血で血を洗う信頼感・੧~川崎乱入事件~(1973)

アントニオ猪木と、
“燃える闘魂”アントニオ猪木

タイガー・ジェット・シン
“インドの狂虎”タイガー・ジェット・シン

この二人の闘いが、

新日本プロレスを大きくしていきました。

それはショー・スポーツとしてのプロレスの原点、

ベビーフェイスとヒールの抗争であり、

それまでは勧善懲悪が結末とされていたものを、

互いに覆していく正義と悪の逆転劇でもありました。

ベビーフェイスであるはずの猪木の狂気性が、

一番解りやすく示されたストーリーでもあったのです。
猪木vsシン@モントリオール1

ちょっと時間をかけて、

この抗争を検証してみたいと思います。

そもそも1964年にシンガポールでのデビュー後、

ホームリングであるカナダにおいては、

トップ・ベビーフェイスだったシンが、

日本に来るきっかけとなったのは、

旗揚げ以来のガイジン不足に悩む、

新日プロの台所事情からでした。
旗揚げの挨拶に立つトルコさん

営業本部長だった新間寿の述懐です。

Gスピリッツ Vol.23 (タツミムック)
 Gスピリッツ Vol.23 より

新間
「シンはね、赤坂でゲーム機を販売していた遠藤幸吉さんの友達の吉田さんという人物が猪木に直接話を持ってきたの。『身体も顔もいいし、彼を使ったらどうだ?』と薦められてね」


当の猪木の述懐は多少ニュアンスが違います。

 アントニオ猪木の証明―伝説への挑戦 より

猪木
「力道山時代から外国人招へいをやってた吉田さんていう日系二世の人がいて、いわゆる呼び屋さんなんだけど、その人が『インド人のレスラーで面白い選手がいるんですがどうですか?』と会社に売り込んできたらしいんだ。当時はNWAの圧力とかで外国人のスター不足に悩んでいた頃だったから、とにかく呼んでみようということになったんですけど、そしたら勝手に来ちゃってね」


いずれにしても実力的な予備知識のないまま、

単純に駒不足を補う為の人選の様ですが、

ここで気になったのは、

声がかかる前に勝手に来てしまうという、

シンのやる気ですね。

彼もまた日本という国を知らぬまま、

新日プロの会場まで辿り着きました。
川崎乱入事件1

シン自身の述懐です。

アントニオ猪木50Years (上巻) (B・B MOOK 664 スポーツシリーズ NO. 536)
 アントニオ猪木50Years(上巻) より

シン
(日本に来たのは)あの時が初めてだ。川崎だったと記憶している」


1973年5.4 川崎市体育館でのゴールデン・ファイト・シリーズ開幕戦で、

もちろん前シリーズより坂口征二の入団(参照:昭和新日本・黄金のトロイカ)と共に開始した、

『ワールドプロレスリング』のテレビ生中継。

ターバン姿でリングサイドに陣取ったシンは、

セミファイナルの山本小鉄vsスティーブ・リッカードの試合中に、

疾風の如く乱入し小鉄さんを襲撃。
川崎乱入事件2

勢いそのままに猪木への挑戦をぶち上げました。
川崎乱入事件3

シン
「それは今でもはっきり覚えている。彼は私が誰か知らなかった。ターバンを巻いた変なヤツがリングサイドに座っている、そんな目で私を見ていた。そう感じたから彼を襲ったんだ」


川崎乱入事件4

そのままシンはシリーズ参戦。

5.25 岐阜市民センターで、

初対決にして猪木とのシングルマッチ三本勝負を実現させます。

しかも三本目は反則勝ちながらも、

2-1のスコアでシンが勝利。

これには当時の人気フォーク歌手・吉田拓郎さんが、

訳あって拘置所の中にいた時期で、面会に来た人物に、

「昨日の猪木とシンの試合はどうなった?」と訊ねたエピソードもあります。

当時の時代背景もあって、

一気に世間の注目を集めたシン。

このシリーズ最終戦の6.14 大阪府立体育会館においては、

メインで猪木との時間無制限一本勝負に臨みました。

結果は猪木の反則勝ち。

このシリーズ、タッグマッチも含めた7度の対戦で、

猪木はシンというレスラーの潜在能力を察知し、

自らプロデュースへと乗り出しました。

 アントニオ猪木の証明―伝説への挑戦 より

猪木
「来る前に見せられてたプロモーション写真がターバンを巻いて口に小さなナイフをくわえていてね、『なんだこりゃ、おもちゃみたいなもんくわえやがって! どうせならサーベルでもくわえさせろよ』って俺が思わず言ってしまって。
(略)あとからのことで散々いじめられて、あのとき余計なこと言わなければよかったって後悔したよ(笑)」

「最初は彼自身も自分の役割がわからなかったと思うんです。日本でベビーフェイスとして通用しないことは当然最初から気づいていたでしょうが、でもこれが自分だというものもなかったと思うんですね。それが俺と刺激を与え合ううちにボルテージが高まって、ごく自然にああいう方向に導かれていったんじゃないですか」


