宮戸語録 vol.27~真剣勝負発言とは何か?~

UWFインターの団体史に深く刻まれた、

田村潔司の真剣勝負発言(参照:真剣勝負発言)を振り返るにあたって、
真剣勝負発言7

真剣勝負発言3

やはりこの人の見解を記事にしない訳にはいかないでしょう。

“Uインターの頭脳”宮戸優光です。

いわゆる単純なシュートワーク論だけでは括れない、

深層部分を高田延彦引退試合直前に展開していた記録があります。

少々、長いコメントが続きますが、

ほぼ完全再録でお送りしましょう。

「高田延彦」のカタチ―高田延彦22年間とは?1981‐2002
 「高田延彦」のカタチ―高田延彦22年間とは? より

宮戸
「これはハッキリ言っておきたいんだけど、『真剣勝負してください』って言ったって、別にビックリすることでもなんでもないよね。じゃあ『Uインターが真剣勝負じゃなかったのか?』って、そういうことを言ってるんじゃないんだから。あの『真剣勝負』っていう意味は、いわゆるそういうお話が好きな方が言う『シュート』とか『ガチンコ』とか、そういう低次元の、俺なんかが聞いてても意味のわからない話のことじゃないんだよ。もしそんなことを言う人がいたら、じゃあその人に聞きたい。『真剣勝負ってなんですか?』って」


現代社会の中、我々は軽い口調で、

「ガチ」や「シュート」と口走る事が多々ありますが、

宮戸に言わせると「お前らわかってて言ってんのか?」と。

「それなら逆に真剣勝負って何か教えろよ」と。

のっけから戦闘モードでマシンガントーク全開です。

宮戸が定義する真剣勝負とは、

単なるシュートマッチに非ず(参照:宮戸語録 vol.3~宮戸味徳編~)。

宮戸
「今の世の中ね、『真剣勝負』なんかまずそうそうない。どういうことかって言ったら、『真剣勝負』っていうのは本来は『生きるか死ぬか』ってことでしょ。そうすると今の世の中、『真剣勝負って何か?』って言ったら、まずほとんどないんですよ。どういうことかって言ったら、どっちかが命を失うか不具者になるか、あるいはもう食えない状況に陥るか。要するに『何か命に値するものを賭けるか』ってことですよね。だからそうなると、今、勝っても負けても『次の試合を頑張ればいい』とか、そういう状況でやってる『スポーツ』っていうのはもう『真剣勝負』じゃないんだよ、これ」


スポーツとしてレフェリーやルールに守られての試合は、

いくらシュートであっても真剣勝負というカテゴリではない、と。

もし田村が言う真剣勝負が、

単に高田との雌雄を決する為のシングルバウトだとしたら、

それは大きな勘違いに過ぎないよ、と。

宮戸
「だからタムちゃんがあのとき、なぜあえて『真剣勝負で』って言ったかっていうと、『当時のUインターが真剣勝負じゃなかった』って、そういうことじゃないんですよ。要するに、タムちゃんはあのときに凄く追い詰められてたと。だから彼は『自分が今どうしていいかわからない。身内の仲間と思ってる人間ともまともに口もきけない。だからみんながどういうことをしてるのかもわからない。もちろん自分もレスラーという職業でUインターという中にいるけども、その中でもどう振る舞っていいかもわからない。そうなってきたら、日々自分が研いているいわゆる強さ、それを武器に、当時トップだった高田さんに対して、よし、じゃそれをぶつけよう。その代わり高田さん、僕もその気持ちで行くんですよ、僕もこれで負けたら何もかも失う。そういう今の切羽詰まった自分をすべてぶつけますから。高田さんも、今のそのエースという立場を賭けて、僕と対等な立場で勝負してください!』という意味ですよ。『今までだったら負けても次がある。けど、今の自分のポジションやUインターではもう勝っても明日はないかもしれない。負けたらもう次があるのかわからないんだから』ってね。そういう決意でモノを言ってるわけだからね」


