Yoji Anjo Is Alive 外伝1~UWFにおける寝技スパーとは?~

天龍源一郎のみならず、

今年は多くのプロレスラーが引退していきます。

その皮切りとなったのは安生洋二(参照:YAIA 200→YAID 0~前編~同~後編~炭火が消えた夜)でしたね。
安生テンカウントゴング3

引退記念インタビューとして『Gスピリッツ』に連載された、

『安生洋二「Uの技術」を語る』は好企画でした。 
Gスピリッツ35~3

ここで語られた安生の回顧録は、

単に自身の現役生活に限らず、

UWFの“リング内における歴史”を振り返ったものでした。

安生だから語る事が許されるUの技術論、

久々の技トーークはこれで行きましょう。

安生が飛び込んだ道場、

それが今では伝説となった第1次UWFでした。
格闘技道場UWF

Gスピリッツ35表紙
 Gスピリッツ Vol.35 より

安生
「スパーリングの時間は1時間半とか。結構、若手はぶっ通しですね」


新日伝統のストロングスタイルと佐山聡が提唱するシューティング、

それが混じり合って行く中で、

藤原喜明以下全員が、

スパーリングで技術を高めていきました。

安生ら新弟子たちはその実験台の様な役割から始まる訳です。

そこで話題になるのはいつもの噂でして、

上になった方は延々そのポジションで極めていき、

下になった方はタップを繰り返しては極められていく。

あのプロレス道場特有のスパーリングの真相です。

安生
「そうです。同じところからスタートなんで、逃げられない(笑)。だから、当時は下になったら、なりっ放しというのが多かったですね」


やっぱりそうだったんですね。

但しスタートからという訳ではない様です。

安生
「背中合わせで座った状態からが多かったですね。人数が少ない時は、立っている状態からやることもありましたけどね。それで1時とか1時半に昼ごはんなんですけど、その時点でもう食欲はなくなってます(笑)」

「スタンドレスリングも含めて強くなければ、上を取れないんで。背中合わせからスパーを始めても、そのまま寝技になるわけじゃない。結局、お互いに膝立ちで組む形になるんで、それはスタンドレスリングなんですよ」


スパー始めのスタンドレスリングが最大のシュートという事でしょうか。

それにしても、スクワットから始まるフィジカル練習を充分以上にこなしてから、

長時間スパーに移行していくのも昭和新日式そのままですね。

そりゃ練習後に食欲はほとんど残っていないでしょう。
Gスピリッツ35~4

さて、道場における先輩とのスパーは、

以前記事にした通り(参照:三羽烏が語った“強さ”)ですが、

当時は当たり前かも知れませんけど、

まだ上の選手同士でもスパーが行われていました。

安生
「先輩同士は極め合っていましたけど、こっちは入ったばかりの若手じゃないですか。何も技を知らないうちからあんまり関節をガンガン極めると、早く消耗するんですよ。だから、そんなに極めないで、とにかく抑え込み。そこからどうやって必死に暴れて逃げるか、というのをやるんですよね」

「旧Uとか新日本に上がっていた時代は、“下から”という意識がなかったですね。とにかく上を取ろうという。上が絶対的に強いじゃないですか? 下が有利という感覚はなかった。だから、とにかく上を取って、いかに抑え込んで、抑え込みからどうチャンスを作るかというのが常に頭にあった感じです。たぶん、下からというのを意識していた人はいなかったと思いますよ。とにかく上を取って、極める」


新弟子は実験台の状態で下になって根性を磨く、

やがて極められなくなって来てから、

まず上になる事…それが攻撃の基本。

柔術が入ってきてから変化はありますが、

今でもU系の技術の基本は上になるところからです。

そして、その技術は懇切丁寧に教えられるものではなく、

安生
「指導というのはほとんどないです。とにかく、やられて覚えるしかないですよ。“この人、身体の動かし方が上手いな”とか、本当にやられて盗むという。それに当時は、そんなにテクニカルな人はいないですよ」


そういうものだったのです。



もはや我々ファンにも広く浸透した“ラッパ”、

これを克服するところからデビューへの道のりは始まります。

主に腹の肉で下になった者の口や鼻を塞いで、

呼吸困難に陥れる修練法ですが、

新生U末期からUインターにおいて、

ラッパ先生として君臨した安生(参照:Yoji Anjo Is Alive vol.12~ラッパ先生の功績~同 vol.21)の極意は少し違った様です。

安生
「僕の場合は大胸筋ですね。お腹はちょっと隙間さえ作れば、息が出来るんですよ。でも、胸筋となると相当キツイです。僕は相手の首を抱えて完全に固定してやってるんで、これは逃げづらいですよ(笑)。ホントに息ができない」


