この野郎!”っていうね、その感情はね、多少はね、埋まらない訳ないからさぁ。あったとは思うんだけど…。んなもんはちっちゃい、ちっぽけなもんだからね、うん。逆にそれがあったから、のちのち田村潔司がPRIDEに上がって来た時、いい緊張感、その風がね、もの凄くこう…物を運んできたってのもあると思うんだよね」

PRIDEヘリテージ~011

既にこの時点で運命は決められていたのか…。

かくしてUインターは解散し、

PRIDEの時代が始まり、

そこで田村は再び高田の応援にまわりました(参照:高田の耳打ち、田村の涙)。

田村
「いやぁ敗れた後はもう…単純に悔しかったです。こう魂が抜けた様な…感じでしたね」

PRIDEヘリテージ~012

高田の歴史的敗北から始まったPRIDEは、

皮肉にも桜庭の台頭と共に飛躍。

田村自身もヘンゾ・グレイシー戦での勝利をピークに、

孤高に引っ張って来たリングスを退団、

高田と同じPRIDEに参戦してきます。

高田はその直後、引退を宣言。

止まっていた時計の針が、

奇跡的に動き始めました。

高田
「ま、ここはひとつ最後だから、その自分の中で、えー、まずやり残した事。最後にカタつけて終わるってのがね、ありかなって。自分がいちファイターとしてさ、“よっしゃ!”ってね、そん時、そこを選べなかったってのもあるし。…うん…そこはドンと構えてさ、そん時のね、言ってやりたかったなって後から大人になると思うんだよね、うん。“やっとくか”と」

PRIDEヘリテージ~013

高田の心残りは田村の挑戦を受けれなかった、

あの日の無念にあったのです。

田村にとっては既に過去の事、

いわゆる“若気の至り”としてしまっておいたものでしたが、

そこには“一通の手紙”の存在がありました。

田村
「もう高田さんとも距離が大分あったんで、PRIDE参戦してからも恐らく喋ってないし。もうそれ以上、それ以下でもなく、何でだろ? っていう。榊原さんと高田さんと手紙、頂きましたね。その時ね、見てなかったんです。もう封筒開けて、でも読むと、何かわかんない、それ読むと、もうやんなきゃいけない様な雰囲気なっちゃうんで。ちょっとね、敢えて読んでなかった記憶があります」

PRIDEヘリテージ~014

高田
(満面の笑みで)あ、送ったとしたら、あの一発のパンチで忘れてるかも知れない」
PRIDEヘリテージ~015

二人ともはぐらかしていますが、

田村は自著において手紙に目を通した事を公表しています。

それでも簡単に首を縦に振れるカードであるはずもなく…。

田村
「もうやるやらないで、もうPRIDE陣営の人と何回も会って僕も決断下せなくて。結構複雑でしたよ」

PRIDEヘリテージ~016

どのタイミングか定かではありませんが、

試合は決定しました。

高田
「よく受けてくれたっていう、感謝の気持ちだね、うん。それしかないっすね」

PRIDEヘリテージ~017

この試合の意味は当時、

煽りVという形で全PRIDEファンに伝えられました(参照:最も泣いたカマンベイベ)。

そして試合ですが、

壮絶なKO劇は天龍引退試合以上の衝撃でした。

それでも闘った二人にとっては、

かけがいのない“特別な時間”だったのです。
PRIDEヘリテージ~018

13年前の今日、東京ドームの中心で、

大きなボタンは修繕されていたのです。

高田
「リングに上がる時には、昔の仲間がいたりとか、妙にこう…その、冷静沈着にね、その日の自分が出る前後の空間ていうのを捉えながら、試合の時間を過ごしたと覚えてるね」

PRIDEヘリテージ~019

田村
「大先輩ですけど苦楽を共にしてる時期があったので、そこはね、元々兄弟家族以上に何か、もう一緒にそうやって同じ時代を過ごせたって事で本当にありがたい、ですね」