田村が憑依したかの様な語り口ですが、

田村本人が本当にそう思っていたのかは別として、

この当時の田村の立ち位置を、

最も理解していたのは他の誰でもない宮戸なのです。

のちに選手生命を賭けた他流試合を、

一緒に闘った事も関係しているでしょう。
たまらずパトスミはタップアウト

インタビューの聞き手が軽く相槌でも打とうものなら、

宮戸
(聞き手に向かって)わかってんの? わかってないよ。こんなことをわかるヤツはだいたい他にいねえもん。俺はそういう自信はあるよ。いわゆる『ガチ』だの『ワーク』だの『シュート』だの。だからタムちゃんはそのあとね、パトリック・スミスとも闘い(参照:極限のうどんの味)、リングスに出たり、グレイシーたちとも闘ったり、PRIDEにも出て闘った(参照:現世において必ず勝って欲しかった試合~前編~~後編~)けど、『真剣勝負』って言葉はあのときしか使わなかったでしょ、あいつは。それで全部わかんなきゃバカだね。だからほとんどバカなんだよ、今」

「その真剣勝負云々のことについて語ってるヤツらは興味本位で勝手に盛り上がってるだけでね。そういう意味じゃないんだよ。『まず本音を宣言して、高田さんと闘って、その代わり自分の背負ってるもの、今後の生活を、俺はこの一発に賭けますから』って意味なんだよ。だからあのタムちゃんの状況じゃなかったら出なかった言葉なんだよ」

「だったらタムちゃんはもっと頻繁にそんな言葉を使いますよ、彼は。彼があの言葉をあえて使った、というより、あえて口から言葉が出たということは、その部分の状況が違ったんだよね。あるいは自分がそういうつもりでやる、ということだったんだよね。逆に言ったら、ちょっと怖いけどね」


「ほとんどバカ」…そこまで言わなくても、という気もしますが、

確かに田村は今号のKAMINOGE(参照:ガンツさん、ありがとう。)において、

似た様な論旨で真剣勝負というワードを語っていますね。

ちょっと脱線しますが、

今回の田村インタビューを読んで、

改めて私の中でUというものが、

確固たるものとなりましたよ。

で、当時に話を戻すと、

何より田村は高田の引退発言(参照:7年半の引退ロード)もあって、

「このまま勝ち逃げされたらUWFの未来はない」位に、

思っていたのでしょう。

ですから無理矢理にでも高田とラインを結んでおいて、

リングで向かい合うシチュエーションまで持って行かなきゃならない、と。
田村の呼び掛け

しかし闘う心も体も失いつつあった高田にしてみれば、

一方的な田村の要求を聞き入れる気など、

さらさらありませんでした。

宮戸
「あのときはそれだけ必死だったわけだから。だから高田さんとしては、『もうちょっと今疲れてるんだから、そんないきなり刀を振り回してくるのは勘弁してよ~』って感じだったと思うよ。『俺はもうこれで負けたら腹切って死ぬし、勝っても負けても辞めますよ!』くらいの勢いだったんだから。だから『高田さんも同じ立場でやってくださいよ』って言われたって『バカ、俺は同じ立場だよ!』って高田さんも言いたかったと思うよ。『俺だってもう辞めてえんだよ』ってね」

「いや、高田さんの気持ちってね、結構わかっちゃうんだよね。高田さんが嫌がることとか、絶対に怒るだろうなってことも全部わかる。高田さんの心境って結構わかっちゃう。だから、そういうこともあって、高田さん、俺が鬱陶しかったんだと思うよ(苦笑)」


宮戸が側にいた事で上手く回っていた事も、

当の高田にしてみれば終わりなき重圧の連続に過ぎず、

団体経営の借金苦などもあって、

単純に美しい思い出とは言えない様です。
高田のセコンドは絶対に宮戸

それでも最後の最後、

引退試合のマットに前のめりに倒れた高田に、

真っ先に駆け寄ったのも宮戸その人でした。
高田を介抱する宮戸

とにかく高田と田村を結ぶキーワード“真剣勝負”は、

世の中のプロレスファンが簡単に口にするその言葉とは、

全く異なる意味を持っている様です。

宮戸
(略)さっきも言ったけど、そのあとにタムちゃんはそんな言葉を1度も使ったことないでしょ? だから全然違う、そういう軽々しいものと一緒にしないでほしいね。あのときの二人の心理状態を。高田さんもそうよ、なんであのとき受けなかったかってのは、疲れててね、いろんななかで、そういう状況だったのよ。だから『田村が恐いから受けなかった』とかそういうことじゃないんだよ。タムちゃんもそれは同じ。僕は今日、それを言い当ててると思うんだけど、どう思います?」