このラッパ先生が考案した日本一のラッパが、

のちのUインター出身者がMMAで見せた、

驚異の粘り強さにつながっている訳です。

と、同時にUのスパーを積み重ねた事で、

柔術のセオリーを跳ね返す基礎ともなっていたのです。

Gスピリッツ36表紙
 Gスピリッツ Vol.36 より

安生
「あの頃は足をクロスさせたり
(クローズドガード)とか、そういう膠着を嫌がっていたんですよね。だから、“とにかく動け!”という練習。下になる奴も膠着を誘発するような動きをしないで、とにかくそこから逃げて立っていくというのがメインだったんで」

「アグレッシブにならざるを得ないというか…。逆に下から足をクロスしたりすると、“何、休んでんだ!”って言われるので。だから、発想がちょっと違うんですよね。グレイシーとかは護身術から生まれたから、というのもあるでしょうけど、こっちはプロとして『極めに行く』ことと、あとは『運動量重視』だったんで」


柔術とUWFの違いは、

“護身術”と“プロ”の違い。

それは良きにつけ、悪しきにつけ、

端的に最も違いを言い表していますね。
UWF道場での練習風景

驚くのは安生が指導する段階になっても当時のスパーにおいては、

ディフェンスという概念自体がほとんどなかったという部分です。

安生
(ディフェンス練習は)そんなにやってないです。ディフェンスの技術は“自分の身を守るために自分で身につけろ”ということなんで。(略)そこは“自力で頑張れ”というやつです。だから、極め方は教えたりしますけども、逃げる方に関しては…まあ、基本的な返し方とかは教えますよ」

「“袈裟固めからはこう逃げる”、“横四方固めならこうやって逃げなさい”とか。でも、それよりもうちょっと細かい部分に関しては…。自分がいたのは、わりと閉鎖された社会じゃないですか? そこはプロとして、やっぱり相当根性がないとダメだよっていう。ディフェンスにしても、そこら辺は『才能』であり、『自己防衛本能』ですよね。それが無い奴はダメじゃないか、という発想」


究極の個人商店…同じ道場内においても、

選手同士の技術交流に限りがあったんでしょうね。

そこがのちのバーリトゥードにおける、

プロレスラーの連敗にもつながるのですが。

Uインターの後期、道場には修斗からエンセン井上が出稽古に来ます(参照:エンセン井上が語ってたUインター道場)。

そこで初めて本当の技術交流が始まったのですが、

安生が感じたエンセン=柔術の印象は、

それ程のインパクトではなかった様子です。

Gスピリッツ37表紙
 Gスピリッツ Vol.37 より

安生
「多少関わっていますね。うーん…身体が強いなって。体力あるな、組み力が凄い強いなと思いましたね」

「ああ、極められましたね。どんな技? そこまで細かいことは憶えてないです(笑)」


これエンセンの安生評と読み比べると面白いですよね。

技術的なものよりエンセンの体力に驚いた、

そういや垣原も同じ様な事を言っていました。

外伝2へ続けさせて下さい。

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tag : 安生洋二 旧UWF UWFインターナショナル

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No title

はじめまして。
いつも楽しく拝見させて頂いております。

レガさんの記事は勿論、コメントされている方々とのやり取りまで勉強になることばかりです。

今回の記事も大変興味深いものでした。
ありがとうございます。

さて、記事の主題から外れたコメントで申し訳ありませんが、月刊秘伝という雑誌の11月号の特集が関節技法でして、藤原氏と宮戸氏が出ておられます。
特に宮戸氏はキャッチの技術解説です。
ご興味あるようでしたら是非。
外伝2も楽しみにしております。

No title

UWFの遺伝子は時を経ても様々な型で受け継がれているのでしょうね…高田さんと前田さんがもう一度手を組んだら、何か新しい事が出来るかも?と思いますが、中々難しいのでしょうね(泣)

>ワガママな膝親父さん

初めまして。
コメント下さり、ありがとうございます。

月刊秘伝という雑誌の11月号…藤原氏と宮戸氏が出ておられます<その様ですね。特別ゲストで鈴木秀樹まで。
プロレスと毛色の違う本でプロレス技術が紹介されるのは嬉しいですよね。

情報ありがとうございます。

>浦原さん

高田さんと前田さんがもう一度手を組んだら、何か新しい事が出来るかも?<難しいですね。現状では非常に難しいです。

根っこは一緒なんですけどね。
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