シンとの出会いによって猪木もまた、

内なる能力に目覚めたのです。
ターバンとサーベル

そして、その“刺激”が昇華して、

この年の秋、

プロレス界にとって前代未聞の事件が発生しました。

へ続けましょう。

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tag : アントニオ猪木 タイガー・ジェット・シン 山本小鉄 新間寿

comment

Secret

No title

シンとやりあってる頃の猪木・新日本は見た覚えがありません。
プロレスを見始めた時には
シン、ハンセン、ブロディ、スヌーカ、ドスカラスは全日本。
アンドレ、ブッチャー、ホーガン、マードックは新日本・・・でした。

なので、親世代の人が
「何?今はシンは鶴田とやってるんか?」
と言われても
「そりゃそうでしょ」としか返答出来ませんでした。
その後、プロレス大百科(ケイブンシャ)を買った時に
「猪木とやりあってたんだ!ハンセンも!
ブッチャーは馬場のとこにいたのか…
国際プロレスって木村浜口寺西以外にもいるの??」
って感じで。

続きに期待します。

No title

わお。
シンだ。
怖かった記憶しかないですね~。
リングサイドをサーベル振り回している印象。

サーベルは猪木が 言っちゃったんですね(笑)
たしかに ナイフなんかより ずっとインパクトありますもん。
大正解です。

飯塚さんのアイアンフィンガー は すこしアニメチックかな?
アルティメットなんちゃら~ みたいな。(意味がよくわかってない)
殺傷力は断然サーベルです。
矢野ちんの イスは舞台の小道具ってイメージです。

グレートカブキの毒ギリに いたっては  汚い (笑) です。
永田さんの それとは なんか違う 毒々しさ かな?

あれあれ・・・ はなし それた・・・。すみません。

>ナリさん

プロレスを見始めた時にはシン、ハンセン、ブロディ、スヌーカ、ドスカラスは全日本<そこが本当の黄金期ですもんね。
また、その面子が後に全員新日に上がって(戻って)いるんですよね。

その後、プロレス大百科(ケイブンシャ)<ああ昭和のプロレス少年の王道ですね!!
中邑少年もそうですが、プロレス少年にとって歴史の勉強は必須科目ですもんね。

>ケロさん

怖かった記憶しかないですね~…リングサイドをサーベル振り回している印象<本当に洒落にならないというか、当時の映像を見ても普通に客を殴っていますからね(汗)。

サーベルは猪木が 言っちゃったんですね(笑)<そこが最初のプロデュースだったんじゃないですかね。
初めて自分よりも完全なる格下のライバルを作った訳ですから。

飯塚さんのアイアンフィンガーはすこしアニメチックかな?…矢野ちんの イスは舞台の小道具ってイメージ…グレートカブキの毒ギリにいたっては汚い<(爆笑)。そういやカブキじゃないですけど、昔、破壊王が「ムトちゃんの毒霧と違って、大仁田の毒霧はクセーよ」みたいに言ってましたな。

サーベルタイガー

プロレスファンにとってインドといえばタイガー・ジェット・シンですよね!
まぁ、私はカレーですが。

『狂虎』ですよ。
『燃える闘魂』は別格として、個人的には1番素晴らしい“異名”だと思います。
ちなみにそう名付けたのって東スポの桜井さんでしたっけ?違いました?
インドの狂虎…略してインキョンですよ。
…で、インキョンって何ですか?
インドの猛虎とも呼ばれてました。略し…ません。

この時期、短いスパンで何回も猪木vsシンは組まれています。
さすがにリアルタイムでは見てないですよね。
後で知って、「新日はこの同じカードばかりで、よく勝負できたな」と不思議に思ったことがありました。
でも…頭を使ってたんですよねぇ。興味を持続させる戦略を取っていたことを知りました。刺激的な(笑)

当時はまだ日本人vsガイジンがメインの時代。
良いガイジンが呼べないなら、自前で良いガイジンを作っちゃえってことですよね。
これぞ、風車の理論!…違うか(汗)

シンはインドレスリング出身と言われてますよね?
実は以前、そのインドレスリングについて興味が湧き、色々と調べてたことがありました。
でもシンが本当にそれをやっていた人なのか、未だに確信が持てないんですよ。

No title

プロレスを見始める直前、夜明け前ですね。

ちょうど外人エースがハンセンに代わった時代に観始めてるんで猪木ーシンはテレビで2回観た記憶があるのみです。(1回はMSGシリーズか)

高校の頃ビデオで借りて猪木-シンを改めて観てみたのですが、フィニッシュの説得力のなさにがっかりしたのを憶えてます。いつの試合だったのかな?それ以来しばらく昔のプロレスは面白くないんだな、と感じてました。

