Yoji Anjo Is Alive 外伝3~安生が語るUWF打撃史~

外伝2では、

安生洋二が語ったUWF道場における立ち技について書きましたが、

今記事は、中でも安生の立ち技において最大の武器であった、

ムエタイの技術を中心として、

Uにおける“打撃技術の進化論”を振り返りましょう。
安生のハイキック

安生の独特な自論として衝撃的な言葉があります。

そこから始めましょう。

Gスピリッツ36表紙
 Gスピリッツ Vol.36 より

安生
「僕はあまりUWFの試合を面白いと思って観ていなかったですからね。特に上の先輩の試合は、“何だ、これ?”と正直思っていたんで」

(Uスタイルの試合は)難しいんです。だから、ダウンの応酬みたいな訳のわからないことになっちゃう。通常のプロレスで言えば、あれは『2.9プロレス』ですよね。大技を食らわせて、カウント2.9で跳ね返しての連続って、ダウンの応酬と一緒じゃないですか。それでお客さんをワーッと言わせるのは、あまり好きじゃなかったです」


これね…ぶっちゃけ言うと、

確かに上の選手、特に前高山の直接対決は、

どの組み合わせもパターンが決まっていて、

目新しい攻防はなかったんですよ。
前田vs高田@新生U2戦目

むしろ、この三人vs藤原やvs船木の方が、

意外性があって、私自身も面白かった記憶があります。
前田vs船木1

その安生のスタンドにおける技術の中心、

構え方もムエタイを基調としたアップライトでしたが、

このインタビューの聞き手である和良コウイチさんは、

安生が見せる“極端な『後ろ足重心』”に着眼しています。
札幌の安生vs鈴木1

その理由は、

安生
「無差別級でやってるからですよ。身長的にキツイんで。
(クラウチングスタイルだと)顔面に打撃が届かないじゃないですか、全然」


新生Uにおいてはトップの方針もあって、

明らかにヘビー級重視でしたので、

体重差、身長差をカバーする安生なりの手段が、

あの構えだった訳ですね。

安生
「僕はどっちかといったら、ミドルキック重視なところがあるんで。パンチに合わせて、カウンターで左ミドルを入れるのが好きですね」


Uにはローから入る選手が多かった気がしますが、

安生と田村に関しては左ミドルですよね。
レバーをえぐる安生のミドル

“KICK,SUBMISSION & SUPLEX”というキャッチフレーズがあったくらい、

UWFの打撃といえば蹴りのイメージが強かったのですが、

そこに上からの技術…掌底を持ち込んだ選手がいました。

船木誠勝ですね。
新生U時代3

各選手もパンチをアレンジした型で掌底を多用し始めますが、

安生はここに疑問を抱いた様です。

安生
「掌底って手首が柔らかくないと、相手の目に指が入っちゃうじゃないですか? ストレート系を打ったら、手首があまり起き上がらない。そうしたら、絶対に指が目に行っちゃう。掌底を打つ自分も怪我しやすいですしね」

「ファンも掌底で印象に残っているのは、船木さんぐらいじゃないですか。船木さんは骨法をやっていたから。僕としては、パンチの延長だけど、掌底のストレートは目に入りそうで嫌だなって」


そうですね、船木以外はフック系が、

というか張り手の延長の選手が多かったですよね。

前回の記事に記した通り、

とにかく相手を怪我させるのはご法度ですから。



そして、安生の打撃技術におけるターニングポイントとして、

1989年11.29 東京ドームでの、

異種格闘技戦

安生洋二vsチャンプア・ゲッソンリット
があります。
安生vsチャンプア1

UWF代表6人が世界の超一流格闘家を迎撃するビッグイベントで、

若手の筆頭株としてムエタイのスーパースターと対戦したのですが、

第三者から見てこの試合が、

大会中唯一の“格闘技”だったという説も残っています。

安生
「別に僕はスターでもないし。スターって難しいというか…負けられないじゃないですか? だから、スターじゃない奴はどんどんそういう…。腕試し…まあ“そういう試合の方が緊張感があって楽しいな”というのは当時、思っていたんじゃないかな」