あの試合の最後に炸裂した田村の右フック。
前に出る高田にカウンター一撃

それは神懸かり級の一撃でしたが、

数分後に二人の抱擁が見られた事によって、

改めて宮戸の定義する真剣勝負とは、

違う意味を持つ試合だった事が証明されました。
7年越しの抱擁

インタビュー後半部分で、

宮戸は既にこの試合をこう予言しています。

宮戸
「バーリ・トゥードだろうが、新日本ルールだろうが、Uインタールールだろうが、あんまり関係ないと思うよ。それこそ、なる試合になるよ。あの二人ならやればきっと。今のあの二人なら。新日本ルールでもバーリ・トゥードルールでも、きっと同じ試合になるよ。そんな気がするね。そうでしょ。関係ないよね。そういう熱い思いがあったらさ、ルールは関係ないと思うよ。それこそレフェリーいなくても成立しちゃうよ。いやそのくらい、普通の試合にはない“何か”があるってことだよね」


あの最後の抱擁が眼に焼きついていますから、

私にとってのUというのは、

シュートやワークという括りを超越したものなのです。

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tag : 高田延彦 田村潔司 宮戸優光

comment

Secret

No title

読み応えありました。

正直、プロレスにさほど認識や興味のない人からすれば宮戸の言ってる事は
「何もそこまでして、真剣勝負を定義するかね?」
となりますし、
我々みたいに下手にプロレスを知ってしまってる者からすると唸るようにうなづいて聞く内容なのですが、それすらも許さないという(苦笑)

ただ、以前鈴木みのるも『真剣勝負』だったか、『ガチ』だったかを
「軽々しく使うな、命のやり取りだ」
と言っていたような気がします。
単に暗黙の了解の無い試合。勝敗の決まってる、取り決めのある試合ではない。というものではないのが分かりました。
ひょっとしたら、同業者であるプロレスラーですら身体を鍛えて技を習ったくらいでは伝わらない部分を会得していない人であれば分からない話かも知れません。



今、ふと思ったのですが、以前ここでファイプロの話をしていて自分の理想の団体を・・・という話をしてまして。
宮戸はそれをUインターという団体で実現しようとして、選手に思い入れを抱き、エースに自分の願う理想を背負ってもらい、こうすれば面白い、こうなれば面白い。
こうなって欲しいのにならない、それでもなるように形を作りたい。
それらをいろいろ考えてやっていたのかと。
結局、それを違う人に勝手にいじられたりして思い入れが冷めた時に一歩引いたけど・・・
とか思っちゃいました。

No title

「スポーツなら真剣勝負はない」
ここは非常に頷ける部分でした。
球技や陸上競技ではなく、格闘競技に限っての話で。
自分は前々から、それこそPRIDE全盛の頃から
総合格闘技っていう呼称が大嫌いで、腹を立ててたんですが
しかしそれについてウダウダ語るには
この記事へのコメントでは脱線し過ぎになるので、またいずれ。

あ、それと予定になければ全く構わないんですが
今年のG1の総括記事なんかは、書く意欲湧きませんか?
どうやら各方面で絶賛の声が多いようで
そこにわざわざ冷や水ぶっかけるのも気が引け
いまいちプロレスに対するモヤモヤが抜けずに……。
まぁ「今、流行は大谷プロレス!」というトンデモ論なんですが。

>ナリさん

読み応えありました<ありがとうございます。

唸るようにうなづいて聞く内容なのですが、それすらも許さない<THIS IS 宮戸優光!! ですね(笑)。

鈴木みのるも『真剣勝負』だったか、『ガチ』だったかを「軽々しく使うな、命のやり取りだ」<豪ちゃんのインタビューですね。
そういった言葉に対しての考え方って、意外と宮戸に近いものがあるんですよね。