PRIDEヘリテージ~020

朦朧とした意識の中で花道を歩き、

高田はメインに臨む桜庭にバトンタッチ。
PRIDEヘリテージ~021

高田
「花道を通って帰る頃にちょっと意識が戻ってきたの、はっきりと。そしたら次の出番待ってる桜庭が、これからテメエの試合だっていうのにワンワン泣いてるんですよ。それを見てまた、覚醒させられたっていうか。ちょっとボーっとしてたのかな。また、その何だか、現実に引き戻された。こんな状態で、あいつも男の中の男だな。彼もこんな状態でね、試合引き受けてくれて。この状態で今から行く訳だから。…凄い奴らだなっていうね」

PRIDEヘリテージ~022

その桜庭の涙を見たとき高田は改めて、

世界最高峰のリングという現在地を再確認しました。

本当にやってよかった…全く以って観に行ってよかった…。

そんな試合の筆頭が私にとってこの試合です。

最後に高田が現役時代を振り返って、

感慨深く言葉を残しています。

高田
「ぶっちゃけさぁ、あのー…現実だったのかと思うよね。時々、ふと思うんだ。俺、本当にプロレスラーだったのかな? 本当にPRIDEのリングに上がってたのかなってね。嘘だろ? って。あれひょっとしたら長ーい長ーい夢を見てたんじゃないかって。今でも、今の自分を見てると、あとこの辺から見てると、まあそれだけ色々あったけれども、自分にとっては光り輝いて、過ごした時代だったていうね。素敵な時間はアッという間に過ぎるけどね、嫌な時間は長く感じるけど。ま、素敵な時間だったのかなぁー…アッという間に、一瞬で。だから幻だったのかなぁーって。…これ一人の妄想だったのかも知れないね、うん。…そんな感じですよ」

PRIDEヘリテージ~023

やってる選手が夢の中にいたのだから、

観てる私たちはそれ以上の夢を見せてもらえたはずです。

『泣き虫』の印象が強すぎて、

高田とプロレスの関係に対しては、

ネガティブな印象を持つ方が多いと思いますが、

そんな事はないですよ。

高田も天龍同様、誇りを持ってプロレスを全うした男です。

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tag : 高田延彦 田村潔司 UWFインターナショナル

comment

Secret

こんばんは

レガさん お久しぶりです。
私は当時、高田さんの最後の相手は田村潔司しか
いないでしょうと確信してましたよ。
高田さんならきっと…っていう思いはありました。

>怜ちゃん

こんばんわ。
ご無沙汰でしたー!!

当時、高田さんの最後の相手は田村潔司しかいないでしょうと確信してました<そうなんですよね。
思えば、この引退試合翌日の帰りに、空港で携帯見てたら私のHPの板にコメント下さってたのが怜ちゃんたったんですよね。

コメントに関係無いかも知れませんが、この試合における怜ちゃんといい、天龍オカダのアステさんといい、コメント下さる方々皆さん予知能力者みたいだなぁ…。
たかさんなんかはオカダが海外修行に出る時点で今のポジション予言してたもんなぁ…。
凄い人たちですよ。

こんばんは

ここにおじゃまさせていただいているだけでも
何というかほんとに…。
11月15日のオカダさん、かっこいいアンちゃんでしたね ますます好きになりましたよ!
12月は新日本2会場行ってきます。

>怜ちゃん

おじゃまさせていただいているだけでも<とんでもないです。嬉しい限りです。
本当にね、怜ちゃんも含めて凄いファンの方々からコメント頂けて幸せです。

11月15日のオカダさん、かっこいいアンちゃんでしたね<天龍あっぱれって、オカダもよっぽどあっぱれでしたね。
あんなに両方が光った試合って近年ないんじゃないですか?

12月は新日本2会場行ってきます<ああいいなぁー(笑)。ご感想をコメント下さると幸いです。

これからいわゆるプロレス女子ってのが淘汰されていくと思います。
怜ちゃんは今までもこれからも、ご同輩でお願い致します!!
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