自ら志願してのチャンプア戦でしたが、

当然ながらイージーな相手ではありませんでした。
安生vsチャンプア2

チャンプアはフルラウンド、ロープ際に立って、

安生が出てきたところにカウンターを合わせる戦法で来たのです。
安生vsチャンプア1

ルールでもそれが認められ、尚且つ…、

安生
「ルールがロープブレイク無制限ですからね。キツイですよ(苦笑)」

「元祖ヌルヌル男ですよ(笑)。ちょっと危ないとロープを掴んでブレイクだし、その上ヌルヌルで“キツイなあ”って(笑)」


タイオイルですね。

かなり入念に塗っていたんでしょう。

テイクダウンまでは奪いましたが、

そこまででした。
安生vsチャンプア3

果敢に飛び込んで行きましたが、

それ以外にもハンディを負っていました。
安生vsチャンプア2

相手の体重に合わせた減量と、

思いもよらぬ古傷(参照:三羽烏が語った“強さ”)の再発です。

安生
「正直立っているのがやっとだったんで、こっちは作戦も何もないんですよ。ええ、古傷の膝の靭帯を損傷して」

「痛み止めを打っていたんでね。でも、実際は立っているのがやっとで」


この怪我によって試合まで2週間練習出来なかったという…、

まあ怪我ばかりはどうにもなりませんね。

フルラウンド闘った末ドローとして、
安生vsチャンプア4

納得いかぬまま控室に帰ってきた安生に対して、

上の選手達は「よくやった!」の大合唱。
安生vsチャンプア3

しかし闘った安生本人は、

とても満足出来る内容ではなかったのです。

それでも普段、マススパー止まりの安生が、

いきなりドームの大舞台で本物と闘い抜いたのは、

大きな自信につながったと思います。

安生
「相手の蹴りは死ぬほど強かったですね! まあ、見やすいといえば見やすいですけど、全力の蹴りをあんな一発一発打つって凄いです(笑)。当たれば、死ぬほど痛かったですね。だって、ローキックを受けたら背骨が“ビーン!”って。太腿の骨から伝導して、尾てい骨から来ましたからね。“何で足を蹴られて、背中に衝撃が来るの?”という(笑)。あれは驚きましたね」

「太腿を蹴られて背骨に来るというのは初体験(笑)。というか、後にも先にもないですね。試合中は別に効いているという意識はなかったんですけど、控室に戻ったらやっぱり立てなくなりましたよ」


さらにこのドーム大会がUの各選手達には、

異種格闘技術を習得するキッカケとなりました。
タイパンツの組長

安生
「新生Uに来てからもあまり道場にいなかったかな。藤原さんはムエタイの練習を…。その頃から藤原さん、あまり道場には来ていないですね」

「高田さんも後半はボクシングジム
(大橋ジム)に行ったりとか、そんなに道場にいない時期もありましたけど」


高田の場合、それ以前から大橋ジムに通っていたんですけど、

とにかく上の選手は出稽古に向かう傾向が強くなりました。

これにより道場で顔を合わせる事が減って行った事で、

最終的に選手同士の溝が出来てしまった…、

と言ったら考え過ぎかも知れませんが、

今回はそこに主眼をおいていませんので、

次に行きましょう。



Uインター以降、格闘技における“打撃”の定義は、

急変していきました。

どちらかといえばアングラ寄りのジャンルだったバーリトゥードが、

UFCによってメジャーシーンに躍り出てきたのです。

Gスピリッツ37表紙
 Gスピリッツ Vol.37 より

安生
「“こういうのは、あまり好きじゃねえな”とは思いました。
(略)『寝技になって人を殴る』というのは自分の感覚としてないですし、寝技になったら技術で取りにいくというのがある。でも、そこで顔面を殴って…」

「グラウンドで殴ることに抵抗がありましたね。“俺、何をやってるんだろうな”って。そういう世代ですから。自分の中でなかなかマッチしないですよね。
(略)だから、自分がやっているものとは別物という感覚で、なかなかそこら辺は対応できる人と対応できない人がいたんじゃないかな。僕はあんまり対応できなかったですね」


それまで積み重ねてきた技術に誇りを持っていた安生、

レスリングに対する美意識にVTはそぐわなかった訳です。

しかしながら…U系日本人で真っ先にそこに飛び込んだのは、

皮肉にも安生その人だったんですよね(参照:Yoji Anjo Is Alive vol.17~十年間、そして十年後・其の参~)。
安生、道場破り5

そこからバーリトゥードがNHBからMMAと呼ばれる様になるまで、

安生はこの世界に深く関わってきた訳ですが、

やはり本音の部分では、

“最高に技術が競えるのはUスタイル”という思いを感じます。

安生
「でも、寝技をやる上では素手の方がいいですからね。グローブを掴まれたりするし、脇を差した時は手が抜けないし」


私もそう思います!!

さて外伝4では、

その寝技についての検証を行いましょう。

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tag : 安生洋二 新生UWF UWFインターナショナル

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Author:紫レガ 
44歳のプロレス話


待て待て待て待て!! 読め!! 俺の記事をこの野郎!! 待て貴様ぁ!!

どーですかぁーーーー!!

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