藤波によるとシンはかなり厄介な相手だったらしくかなり勉強になったようですね。

続き期待してます。

お気遣いなく('◇')ゞ

>レガさん

たかだかコメント1つで恐縮です。

シンは初期の新日を支えた重要人物ですね。

しかし、無名の外国人をいきなり勝たせちゃうってのが、猪木の凄いところですね。

自分の後輩は、子供の頃全日しか観たことがなく、たまたまチャンネル回して見掛けた新日中継で、猪木が負けるところを見てしまい衝撃を受けたそうです。

馬場しか観たことがない少年には、団体のエースが負けちゃっても良いの?? って、ショック…それ以来、新日派になったらしいです。

負け試合で魅せる、客を引き付けるってのが、馬場には無くて猪木が持っていた魅力じゃないかな? と、

本当に猪木は、自分が負ける事で相手を光らせ、相手のイメージを膨らませて、自分も光って…最終的に美味しい所全部持っていっちゃうという。やはり天才だったんだろうな。

続き楽しみにしています。

それと、最近動く所観てないけど…やはり天龍動けませんか?

でも、天龍が絡んでくると、柴田の昭和プロレス路線にも膨らみが出て、カードが拡がりそうなんですが…

この間、兄の大ハヤブサに変身して、オカダにもヤキを入れるような発言をしていました。

オカダ×天龍見てみたいです。('◇')ゞ

>宮戸ゲノムさん

インド…私はカレーですが<昨夜の私もこの記事に因んでカレーでしたよ(笑)。

『狂虎』ですよ<当時のパンフとか見てると、もっとストレートな異名なんですよね。「気●い」とか「狂人」とか…。
少し柔らかくしたのが狂虎だったんでしょうね。

名付けたのって東スポの桜井さんでしたっけ?<どうでしょうね。舟橋アナの可能性もあります。

略してインキョンですよ…インドの猛虎とも呼ばれてました。略し…ません<略す意図はよくわかりませんが(笑)、“マンチェスターの古豪”とかだと大変な事になりますね。

「新日はこの同じカードばかりで、よく勝負できたな」と不思議に思ったことがありました<この後、記事にしていきますが、新日の企画力よりもシンの“前に出る感”が大きいんですよね。

良いガイジンが呼べないなら、自前で良いガイジンを作っちゃえ<後のハンセン、ホーガンらにつながってくる猪木の凄さでしょうね。

シンはインドレスリング出身と言われてますよね?<いやこれがまた諸説あってですね…その中には「アクラム(アスラム)ペールワン同一人物説」まであるという(笑)、当時の情報操作恐るべしです。

>BKっち

プロレスを見始める直前、夜明け前<そうですね。ほとんどの猪木vsシンはリアルタイムで見てません。

高校の頃ビデオで借りて猪木-シンを改めて観てみたのですが、フィニッシュの説得力のなさにがっかりした<原因ははっきりしてるんですよ。レフェリングです。ピーターの。
カウントの取り方がめちゃくちゃなんですよ。

藤波によるとシンはかなり厄介な相手だったらしくかなり勉強になったよう<アンドレはやりやすかった…みたいの読んだ事あります。
我々観る側とやってる側の違いって大きいんでしょうね。

>アステカイザーさん

本当に申し訳ございませんでした。
ブログ開設以来、このシンとハンセンは必ずやらなきゃならんカードだな、と思っていたんです。

無名の外国人をいきなり勝たせちゃうってのが、猪木の凄いところ<そうですね。とにかくスターのガイジンを作り上げる事に躍起だったんでしょうね。

後輩は、子供の頃全日しか観たことがなく、たまたまチャンネル回して見掛けた新日中継で、猪木が負けるところを見てしまい衝撃を受けたそう…それ以来、新日派になったらしい<リアリティに雲泥の差があったというか…そこは猪木が馬場さんに絶対負けまいとした部分でしょうね。
負け方にも大きな意味を持たせていましたし。
馬場さんは晩年までは大試合に負ける事なんてほとんどなかったでしょうから。

猪木は、自分が負ける事で相手を光らせ、相手のイメージを膨らませて、自分も光って…最終的に美味しい所全部持っていっちゃう<以降の団体エースがみんな踏襲してきた訳ですが、猪木のスケールで実践できた選手はいませんでしたよね。

最近動く所観てないけど…やはり天龍動けませんか?<昨年の手術以降、かなりきつそうですね。
存在感は凄いですけど、数年前の様に普通にバンプ取るような試合は難しいと思います。

天龍が絡んでくると、柴田の昭和プロレス路線にも膨らみが出て、カードが拡がりそう…大ハヤブサに変身して、オカダにもヤキを入れるような発言をしていました<オカダがそういったレジェンドと対した時にどうなるか、観てみたいですね。何せ中邑曰く「伝説上の生き物」ですからね。
柴田はIWGP戦を皮切りにビッグマウス時代のリベンジロードもいいかも知れないですね。

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>○○さん

そうなんです。

「時代が…」っていう理由だけじゃなく、違うんですよね。
こう言うのを見てたから、プロレスに不快感は絶対必要だと思うんですよ。
紫レガとは?

紫レガ 

Author:紫レガ 
45歳のプロレス話


長州、これは俺のブログだ。

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