プロレスラーですら身体を鍛えて技を習ったくらいでは伝わらない部分を会得していない人であれば分からない話かも<まぁ、インディの大多数の選手…というか強さという概念のない選手にとっちゃどうでもいい話でしょうからね。一円にもつながらない事かも知れません。

自分の理想の団体を・・・という話…宮戸はそれをUインターという団体で実現しようとして<当初、新生時代に船木を(70年代の)猪木に見立てていたところから始まっていますしね。
結果的に船木とは袂を別ってから、とにかく高田の強さを万人に知らしめる為のリングにしたかった様です。

結局、それを違う人に勝手にいじられたりして思い入れが冷めた時に一歩引いた<旗揚げ当初から鈴木健氏とは腹にイチモツ持っての関係でしたので、こうなる事は初めからわかっていたのかも知れませんね。

>ネコさん

「スポーツなら真剣勝負はない」…球技や陸上競技ではなく、格闘競技に限っての話で<それが上か下かという問題ではなく、ルールに則った試合においては真剣勝負というのはほとんど無いという事でしょうね。

PRIDE全盛の頃から総合格闘技っていう呼称が大嫌いで、腹を立ててた<そこも過去記事(http://murasakilg.blog64.fc2.com/blog-entry-160.html)で書き残したのですが、宮戸も嫌いな様ですよ。

今年のG1の総括記事なんかは、書く意欲湧きませんか?<う~ん…答えになってるかどうかはわかりませんが、G1の最終日を見ていないという事と、現時点では観る気持ちが湧いていないというか…。
きっと近日、CSで放送されて、おそらくHDDには録ると思うんですが、観る気が湧かないというか…。

…あ!! 棚橋vs柴田だけは観たいなぁ、と思っていますよ。

No title

いえ、気になさらず。返答ありがとうございます。

いまいち観る気が……というのは判る気がします。
中邑がヘンな位置に押し込められてるのが自分としては……
いや、別に本人が充実してやりがい感じてるなら
それは一介のファンがどうこう言うことではないんですが。
柴田が思ったより粘って、染まり切らずにいるんで
今は中邑より柴田に注目して観ています。

12年末頃の永田vsKENTAあたりを観ると
実は柴田は、一度永田さんとガリガリやり合ってみたら
後藤戦や石井戦よりもずっと面白い試合が生まれるんでは
と思ったりしています。
プロレスを壊した(今のプロレスを生んだ)代表格みたいな
言われ方もする永田さんですが
本当にそうかなぁ、と思わされることがしばしば。
この試合、まだ未見ならお勧めです。
喋りも含めて、棚橋や内藤には教材にしてほしいレベルっす。

>ネコさん

中邑がヘンな位置に押し込められてる<確かに今の立ち位置を中邑自身が楽しんでるきらいがありますよね。
柴田が思ったより粘って、染まり切らずにいるんで<柴田のやり方で今の新日でのポジション確保を模索していますね。
今回のオカダ戦、棚橋戦がひとつの転機かも知れません。

実は柴田は、一度永田さんとガリガリやり合ってみたら後藤戦や石井戦よりもずっと面白い試合が生まれるんでは<確かに先輩と絡んだ時の柴田って魅力的ですね。
DREAMで石澤超えを果たした以上、次は新日での永田越えでしょうね。

喋りも含めて、棚橋や内藤には教材にしてほしいレベル<そう考えると去年の永田って、チャンカン、G1、グローバルリーグ…とメジャー三団体のリーグ戦で八面六臂の大活躍でしたね。
今見てても揺るぎない自信を感じます。

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>○○さん

本来、この言葉が持つ意味って言うのは本当に重いものですからね。
そこを理解なさるというのは凄いです!!
紫レガとは?

紫レガ 

Author:紫レガ 
44歳のプロレス話


待て待て待て待て!! 読め!! 俺の記事をこの野郎!! 待て貴様ぁ!!

どーですかぁーーーー!!

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